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ルノー・アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド(FF/7AT)

それは濃厚なる味わい 2023.02.14 試乗記 サトータケシ ルノーのクーペSUV「アルカナ」に追加設定されたマイルドハイブリッドモデルに試乗。さまざまなシチュエーションでステアリングを握ると、先に上陸したフルハイブリッドモデル「E-TECHハイブリッド」との違いや、マイルドハイブリッドならではの特徴がわかってきた。

フルハイブリッドがあるのに?

ルノー・アルカナにマイルドハイブリッド仕様が加わったというニュースに接したときの率直な感想は、「ほー……」というものだった。「ほー……」を詳しく説明すると、「ほー」の部分はパワートレインの種類が増えることに感心するポジティブな気持ちで、いっぽう「……」の部分は、なんでまたそんな面倒なことをするの、というギモンの気持ちの表れだ。

つまり、「ルノー・アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」というモデルの日本導入にあたっては、やや複雑な印象を抱いた。

複雑な印象を抱いた理由は簡単で、先に日本に導入されていたフルハイブリッド仕様が気に入っていたからにほかならない。いやぁ、フルハイブリッド仕様の「アルカナR.S.ラインE-TECHハイブリッド」はよかった。

E-TECHハイブリッドのなにがよかったって、モーターが効果的に介入することで生まれるちょっと浮遊感のある加速フィールと、ルノーらしい人間の感性に寄り添ったハンドリングの組み合わせによって、風のように走るところがよかった。加えて燃費まで納得できる数値だったから、文句なしだ。

E-TECHハイブリッドに初めて試乗したあの日、頭の中ではとある楽曲と、とあるフレーズが繰り返された。とある楽曲とはTHE BOOMの名曲『風になりたい』で、これは多くの方がご存じだと思う。いっぽう、とあるフレーズのほうは少しマニアックだ。申し訳ありませんが、少々お付き合いください。

当時、サッカーファンの間ではDAZNのJリーグ中継の名実況として、「風のようにターレス!」というフレーズが話題になっていた。ターレスとは、ロアッソ熊本にいたターレス選手のことで(現在は名古屋グランパスの所属)、アナウンサーは彼のドリブルを「風のよう」だと形容したのだ。というわけで、E-TECHハイブリッドに試乗している間、「風のようにイーテック!」「風のようにターレス!」というフレーズが脳裏でリフレインした。

と、マイルドハイブリッド仕様に試乗するというのにフルハイブリッド仕様賛歌になってしまいましたが、それほどアルカナE-TECHハイブリッドが気に入ったとご理解ください。

2022年11月に導入が発表されたルノーのクーペSUV「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」に試乗した。車両本体価格は、同年5月に発売されたフルハイブリッドモデルよりも30万円安い399万円。
2022年11月に導入が発表されたルノーのクーペSUV「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」に試乗した。車両本体価格は、同年5月に発売されたフルハイブリッドモデルよりも30万円安い399万円。拡大
日本に導入される「アルカナ」のマイルドハイブリッドモデルは、モータースポーツの血統を受け継ぐというスポーティーグレード「R.S.ライン」のみの設定。
日本に導入される「アルカナ」のマイルドハイブリッドモデルは、モータースポーツの血統を受け継ぐというスポーティーグレード「R.S.ライン」のみの設定。拡大
グリル中央に「ロザンジュ」と呼ばれるひし形のエンブレムが置かれたフロントフェイスのデザインは、フルハイブリッドシステムを搭載する「E-TECHハイブリッド」に準じたもの。ただし、搭載するパワートレインやグレード名を示すエンブレムなどは備わらない。
グリル中央に「ロザンジュ」と呼ばれるひし形のエンブレムが置かれたフロントフェイスのデザインは、フルハイブリッドシステムを搭載する「E-TECHハイブリッド」に準じたもの。ただし、搭載するパワートレインやグレード名を示すエンブレムなどは備わらない。拡大
「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」のパワートレインは、最高出力158PS、最大トルク270N・mの1.3リッター直4ターボエンジンと、同5PS、同19.2N・mのBSGと呼ばれる補助モーター、そして12Vリチウムイオンバッテリーで構成されている。
「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」のパワートレインは、最高出力158PS、最大トルク270N・mの1.3リッター直4ターボエンジンと、同5PS、同19.2N・mのBSGと呼ばれる補助モーター、そして12Vリチウムイオンバッテリーで構成されている。拡大
なだらかに傾斜したルーフラインが目を引く、ルノー初のクーペスタイルSUV「アルカナ」。全長×全幅×全高=4570×1820×1580mmのボディーサイズや、2720mmのホイールベースは「E-TECHハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」で共通するが、車重は後者のほうが90kg軽い1380kgとなる。
なだらかに傾斜したルーフラインが目を引く、ルノー初のクーペスタイルSUV「アルカナ」。全長×全幅×全高=4570×1820×1580mmのボディーサイズや、2720mmのホイールベースは「E-TECHハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」で共通するが、車重は後者のほうが90kg軽い1380kgとなる。拡大
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地に足のついた加速フィール

アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッドのパワートレインは、1.3リッターの直4直噴ターボエンジンに、スターターとジェネレーターの役割を兼務するモーター(BSG)と12Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせたもので、トランスミッションはデュアルクラッチ式の7段DCTとなる。

アルカナE-TECHハイブリッドが1.6リッターの直4自然吸気エンジンと2つのモーター、そしてエンジン側が4段、駆動用モーター側が2段というトランスミッションを搭載していたことを思うと、「ハイブリッド」といっても中身は大違いであることがわかる。ちなみに、E-TECHハイブリッドは制御があまりに複雑なのでシフトパドルが備わらないのに対し、マイルドハイブリッドはシフトパドルを操作してマニュアル変速することができる。

システムを起動して発進すると、その力強さに感心させられる。ふぁ〜んと浮くように加速するE-TECHハイブリッドのEV感はないけれど、直噴ターボエンジンをモーターが黒子となってアシストするおかげか、どっしり重厚に発進する。

ただし、ドライバーがモーターの存在を感じることはほとんどないはずだ。エンジンとモーターは結成30年の漫才コンビのように連携がスムーズで、ドライバーが感じるのはムッチリとしたトルクが前輪に伝わるフィーリングだけなのだ。

スペックを見ると、モーターの最高出力は5PSで最大トルクも19.2N・mと、大したことはない。国産の軽自動車のマイルドハイブリッドが積むモーターとどっこいだ。けれどもこのモーターが最大トルクを1800rpmという低回転域で発生していることが効いているのか、ゼロ発進のタイヤの1回転目、2回転目ぐらいに、ずんという手応えがある。

「風のよう」ではないけれど、地に足のついた加速フィールだ。

「アルカナ」のプラットフォームは、ルノーが主導しアライアンスパートナーである日産および三菱との3社で共同開発された「CMF-B」と呼ばれるもの。最新世代の運転支援システムへの対応と、軽量・高剛性がうたわれている。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式。
「アルカナ」のプラットフォームは、ルノーが主導しアライアンスパートナーである日産および三菱との3社で共同開発された「CMF-B」と呼ばれるもの。最新世代の運転支援システムへの対応と、軽量・高剛性がうたわれている。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式。拡大
ドアとダッシュボードにカーボン調パネルが組み込まれ、インパネ上部に赤いアクセントラインが入る「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」のインテリア。レザーステアリングホイールにはヒーターが標準で装備される。
ドアとダッシュボードにカーボン調パネルが組み込まれ、インパネ上部に赤いアクセントラインが入る「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」のインテリア。レザーステアリングホイールにはヒーターが標準で装備される。拡大
デュアルクラッチ式の7段DCTを介して前輪を駆動。「E-TECHハイブリッド」には設定のなかったシフトパドルも備わっており、ステアリングホイールから手を離すことなく瞬時にギアチェンジが行える。
デュアルクラッチ式の7段DCTを介して前輪を駆動。「E-TECHハイブリッド」には設定のなかったシフトパドルも備わっており、ステアリングホイールから手を離すことなく瞬時にギアチェンジが行える。拡大
「シルバーストーン」と呼ばれる標準の18インチアロイホイールに、215/55R18サイズのタイヤを組み合わせるのは「E-TECHハイブリッド」と共通。試乗車両には「クムホ・エクスタHS51」タイヤが装着されていた。
「シルバーストーン」と呼ばれる標準の18インチアロイホイールに、215/55R18サイズのタイヤを組み合わせるのは「E-TECHハイブリッド」と共通。試乗車両には「クムホ・エクスタHS51」タイヤが装着されていた。拡大

