アルファ・ロメオ・トナーレ エディツィオーネ スペチアーレ(FF/7AT)
これなら長く付き合える 2023.02.28 試乗記 アルファ・ロメオにとって初のコンパクトSUVであり、電動化戦略の第1弾モデルでもある「トナーレ」。ブランドとしては“初もの尽くし”となる待望のニューモデルは、快適でありつつ程よくスポーティーな、肩ひじ張らずに付き合える一台に仕上がっていた。ブランド電動化の旗手
日本でのブランドイメージは高く、知名度もそれなりにあるアルファ・ロメオ。近年では「ジョルジョ」と呼ばれるFRプラットフォームを新開発して「ジュリア」や「ステルヴィオ」をリリースし、飛躍していくかと思われたが、販売台数を稼ぎ出すはずのB/Cセグメントがラインナップから外れて後継が登場せずに、停滞してしまっていた。そんな状況で投入されたのが新世代商品のトナーレだ(参照)。CセグメントのSUVという大人気のクラスだけあって、期待している人も多いだろう。
トナーレはアルファ・ロメオの電動化戦略のトップバッターでもある。マイルドハイブリッド車(MHEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)が先行し、2024年には電気自動車(BEV)も投入される。ちなみに、アルファ・ロメオは2025年にBEV専用モデルを発売し、2027年には全車BEV化を計画しているという。だいぶ遅れて電動化を始めたわりには早い段階でのBEV専売ブランド化を表明しているわけだが、これもステランティスが巨大グループ化したから成し得ることだろう。そうすると、ジュリアやステルヴィオはあと4年しか新車では買えないことになる。なんだか寂しい気もするが、欧州プレミアムカーはこぞってBEV化へ突っ走っていて、その勢いが止まる気配はない。
このたび日本導入となったトナーレはMHEVで、まずはエントリーグレードの「TI」と今回の試乗車でもある導入記念モデルの「エディツィオーネ スペチアーレ」から始まった。記念モデルは台数限定で、予定数に達した後はカタログモデルの上級グレード「ヴェローチェ」に入れ替わることになる。PHEVも年内に日本に導入される見込みで、そちらも楽しみだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
そこここに見られる先達へのオマージュ
CセグメントのSUVは大人気ゆえにマーケットは激戦区でもあって、退屈なモデルでは埋没しかねない。しかし、そこはさすがはアルファ・ロメオで、躍動的なルックスはいやが応でも目を引く。伝統の縦型グリルを中央にいただいたフロントマスクで目新しいのは、往年の名車「SZ」から着想を得た3連U字型デイタイムランプを組み込んだマトリクスLEDヘッドランプ。そのほか、サイドのショルダーラインは「ジュリアGT」、リアサイドガラスは「8Cコンペティツォーネ」と、随所にヘリテージがちりばめられている。インテリアも2つの丸型のメーターを包み込むような形状のメーターナセルに往年のアルファ・ロメオらしさがあるが、メーターそのものは12.3インチの液晶。センターのディスプレイも含めデジタライズを無理なく取り入れている。先進と伝統の融合が見事だ。
ボディーは全長×全幅×全高=4530×1835×1600mmで、日本の都市部でも使いやすいサイズ。ステランティスグループの「スモールワイドプラットフォーム」をベースに剛性強化やワイドトラック化を図ったとのことで、クルマの基礎は「ジープ・コンパス」などの進化形のようだ。
エンジンは新開発の1.5リッターターボで最高出力160PS、最大トルク240N・mを発生。48Vのマイルドハイブリッドシステムとして、20PS、55N・mのモーターを内蔵した7段DCTが組み込まれる。リチウムイオンバッテリーの容量は0.77kWhだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
パワートレインはかなりの燃費志向
一口にMHEVと言っても、電圧は軽自動車などの12V、マツダのFF系に使われる24V、欧州発の48Vと3種類あり、モーターの出力もさまざまだ。トナーレは48Vでモーターの出力もそれなりに大きいので、マイルドだけれどストロング寄りといえる。例えば「ルノー・アルカナ」のMHEVのモーターは最高出力5PS、最大トルク19.2N・m。トナーレのシステムが、いかに“ストロング寄り”か分かるだろう。当然のことながら、そのほうが燃費改善効果も大きいはずだ。
運転していてそれを実感させられるのが、MHEVには珍しく発進をモーターのみでこなすところ。街なかで普通に発進する程度なら、15~20km/hまではエンジンがかからない。負荷が低く、バッテリーが十分に充電された状態ならば30km/h程度までいける。ほんの少しでも加速を強めれば途端にエンジンがかかるが、状況によってはフルハイブリッドに近い感覚で走れ、燃費を少しでもよくしようという意思が感じられる。
巡航時にアクセルオフすればエンジンが止まって滑走するコースティングモードになるが、その頻度は一般的な48VシステムのMHEVとしては平均的といったところ。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のように、隙あらば即コースティングというほどではないが、あまりに頻度が高いと煩わしい思いもするので、トナーレぐらいがちょうどいいだろう。
とはいえ、全体的にはけっこうな燃費志向のようで、エンジンは低回転を多用するのでレスポンスに関してはあまりいいとは思えない。アクセルをゆっくりと踏み増していくような状況では、意図したとおりには加速していかないのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
走りを楽しむなら「D」モード一択
近年のアルファ・ロメオが採用している「D.N.A.」と呼ばれるドライブモードは、Dが「ダイナミック」、Nが「ナチュラル」、Aが「アドバンスドエフィシェンシー」となっていて、AはもちろんNでも燃費志向が強いようで、ドライバビリティーは今ひとつ。ところがDにすると途端に活気づく。アルファ・ロメオに期待するキビキビとした走りを体感したいならDの一択だろう。もしくは、NやAで走りつつ、大きなコラム固定式のパドルシフトを適宜使うという手もある。TIには装備されないので、そちらではシフトレバーで操作するしかない。
アクセルを積極的に踏み込んでいけば、エンジンの吹け上がりは軽快だ。4500rpmを超えると回転上昇の勢いが増して6000rpmまで奇麗に回っていく。0-100km/h加速は8.8秒と驚くほどではないものの、スポーティーなコンパクトSUVとしてストレスのない加速感だ。ドライブモードがDならば、DCTのギアチェンジもキレがあって気持ちいい。
プラットフォームが最新鋭ではなく、20インチの大径タイヤを履いているので乗り心地は厳しいのかと思いきや、想像するよりもずっとよかった。トナーレに合わせてシャシーを強化したことが効いているようで、サスペンションがスムーズに動いているのだ。試乗車には装着されていなかったが、ヴェローチェでは電子制御の可変ショックアブソーバーが標準装備となるので、さらに乗り心地はいいだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
