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ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト117(6MT)

最高にクレイジー! 2023.03.21 試乗記 田村 十七男 ロー&ロングな「ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト」が、排気量1.9リッター(!)の「117」に進化。これほど巨大なエンジンを積んだマシンのライドフィールとは、どんなものなのか? ハーレー伝統のイメージを貫くビッグクルーザーの魅力に触れた。

せいぜい2人しか運べないのに……

“春のハーレー祭り”ということで、年明けに発表されたばかりの2023年モデル試乗会へ。久しぶりに会っても安定した表情と体形で和ませるwebCG編集部員のホッタ青年に促されて最初にまたがったのは、ラインナップのクルーザーファミリーに属するブレイクアウト。なぜこれを選んだのかとたずねたら、「排気量が大きくなったうえに、イヤーモデルの顔的存在なので」と、わりにミーハーな、特に大した理由はないみたいだった。

大したものだったのは、ハーレーでした。ここ数年、アメリカメイドの伝統的なブランドに触れるたび、偉いなあと思ってしまいます。今年で120周年を迎えるそうだけど、歴史の重みと相まって、世界で一つだけであろうとする意志は年々強まっているように感じるんですよね。

例えば、5年ぶりの刷新で搭載されたブレイクアウトの「MILWAUKEE-EIGHT(ミルウォーキーエイト)117」Vツインエンジン。これ、1923ccなんですよ。出力自体は最大102HPなので、もっと小さな排気量でもっと高馬力のユニットはほかにもあるけれど、せいぜい2人しか運べないのにほぼ2リッターの排気量が必要だと思いますか?

いや、ハーレーには必要なのでしょう。大陸をクルーズするためには相応の余裕を持つべきという理屈で。エンジンの拡大も、それからフューエルタンクの容量が13.2リッターから18.9リッターに増したことも、「もっと遠くへ」を望んだユーザーのリクエストに応えたためらしい。で、1923cc。ちまちまと小さいことを気にかける自分が情けなくなってくる。

低く構えたチョッパースタイルが特徴の「ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト117」。直接の起源は2013年に登場した「FXSBブレイクアウト」なので、今年でちょうど10周年を迎える。
低く構えたチョッパースタイルが特徴の「ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト117」。直接の起源は2013年に登場した「FXSBブレイクアウト」なので、今年でちょうど10周年を迎える。拡大
空冷と油冷を組み合わせた冷却機構と、OHVでありながら1気筒4バルブのヘッドを持つV型2気筒エンジン「ミルウォーキーエイト」。2023年モデルには、最大排気量の「ミルウォーキーエイト117」が搭載される。
空冷と油冷を組み合わせた冷却機構と、OHVでありながら1気筒4バルブのヘッドを持つV型2気筒エンジン「ミルウォーキーエイト」。2023年モデルには、最大排気量の「ミルウォーキーエイト117」が搭載される。拡大
燃料タンクの容量は5ガロン(18.9リッター)と、従来型より約43%も大きくなった。
燃料タンクの容量は5ガロン(18.9リッター)と、従来型より約43%も大きくなった。拡大
カスタムマシンもかくやという極太のリアタイヤ。タイヤサイズは前:130/60B21、後ろ:240/40R18だ。
カスタムマシンもかくやという極太のリアタイヤ。タイヤサイズは前:130/60B21、後ろ:240/40R18だ。拡大

きらびやかなクロームがまぶしい

このエンジンの注意点を一つ。排気量で察しがつくように、油断したまま一気にスロットルを開ければ首がガクンと折れるような加速を見せます。だから慎重に。慌てずともトルクが太いので、すうっと開けるだけでも大柄なボディーをしっかり前に進めてくれます。

うっかりしちゃうのはウインカー操作。ブレイクアウトのウインカースイッチはハンドルバーの左右に備わっていて、右折したい場合は右のスイッチを押せばいいのだけど、スロットルグリップを握ったまま親指をスイッチに伸ばすと、つられてスロットを開けてしまう場合アリ。これ相当に焦るし、乗り慣れていない感が周囲にバレます。グリップやレバーの太さやスイッチ類の位置関係も、なぜか昔からほとんど変わっていないので、そこはハーレーらしさと受け入れるほかにないですね。

もう一つの偉さは、クロームの大量投入。ここまでビカビカに仕上げるのも、今ではハーレーくらいのものでしょう。なおかつクロームの質自体が向上しているのか、実物には過去にない“深み”が感じられました。