すがすがしいパワートレイン

速度が上がっても、滑らかな加速のフィーリングと力強さは変わらない。おそらく、適切なタイミングでモーターもお手伝いをしているはずだけれど、ステアリングホイールを握りながら感じるのは、頼りになるエンジンだな、ということだ。実際1.3リッター直4直噴ターボは、単体で270N・mというトルクをわずか1800rpmから発生する。

シフトパドルを操作して、パンパンとギアを落とすことができるのも、マイルドハイブリッドをドライブする楽しみだ。7段DCTは切れ味が鋭いうえにスムーズにシフトしてくれるから、街なかでもついパンパンしたくなる。意味なくパンパンするのも楽しい。

そして一定の速度で巡航し、パワートレインへの負荷が低い場面では、フッと無風状態に入ったように感じる瞬間がある。エンジンと駆動輪を切り離して燃費を稼ぐ、コースティングの状態だ。一度コースティングに入ると、それを維持したくなるのが人情というもの。グライダーで風に乗って飛んでいるときの気分はこんなものだろうか、と想像する。

アイドリングストップからのエンジン再始動も滑らかだし、3500rpmあたりから上の回転域で盛り上がるパワー感も気持ちがいい。総じてすがすがしい、好感の持てるパワートレインだ。

今回試乗した「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」の外装色は「ブラン ペルレM」と呼ばれるもの。これを含め全4色からボディーカラーが選択できるのは、先に販売された「R.S.ラインE-TECHハイブリッド」と同様だ。
今回試乗した「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」の外装色は「ブラン ペルレM」と呼ばれるもの。これを含め全4色からボディーカラーが選択できるのは、先に販売された「R.S.ラインE-TECHハイブリッド」と同様だ。拡大
表示デザインやイルミネーションが走行モードに連動して切り替わるほか、好みのカラーにカスタマイズできる10.2インチサイズの液晶メーター。写真は「ルノーマルチセンス」で「Sport」モードを選択した様子。
表示デザインやイルミネーションが走行モードに連動して切り替わるほか、好みのカラーにカスタマイズできる10.2インチサイズの液晶メーター。写真は「ルノーマルチセンス」で「Sport」モードを選択した様子。拡大
ダッシュボードセンターに置かれた7インチのタッチスクリーン。ドライブモードや室内照明などを任意にセッティングできる「ルノーマルチセンス」のコントロール機能のほか、後退時にリアビューやトップビューを自動で表示する360度カメラ機能なども備わっている。
ダッシュボードセンターに置かれた7インチのタッチスクリーン。ドライブモードや室内照明などを任意にセッティングできる「ルノーマルチセンス」のコントロール機能のほか、後退時にリアビューやトップビューを自動で表示する360度カメラ機能なども備わっている。拡大

値段だけでなく味わいも違う

4本のアシが柔軟に伸び縮みして、結果としてタイヤがしっかりと路面をとらえ、それが乗り心地にもハンドリングにも好ましい印象を伝えるシャシーのキャラは、アルカナE-TECHハイブリッドと同様だった。

