日産スカイラインGT-R M.spec(4WD/6MT)
次へのプロローグ 2023.04.08 試乗記 いよいよ正式発表された2024年型「日産GT-R」。ちまたでは「今度こそファイナルか!?」とのうわさもあるが、先代のGT-Rは、モデル終盤にどのような存在となっていたのか。先代……すなわちR34型の「スカイラインGT-R M.spec」(2001年)の試乗記を振り返る。(以下は2001年5月11日に公開した記事に加筆・修正したものです)
本革仕様と微振動吸収型ショックアブソーバーで、“大人のGT-R”を狙った日産スカイラインGT-R M.spec。「耐久レースの速さ」に例えられるチューンを施された新しいスペックモデルには、見かけの仕様変更のほか「見逃せないポイントがある」と、自動車ジャーナリスト河村康彦は言う。
次の「R」を示唆?
R34型、すなわち現行のスカイラインGT-Rは、間もなく行われるスカイライン“本体”のモデルチェンジ後も、「GT-R」として継続生産されることが決定したもようだ。次期ノーマルモデルから、“スカイラインの伝統”と言われてきた「直列6気筒エンジン」や「丸型テイルランプ」は姿を消すことになりそう。そうした状況下で、次のGT-Rをどうするかは、「現在のところまったく白紙」と日産は述べる。
そんななか、姿を現したのが、GT-R M.specだ。実はこのモデル、これからの「R」の方向性を示唆する、見逃せない内容を秘めた一台なのである。
"発売済みの「V.specII」が、サーキットでのラップタイムのコンマ1秒を削ることにすべてをささげたモデルであるのに対し、M.specは、「例えばのハナシ、耐久レースのように数十周、数百周を重ねて、結果的にトップのポジションで駆け抜けることができるようなチューニングを施したモデル」であると日産は言う。そのためにとった手法が、微小ストローク域での高い振動吸収性を狙った新ダンパー「リップルコントロール・ショックアブソーバー」と、衝撃吸収性を高めた専用革張りシートの採用である。
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大人の乗り味
実際、M.specの乗り味は、「GT-R史上、最良のコンフォートを備えたもの」と言ってよいものだ。路面の凸凹を拾っての「ヒョコヒョコとした」動きがきれいに吸収され、場合によっては「しなやかな」というフレーズを使う気にさえさせる。むろんそうはいっても、あくまでも「GT-Rとしては」という前提がつく。絶対的には、決して“ソフトな脚”の持ち主というわけではない。
微小ストローク域の動きが滑らかになったことで、公道上では頻繁に遭遇する荒れた路面での「接地性」「安心感」も結果的にアップした。個人的に、R34型GT-Rから一台を選ぶのであれば、ぼくは迷うことなくM.specをチョイスする。「どうして今まで出てこなかったのか……」、そう思わせる“大人の乗り味”が魅力だ。
こうしたM.specのスペック(?)を総合プロデュースしたのが、かつて日産の「グループCカー」や「ル・マン24時間レース用スカイライン」の監督業務を行ったMエンジニア。そして氏は、間もなく登場する“次世代スカイライン”の開発総責任者でもある。そう、このM.specに込められた走りの方向性は、そのまま次のスカイラインに踏襲される、と読むことができるわけ。GT-R M.specは、次期スカイラインのプロローグでもあるのだ。
(文=河村康彦/写真=難波ケンジ)
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【編集後記】
マニアの間では有名な「『M.Spec』の“M”は水野の“M”」という話にも表れているとおり、「スカイラインGT-R M.spec」は、文中の「Mエンジニア」こと水野和敏氏と深いかかわりがある。そしてその水野氏は、現行にあたるR35型「日産GT-R」の開発を主導した人物だ。2001年に登場した先代のM.specに、今日のGT-Rに通じる側面があるのは間違いないだろう。
一方で、当時のM.Specと同じく、あまたの新しい試みとともに開発された2024年モデルのGT-R。このクルマもまた、未来の日産製ハイパフォーマンスカーを示唆する「未来へのプロローグ」なのだろうか? そうした視点で新しいGT-Rを観察するのも、面白いかもしれない。
(webCGほった<webCG”Happy”Hotta>)
テスト車のデータ
日産スカイラインGT-R M.spec
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1785×1360mm
ホイールベース:2665mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.6リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:280PS(206kW)/6800rpm
最大トルク:392N・m(40.0kgf・m)/4400rpm
タイヤ:(前)245/40R18/(後)245/40R18
燃費:8.1km/リッター(10・15モード)
価格:595万円/テスト車=618万8000円
オプション装備:--
テスト車の年式:2001年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター(車載燃費計計測値)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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