「これ以上、どこに手をかけますか?」と言わんばかりの、カスタマイズというかドレスアップの深度を見せつけるのも最近のハーレーの特徴です。「ヘビーブリーザー」と呼ばれるフィルターむき出しのエアインテークなんて、昔は標準装備にならなかった。それからホイール。片側13本、両面で26本のスポークが走っていますが、円周を26で割り出すってどう計算しているんだろう? と、またしても細かいことが気になるくらいにシャープなルックスです。

操作性を改善するべく、ハンドルバーライザーとポリッシュ仕上げのステンレス製ハンドルバーは、従来型より高さを4分の3インチ(約2cm)アップ。メーターはなく、代わりに小さなインフォメーションディスプレイが装備される。
操作性を改善するべく、ハンドルバーライザーとポリッシュ仕上げのステンレス製ハンドルバーは、従来型より高さを4分の3インチ(約2cm)アップ。メーターはなく、代わりに小さなインフォメーションディスプレイが装備される。拡大
大胆に採用された各所のクローム仕上げも、2023年モデルの「ブレイクアウト」の特徴。使用範囲が広いだけでなく、その仕上がりも非常に美しい。
大胆に採用された各所のクローム仕上げも、2023年モデルの「ブレイクアウト」の特徴。使用範囲が広いだけでなく、その仕上がりも非常に美しい。拡大
エンジンから横に突き出たエアインテーク。少しでも多くの空気を取り込むことで、低・中回転域のトルクを増強させるもので、カスタムバイクを思わせる武骨なデザインも魅力となっている。
エンジンから横に突き出たエアインテーク。少しでも多くの空気を取り込むことで、低・中回転域のトルクを増強させるもので、カスタムバイクを思わせる武骨なデザインも魅力となっている。拡大
これも2023年モデルの特徴となっている、26本スポークのキャストホイール。切削加工とグロスブラック塗装の組み合わせが目を引く。
これも2023年モデルの特徴となっている、26本スポークのキャストホイール。切削加工とグロスブラック塗装の組み合わせが目を引く。拡大
カラーリングは「ビビッドブラック」と「ブラックデニム」「アトラスシルバーメタリック」「バハオレンジ」(写真)の4種類が用意される。
カラーリングは「ビビッドブラック」と「ブラックデニム」「アトラスシルバーメタリック」「バハオレンジ」(写真)の4種類が用意される。拡大
アメリカンクルーザーらしくシート高は665mmと低く、足つき性は良好。ペダル位置はかなり前目で、ライディングポジションは足を前方に投げ出すようにしてまたがる、フォワードフットコントロールとなる。
アメリカンクルーザーらしくシート高は665mmと低く、足つき性は良好。ペダル位置はかなり前目で、ライディングポジションは足を前方に投げ出すようにしてまたがる、フォワードフットコントロールとなる。拡大
巨大なエンジンに身をゆだねて、どこまでも延々と走っていきたくなる。2023年モデルの「ブレイクアウト」は、そんな“昔ながらのハーレーの魅力”にあふれた一台だった。
巨大なエンジンに身をゆだねて、どこまでも延々と走っていきたくなる。2023年モデルの「ブレイクアウト」は、そんな“昔ながらのハーレーの魅力”にあふれた一台だった。拡大

何の前置きなしにハーレーが欲しいと思ったら

「ボカぁねえ、ハーレーには旅情を感じるんです。ただひたすら延々走るのに、これほどキモチイイものはないですよ~」

そう言いながらホッタ青年は遠い目をする。オーナーでもないくせに。ブレイクアウトには脱獄・脱出という意味もあるから、彼が日常を強行突破するときには、迷わずハーレーを選ぶのかもしれないな。

雑に聞こえないといいけれど、もしあなたが何の前置きなしにハーレーが欲しいと思ったら、ブレイクアウトを薦めます。これは、世界中の誰もが求めるハーレーの普遍的要素で構成された一台です。さらに、あなたがエンジンという機械が好きなら、いち早くブレイクアウトを押さえたほうがいいです。内燃機関の終末期を迎えて、これほどクレイジーなエンジンの魅力をたらふく味わえる乗り物はどんどん少なくなっていくからです。

そういうモデルを正しく提供できるところもハーレーの偉さ。そんなことできるブランド、今や限定的だと思うのですが、いかがでしょう。

(文=田村十七男/写真=ハーレーダビッドソン ジャパン/編集=堀田剛資)

ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト117
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ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト117(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2370×--×--mm
ホイールベース:1695mm
シート高:665mm
重量:310kg
エンジン:1923cc 空油冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:102HP(76kW)/5020rpm
最大トルク:168N・m(17.1kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.6リッター/100km(約17.9km/リッター、EU134/2014)
価格:326万4000円~331万9800円

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