マツダCX-60 XDエクスクルーシブモード(4WD/8AT)
伸びしろは十分 2023.03.14 試乗記 熱心な読者の方であれば、マツダの新世代SUV第1弾「CX-60」の乗り味に賛否合わせてさまざまな意見があることはご存じだろう。今回の試乗車はマイルドハイブリッドではないピュアなディーゼルの「XD」。高速道路とワインディングロードを中心に走ってみた。シャシーもエンジンも新しい
「マツダCX-60のプレス試乗会に行きませんか」とwebCG編集部。「うーん、CX-60かぁ……」と内心ちゅうちょするひまもなく「喜んで!」と応えていた。心も懐も貧しいフリーランスの悲しさである。
CX-60は言うまでもなくマツダの新しいフラッグシップSUV(※暫定)。自動車の電動化が世界の潮流になりつつあるとされるなか、広島の自動車メーカーはわざわざフロントエンジン・リアドライブ(FR)車用のプラットフォームをイチから起こし、そこにこれまた新開発の直列6気筒ディーゼルを載せるという反骨ぶりを示した。クルマは運転が愉(たの)しくてなんぼ。内燃機関にはまだまだ改善の余地がある。そう主張したいのだ。
もちろんエレキへの配慮も怠らず……というか、実際にはこちらが本題となるのだが、用意される2種類のパワーソースのうち、新しい3.3リッターの直6ディーゼルターボには、ピュア内燃機関モデルに加え、モーターを組み込んだマイルドハイブリッドタイプが、2.5リッター直4エンジンには純ガソリン車のほかに、EV走行換算距離75km(WLTCモード)をうたうプラグインハイブリッド車(PHEV)がラインナップされる。
トランスミッションは、いずれもトルクコンバーターを持たない8段AT。駆動方式は、FRをベースに多板クラッチを必要に応じて圧着することで駆動力をフロントに送る「i-ACTIV AWD」ほか、ピュアディーゼル車とピュアガソリン車は2WD(後輪駆動)もカタログに載る。
ピリッとしなかった記憶
CX-60の試乗会参加のオファーを受けたときに心に暗い影がよぎったのは、別の機会に乗せてもらったディーゼルハイブリッドモデルの、その乗り心地にあまり感心しなかったからだ。
「走りのスポーティーさ」には定評のあるマツダ車だけあって、実際、「CX-5」などは車両寸法を忘れさせる胸のすくハンドリングで運転者を喜ばせるが、新型のFR SUVは、初めて同車のステアリングホイールを握った者を戸惑わせた。
締まった足まわりは予想どおりでむしろ「ドンと来い!」なのだが、硬めのサスペンションにもかかわらず、入力を受けたあとのボディーの収まりがどうにも悪い。一般道では細かく揺動して大型SUVらしからぬ振る舞いを見せることがあり、20インチを履く足元のバタつきも気になった。高速道路に入れば見違えるようにスムーズになるかと思いきや、依然として落ち着きを欠いたまま。ピリッとしない。
困惑顔のドライバーは、「このクルマに必要なのは、スカイアクティブではなくスカイフックなサスペンションだな」などと分かったようなことをつぶやき、「まだ新世代プラットフォームを使いこなせていないのかしらん」と無責任な心配をする。
ストレート6の後輪駆動(とFRベースの四輪駆動)と聞けば、ことに内燃機関を満喫してきた昭和世代としては、もろ手を挙げて歓迎せねばならぬ対象である。応援したいのはやまやまなのだが……と、モヤモヤした気持ちのまま試乗会場へと向かった。
輸入車からの乗り換えも
2022年9月15日に販売が開始されたマツダCX-60は、自動車メディアのザワつきとは裏腹に、2023年1月末までに国内での累計販売台数が2万台を突破する好調ぶり。当初の月販目標が2000台だったというから、昨今の半導体不足の折、文字どおりうれしい悲鳴だろう。
大別して4種類あるグレードのうち、パワーソースにディーゼルを選ぶユーザーがなんと8割! 内訳はハイブリッドが43%、ピュアディーゼルが37%という。初物好きとして、「せっかく買うなら6気筒を」というわけだ。
気になるのは、PHEVが4%どまりで振るわないこと。539万~626万4500円と最も高価なこともあるが、やはりマツダ党とエレキは相性が悪い!?
購入層としては、事前の予想どおりCX-5のオーナーが求めることが多いようだが、「ウチの販売店としては珍しいことに」と、マツダのスタッフが笑顔で教えてくれたことには、「輸入車で乗りつけるお客さまもけっこういらっしゃる」そう。
なにしろ、同じようなサイズの「メルセデス・ベンツGLC」や「BMW X3」は、最廉価グレードでも700万円台からである。分かりやすくカッコいいCX-60は、ピュアディーゼルが323万9500円から、ハイブリッドが505万4500円から。ことにクルマの買い替えを考えているような人なら、「ちょっと見てみようか」という気になるはず。
この日ステアリングホイールを握ったCX-60は、中堅グレードの「XDエクスクルーシブモード」。モーターのアシストを受けない純粋ディーゼルターボの四駆である。
長いノーズに強く後傾したAピラー、コンパクトにまとまったキャビン。価格帯ではドイツ御三家と重ならないはずの、しかし“プレミアム”を狙ったCX-60のフォルムはなるほどスタイリッシュだ。
気になる乗り心地は?