快適だけど程よくスポーティー
トナーレで最も特徴的なのが、ステアリングギア比が13.6:1とクイックなことだ。ロック・トゥ・ロックは実に2.2回転。一般的なモデルは3回転強といったところで、あえてスローにしている「マツダCX-60」などは4回転もある。そのクイックさのおかげで、ステアリングを少し動かすだけでノーズがグイッと反応する。敏しょう性の高さはピカイチで、ワインディングロードなどでは分かりやすい楽しさがある。
ステアリングギア比の大きさは好みが分かれるところで、トナーレを初めて運転すると最初はなじめないかもしれないが、人間の適応能力は侮れず、30分も走らせていれば慣れてくる。そうなると、少ない操作量で操れることに価値を感じて、もうスローなステアリングには戻りたくないと思えてくるほどだ。
ノーズの動きは俊敏だがリアはきちんと安定していてSUVの背の高さを感じさせない安心感がある。日常域は快適で、積極的に走らせれば適度にスポーティー。トナーレの走りは、新世代アルファ・ロメオとして程よいバランスだ。MHEVとしてはけっこうな電動車感がありながら、ターボエンジン+DCTの快活さがあるところも含めてバランス感覚に優れている。ブランドイメージやルックスには大いに個性がありながら、肩ひじ張らずに長く付き合えそうなモデルなのだ。
(文=石井昌道/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・トナーレ エディツィオーネ スペチアーレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4530×1835×1600mm
ホイールベース:2635mm
車重:1630kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力: 160PS(118kW)/5750rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/6000rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)235/40R20 96V/(後)235/40R20 96V(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:16.7km/リッター(WLTCモード)
価格:578万円/テスト車=592万2450円
オプション装備:ボディーカラー<ミザーノブルー>(8万8000円) ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器(5万4450円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1227km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:409.2km
使用燃料:28.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.6km/リッター(満タン法)/15.6km/リッター(車載燃費計計測値)
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆「アルファ・ロメオ・トナーレ」の新グレード「ヴェローチェ」登場
◆アルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「トナーレ」が日本に上陸
◆アルファ・ロメオ・トナーレ(FF/7AT)【海外試乗記】
◆アルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「トナーレ」が正式デビュー

石井 昌道
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
アウディA6アバントTFSIクワトロ200kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.5 今も昔もアウディの中核を担うアッパーモデル「A6」。その最新世代の「アバント」に試乗した。堂々とした優雅なボディーに最新のハイブリッドシステムを搭載したステーションワゴンは、いかなる走りを見せてくれるのか。その実力をリポートする。
-
ホンダN-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル2トーン(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.3 フロントグリルとメッキパーツの面積が大きくなって迫力が増した最新の「ホンダN-BOXカスタム ターボ」に試乗。マイナーチェンジで進化した内外装の仕上がりと、軽四輪車の販売で11年連続の首位を誇る“絶対王者”の走りを報告する。
-
NEW
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.10.12試乗記ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。 -
NEW
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く
2026.10.12デイリーコラムアルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは? -
NEW
第346回:EVかいわいで辰巳かいわいへ
2026.10.12カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の「サクラ」と「アリア」、そしてホンダの「スーパーONE」と、国内メーカーがリリースする3台のEVに立て続けに試乗した。三者三様の走りを味わい、リアルに感じたことをカーマニア目線で報告する。 -
スズキ・ジムニー ノマドFC(後編)
2026.10.11ミスター・スバル 辰己英治の目利きスズキが誇る本格オフローダー「ジムニー ノマド」に、“ミスター・スバル”こと辰己英治さんが試乗。クラシックなクロスカントリーモデルの舗装路での振る舞いは、かつてスバルでクルマの走りを鍛えてきた彼の目にどう映るのだろうか? -
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション
2026.10.9webCG Moviesホンダを代表するSUV「CR-V」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきたエンジニア、多田哲哉さんが試乗。その仕上がりにどんなことを思ったのか、動画でリポートします。 -
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く
2026.10.9デイリーコラムパナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。





















































