ハーレーダビッドソン・ナイトスター スペシャル(6MT)
さわやかに汗を流せるアメリカン 2023.03.28 試乗記 ニューモデルの投入により、いま勢いに乗っているハーレーダビッドソン。その象徴的なモデルともいえるのが、新エンジンを搭載した“スポーツ”ファミリーのマシンだ。2023年モデルで登場した「ナイトスター スペシャル」に乗り、今どきのハーレーを味わってみた。勢いに乗るブランドの象徴
2023年モデルをお届けする春のハーレー祭り。後編は、スポーツファミリーに属するナイトスター スペシャルだ(ちなみに前編はこちら)。「ハーレーって夜のイメージが好きだよね」と、試乗会を案内してくれたwebCG編集部のホッタ青年に言おうとしたら、そんな隙もなくまくしたてられました。
「いい波に乗っている最近のハーレーの象徴です。勢いがあるモデルなんですよ。最近のヨーロッパでは、日本製バイクからハーレーのスポーツ系に乗り換える人も多いらしいですから」。その発言を裏づけるデータでも見せてくれるのかと思いきや、言いたいことだけ言って切り上げられてしまった。小兵の力士みたいだったな。
そんなわけで、勢いがあって、たぶんホッタ青年の推しで、過去のハーレー乗り以外のライダーからも注目を集めているナイトスター。ルックスやサイズ感から「スポーツスター」の後継車とみていいわけですが、そのエンジンはおなじみの空冷ではなく、ハーレーダビッドソンでは液冷と称する新しいエンジンに移り変わりました。その名も「REVOLUTION MAX(レボリューションマックス)975」。末尾の数字は、そのまま排気量を示しています。
キャパシティーに対する89HPの出力は妥当で、これはホッタ青年の感想ですが、中回転域から開けたときの感触が意外やスポーティーとのこと。当然のことながら、“クルーザー”ファミリーより上のモデルで採用されている、2リッター近いエンジンのような暴力性は皆無。なので、ナイトスターのスポーティーは、河川敷あたりのテニスコートで爽快な汗をかくというような、日常的趣味の範囲にとどまります。あくまで個人的な見解ですが。
とはいえ、電子系ギミックは満載。状況に応じて切り替えられる5種のライドモード、タイヤの空気圧センサーやクルーズコントロールに、スマホとのBluetooth接続機能まで付いている。こういうのはツーリングが大好きな人にはありがたいんだろうねと感心していたら、遠くでホッタ青年がほくそ笑んでいました。彼はどんな立場でここにいるんだろう?
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
思わず妄想してしまう「V-ROD」とのつながり
またまた個人的な見解ですが、旧スポーツ系(当時は“スポーツスター”ファミリーと呼ばれていた)のサイドビューが好きでした。持ち上がった前部から後方に向かうほど下がるいびつな台形は、フラットトラックレース車両のイメージに倣っていて、エンジンむき出しのオートバイとして一つの完成形とさえ思っていた。
ただし、ハンドリングに関しては受け入れ難いものがありました。フロントが意図せず妙に倒れ込む雰囲気は、ナンだかとても気持ち悪かった。そんな記憶を残しつつナイトスター スペシャルを走らせたわけですが、「むむむ?」でしたね。苦手だったクセがほとんど感じられなかった。
「それはアレですね」というのはホッタ青年。アレとはなんぞや? 「ナイトスターではフューエルタンクに見える部分は実はエアクリーナーカバーで、タンク本体はシート下に配置されているんです。そのおかげで重心位置が変わり、ハンドリングが向上したんじゃないでしょうか」
へぇ、ハーレーもそんなことするんだ。いや、してきたな。それを思い出させてくれたのが、試乗会で用意されていた(今回は試乗しなかったけど)同じスポーツファミリーの「スポーツスターS」。そのたたずまい、特にマフラーのレイアウトが、およそ20年前に発表され今は姿を消した「V-ROD」をほうふつとさせたんですね。ポルシェと共同開発したという、ハーレー初の水冷エンジンモデル。そのV-RODも、フューエルタンクはシート下でした(ちなみにスポーツスターSのフューエルタンクは、普通にエンジンの上にあります)。
そうかとヒザを打って、というのは比喩ですが、あらためてナイトスター スペシャルのエンジンを眺めると、水冷、いや液冷式ユニットのデザインにもV-RODからの流れがあるような。このあたり、ハーレー側の確認はとっていませんが、「それはアレかもしれない」と勝手な考察を楽しませてくれるところも、やっぱりハーレーは偉いなあと思います。さすが120周年! って、なんだかホッタ青年の呪術にハマった気がしてきた。
気負わずに済む、それでいて新しいハーレー。なのでスポーツファミリーの立ち位置は、やっぱり河川敷のグラウンドのイメージです。広く多くの市民に解放されている点でも。気負いがちなホッタ青年が期待するオチになったかな?
(文=田村十七男/写真=ハーレーダビッドソン ジャパン/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2265×--×--mm
ホイールベース:1545mm
シート高:715mm
重量:225kg
エンジン:975cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:89HP(66kW)/7500rpm
最大トルク:95N・m(9.7kgf・m)/5750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.1リッター/100km(約19.6km/リッター、EU134/2014)
価格:237万3800円~240万6800円