マツダCX-60の特徴のひとつに、299万2000円~626万4500円と、価格の幅が広いことが挙げられる。高額グレードのインテリアのなかには、「モテ」と「オシャレ」に縁のない人生を送ってきたライター(←ワタシです)がギョッとするほど素材や表面処理に凝ったホワイト基調のもの(プレミアムモダン)もあるが、今回試乗するXDエクスクルーシブモードのそれは、黒ベースでやや地味め。そうはいっても、ブラックのナッパレザーを表皮に使ったシートにはブラウンのラインとステッチが入る。アラ、ステキ。
そうした表面的な魅力も大事だが、特筆すべきはシートの座り心地のよさ。一見、ラグジュアリーな形状だが、太ももの裏や腰から背中にかけて、ソフトでいながらしっかりと体を支えてくれる。日常使いでのホールド性が高いのだ。マツダがこだわる「正しい運転姿勢」とあわせ、CX-60の隠れた魅力のひとつだと思う。
注目の6気筒ディーゼルは、ターボ過給を得て、3283ccの排気量から231PS/4000-4200rpmの最高出力と、500N・mの最大トルクをわずか1500rpmから3000rpmまで発生する。意地悪くボンネットの横に立てば軽油が燃料のエンジンと知れるが、運転席に座ってしまえば、最近のディーゼルエンジンらしく、車内の静粛性は至って高い。
いざ走り始めれば、完全バランスの6気筒ゆえのスムーズさが垣間見えるが、さほど回りたがるエンジンには感じられない。広報資料には「重層なシンフォニー」「ビート感のある音をつくり込んで」と記載されるが、サウンドとフィールに関してはあまり高望みしないほうがいいかもしれない。
一方、低回転域からトルクが豊かで、8スピードのギアボックスの恩恵もあって、あまり回さずともドンドン車体を進めてくれる。トップギアでは、最大トルクの発生回転数付近で100km/hに達する。余力を秘めた高速巡航は静かでラクチン。華やかなシルキーシックスというよりは、自己主張の強すぎない、頼りがいのある実用ディーゼルだ。
気になる乗り心地は、身もふたもない言い方をしてしまうと、「まあ、普通」。ただ前述の、以前乗ったクルマと比較すると心のささくれが少ない。XDグレードの車重は1890kgとハイブリッド版の1940kgより小柄な人ひとり分ほど軽いが、そうしたスペックの違いより、メディア向けの試乗車は最初期モデル、場合によってはプリプロダクションに近い生産車が供されることが多いので、「慣れない大型FR SUVゆえの個体差だったのか」と推測する。
ワインディングロードで真価を発揮
CX-60のサスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式、リアが一部の接続部にピロボールを用いたマルチリンク式。新世代ラージモデルの第1弾だけあって気合の入ったぜいたくな足まわりだ。とはいえ、ディーラーを訪れた輸入車オーナーを納得させるには「まだまだ改善の余地あり」などとエラそうに頭のなかでメモをとっていると、いつしか試乗コースはカーブの連続するハンドリングセクションへ。
失礼ながらあまり多くを望まず軽くむちを入れると、渋いグレーメタリックにペイントされたCX-60は、クルマが変わったかのようにスムーズな走りを見せるじゃありませんか!
車体寸法のわりにスポーティーな径のステアリングホイールを回すと、穏やかながら正確にステア操作に応えてくれる。ライントレース性もいい。限界領域を試すような走りではまったくないけれど、右へ左へと切り返しが続いても、CX-60は上屋を持て余すことなく、素直なロールでドライバーとの一体感をアピールする。
もしかしたらCX-60のサスペンションは、見込みどおりに可動するための入力の閾値(いきち)が高いんじゃないでしょうか。平滑路面でのサーキットでのテスト走行では高得点を得るものの、小さく不規則な凹凸が続く普段使いでのネガをつぶしきれていない、のかも。
輸入車では、初期ロットと数年後ではまるで違うクルマに仕上がっていることが多い……というかむしろそれが普通だから、マツダのニューSUVもこれからグングンよくなっていくに違いない。
たまたまだが、試乗会場に向かう車内でCX-60の乗り心地について話していた際に、webCGスタッフが発したセリフ。「いくら年次改良でよくなるといっても、ユーザーは、毎年買い替えるわけにいきませんからね」。誠に正しい意見ではあるが、それは言っても詮ないことである。マツダCX-60の今後に期待したい。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
マツダCX-60 XDエクスクルーシブモード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4740×1890×1685mm
ホイールベース:2870mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231PS(170kW)/4000-4200rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1500-3000rpm
タイヤ:(前)235/50R20 100W/(後)235/50R20 100W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:18.3km/リッター(WLTCモード)
価格:465万8500円/テスト車=482万3500円
オプション装備:特別塗装色<マシーングレープレミアムメタリック>(5万5000円)/ドライバーパーソナライゼーションシステムパッケージ(5万5000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1520km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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