ロイヤルエンフィールド・スーパーメテオ650(6MT)
優雅にも 豪快にも 2023.01.26 試乗記 ロイヤルエンフィールドが満を持してリリースした新型クルーザー「スーパーメテオ650」。英国生まれ・インド育ちの老舗が放つ“ダイナミッククルーザー”は、どんな走りを秘めているのか。インド・ラージャスターンで行われた国際試乗会より、その実力を報告する。力強くスムーズな空冷2気筒の加速感
「EICMA 2022」の会場で、ロイヤルエンフィールドの車両開発の責任者であるサイモン・ワーバートン氏と、デザインを含めた車体設計の責任者であるマーク・ウェルズ氏に、発表されたばかりのスーパーメテオ650について話を聞いたとき、彼らはそれを“ダイナミッククルーザー"と表現していた。そして今回、ジャイサルメールからキムサールへ向けた約350kmの試乗をスタートさせたとき、すぐにその意味を理解することができた。
まずはエンジンだ。スーパーメテオ650は、2018年に市場投入された「コンチネンタルGT650」や「INT650」にも用いられる、排気量648ccの空冷4ストローク並列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)を搭載している。しかしそのフィーリングは、セパレートハンドル/バーハンドルを装備した、それらヨーロピアンスタイルのマシンとはまるで違う。低回転域でのフラットで扱いやすいトルクが高回転まで続く特性はそのままに、より低回転域からひとまわり、いやふたまわりは力強くなった印象で、わずかなアクセル開度でも、車体をどんどん前に押し出していく。しかもその加速感は、VツインやLツインのそれ……三段跳びの選手が飛び跳ねるような、シリンダー内の爆発と連動した大股な加速感とは違い、スルスルと滑らかに、でも力強く車速を乗せていく不思議な感覚なのだ。
このトルクフルなエンジン特性は、シフトアップして高いギアを使って走っているときも変わらず、速度域の低い市街地でも3~4速を使って走れるほど。インドの街なかでは、時折減速を促すために道路を横断するスピードバンプ(アスファルトのこぶのようなもの)が出現するのだが、それを越えたあとの再加速でシフトダウンをサボっても、クルマや他のバイクの流れをリードすることもできる。
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飛ばせば気分が盛り上がる
市街地を抜けて高速道路(といっても牛や野犬がウロウロしているが……)に入れば、120km/hの法定速度まであっという間に加速し、再加速も力強い。排気量1000ccを超えるエンジンであれば、このパフォーマンスはさほど驚かないが、先述のとおりスーパーメテオ650の排気量は648ccで、その最高出力は47PS(34.6kW)である。それを考えると、十分すぎるほどのパフォーマンスだ。
加えて、6速100km/h(エンジン回転計が装備されていないので回転数は不明だが……)を超えたあたりから、それまでシルキーだったエンジンに、270°クランクの不等間隔爆発ユニットらしいビート感が増してくるのがわかる。それはハンドルに振動が伝わる不快なものではなく、2気筒エンジンの存在を主張する、ライダーの心を刺激するエモーショナルなビートだ。アクセルを大きく開けて加速するときには、ライダーの真下に位置するエアクリーナーボックスから「クゥオォオ」と吸気音が聞こえ、気分がさらに盛り上がる。
このエンジンは、カバー類こそスーパーメテオ650のために新しくデザインされているが、エンジン内部や燃料噴射システムそのものは、コンチネンタルGT650やINT650と共通である。ただしフレームを専用設計としたため、エアクリーナーボックスの容量やレイアウト、排気系のレイアウトは変更。またECUも専用にプログラムしたという。それによって、2000~3000rpmで最大トルクの80%を発生するよう、トルク特性が変えられたのだ。
新しい走りを支える新しいフレーム
新型フレームは、ステアリングヘッドから伸びる1本のバックボーンにエンジンがつり下がり、シート下で左右に分かれた2本の後端でリアサスペンションマウントを兼任し、そこで“く”の字に折れ曲がってスイングアームピボットやエンジン後端のマウントを兼ねる鍛造プレートに至る形状となっている。鳥かごの中にエンジンを抱きかかえるように配置する、コンチネンタルGT650やINT650のダブルクレードル形状のフレームとは異なるため、シリンダーヘッド前方にエンジンマウントを追加して、フレームの強度や剛性が高められている。
またエンジンをつり下げるフレーム形状としたことで、エンジンを車体の低い位置で支えることができ、それによって低重心化を実現。コンチネンタルGT650やINT650より30kgほど車体重量が増しているにもかかわらず、走りだせばその重さを感じないほど重量バランスは最適化されている。
なにより、ハイスピードを維持したまま、ステップにかけた足のカカトが地面に触れるほどのコーナーに臨んでも、車体が安定している。ビートの効いたエンジンフィーリングとも相まって、ネイキッドバイクともスポーツバイクとも違う独特のスポーティネスを味わえる。クルージングもスポーツライディングもこなせる、ロードスター的なバイクとしてライディングできるのだ。
しかしそうなると、気になる部分も出てくる。ハイペースで走れるとあらば、車体をより積極的にコントロールしやすい、ステップをもっとライダーに近づけた“ミッドコントロール”なライディングポジションが欲しくなるし(もちろんバンク角の確保とのバランスも考えなければならないが……)、もう少しストロークの長いリアサスペンションも欲しくなる。まったく個人的な好みだが、かつての空冷スポーツスターのような、スポーツクルーザー的なスタイルに仕上げて走りを楽しみたくなってしまうのだ。
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成長を続ける名門の地力
まぁそれは、オーナーの好みでアレンジできる範囲の話だ。そのベースとなるスポーツクルーザーとしては、パフォーマンスでも走行フィーリングの面でも、スーパーメテオ650のポテンシャルは高い。
そもそもロイヤルエンフィールドは、実は1950年代からクルーザーモデルをつくり続けているブランドだ。そしてそのクルーザーを用いて、広大な国土と厳しい自然を持つインドで、ツーリングカルチャーを育ててきた。その彼らが新たなクルーザーをつくろうと考えたとき、このジャンルのオーセンティックなスタイルとパフォーマンスを踏まえるだけでは、不十分だったのだろう。今や、中間排気量セグメントで世界No.1ブランドになることを目指す存在となったロイヤルエンフィールドのプロダクトらしく、ただクルーズできるというだけではなく、操る楽しさの比率を高め、純粋にバイクに乗る楽しみを追求したのだ。
EICMAで開発陣が、スーパーメテオ650をダイナミッククルーザーと表現した理由はそこにある。今回の試乗で、それを理解することができた。
(文=河野正士/写真:長谷川徹/取材協力:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2260×890×1155mm
ホイールベース:1500mm
シート高:740mm
重量:241kg
エンジン:648cc 空冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:47PS(34.6kW)/7250rpm
最大トルク:52.3N・m(5.33kgf・m)/5650rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:--円

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
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