ディーゼルのスポーツカーが出てこないのはどうしてか?

2022.12.22 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉

ディーゼルエンジンは豊かなトルクが持ち味とされていますが、これを生かしたスポーツカーが見当たらないのはなぜでしょうか? 低回転域から最大トルクを発生する、ガソリンターボのスポーツカーは多いように思いますが……?

ルマン24時間レースの歴史を見ても、ディーゼルエンジンを搭載したプジョーやアウディのマシンが優勝した例があるように、“速さ”という観点では、ディーゼル車は“あり”ですよ。「ディーゼルの速いスポーツカー」はつくれます。

でも、どうしてメジャーにならないのか? ひとつの大きな要因は、「スポーツカー好きの、スポーツカーに対するイメージ」だと思います。例えば、官能性。スポーツカーに求められるのは、純粋な速さだけではないですよね? 「音が気持ちよくないと」「エンジンが高回転まで回るのがスポーツカーだ」などという従来の価値観はなかなか根強くて、それゆえディーゼルのスポーツカーが求められていない、という現実はあります。

もうひとつ、「ディーゼルエンジンは(経済的・法的な)世の中の条件に左右されやすい」というのも理由でしょう。

実は、私が「トヨタ86」を開発した際には、真剣にディーゼルエンジンの搭載を検討していたのです。ちょうど2012年ごろの欧州市場では「ディーゼルエンジン車もないとダメだ」という風潮がありまして……。しかしそれも、結局は(燃料の価格変動など)風向きが変わって販売サイドからのリクエストがなくなったために、立ち消えになってしまいました。

結論としては、ユーザーの意識や社会的な枠組みの変化次第では、「ディーゼルのスポーツカー」が出てくる可能性は十分あるといえます。技術のうえで、それをつくることに問題はないのです。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。