速く曲がれるクルマはいろいろあるだろうけれど、自分が操縦しているという実感を強く持ちながら楽しく曲がるクルマは、なかなか見当たらない。こういう、人肌のぬる燗(かん)みたいに絶妙に心地よい味をつくることにかけては、ルノーはホントに長(た)けている。

というわけで、冒頭に記した「ほー……」は、「ほー」に変わった。アルカナは何万台も売れるようなモデルではないはずなのに、ユーザーの選択肢を増やしてくれるのはありがたい。実は、アルカナE-TECHハイブリッドより30万円安いことだけが取りえの廉価版であることを懸念していたけれど、そうではなかった。

たとえて言うなら、E-TECHハイブリッドが白くてつるつるした上品な更科そばだとしたら、エンジンのテイストが楽しめるマイルドハイブリッドは色が黒くてちょっとゴワっとしているけれど香りの強い田舎そば。あるいは、E-TECHハイブリッドが絹ごし豆腐だとしたら、マイルドハイブリッドは木綿豆腐。ついでに言うと、E-TECHハイブリッドがこしあんだとしたら、マイルドハイブリッドはつぶあんだ。

キリがないのでこのへんでやめますが、値段が違うだけでなく、味わいが違う。世の中には、こしあん派もいれば、つぶあん派もいる。

(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

シートは、滑らかなレザーと触感のいいスエード調の素材で仕立てられている。前席左右には、いずれも電動調整機能とヒーターが標準で装備される。
シートは、滑らかなレザーと触感のいいスエード調の素材で仕立てられている。前席左右には、いずれも電動調整機能とヒーターが標準で装備される。拡大
前席と同じく、レザーとスエード調のコンビネーション表皮に赤いステッチが入る後席。ルーフが傾斜しているため、ヘッドルームは少しタイトに感じた。背もたれにはセンターアームレストと、60:40の分割可倒機構が備わっている。
前席と同じく、レザーとスエード調のコンビネーション表皮に赤いステッチが入る後席。ルーフが傾斜しているため、ヘッドルームは少しタイトに感じた。背もたれにはセンターアームレストと、60:40の分割可倒機構が備わっている。拡大
後席を使用する通常時の荷室容量は「E-TECHハイブリッド」の33リッター増しとなる513リッター。フロアボードは2段階の調整式で、上段にセット(写真)すると前方に倒した後席背もたれと床面がほぼフラットになる。
後席を使用する通常時の荷室容量は「E-TECHハイブリッド」の33リッター増しとなる513リッター。フロアボードは2段階の調整式で、上段にセット(写真)すると前方に倒した後席背もたれと床面がほぼフラットになる。拡大
アイドリングストップからのエンジン再始動は滑らかで、3500rpmあたりから盛り上がるパワー感も気持ちがいい。パワートレインへの負荷が低い場面では、エンジンと駆動輪を切り離して燃費を稼ぐ、コースティングモードに入る。
アイドリングストップからのエンジン再始動は滑らかで、3500rpmあたりから盛り上がるパワー感も気持ちがいい。パワートレインへの負荷が低い場面では、エンジンと駆動輪を切り離して燃費を稼ぐ、コースティングモードに入る。拡大

テスト車のデータ

ルノー・アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4570×1820×1580mm
ホイールベース:2720mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:158PS(116kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1800rpm
モーター最高出力:5PS(36kW)/1800-2500rpm
モーター最大トルク:19.2N・m(2kgf・m)/200-1677rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(クムホ・エクスタHS51)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)
価格:399万円/テスト車=408万5500円
オプション装備:ボディーカラー<ブラン ペルレM>(3万5000円) ※以下、販売店オプション ETCユニット(2万8600円)/エマージェンシーキット(3万1900円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2379km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:340.6km
使用燃料:25.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.3km/リッター(満タン法)/15.5km/リッター(車載燃費計計測値)

ルノー・アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド
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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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