シボレー・コルベットZ06(MR/8AT)【海外試乗記】
ありのままの猛獣 2023.05.20 アウトビルトジャパン レースカーのごとき走りとソウルフルなサウンドで私たちを魅了した「シボレー・コルベットZ06」だが、その音は欧州向けにトーンダウンされたものだった。オリジナルはどれだけ違うのか? 走りはどうなのか? そのフィーリングを確かめてみよう。※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
欧州仕様の“感動”のはるか上をいく
2023年3月末のドイツの空はまだ不安定だったが、本国仕様のコルベットZ06をテストしたくてシボレーに打診した。そして、了解を得たわれわれは喜び勇んでケンタッキーへと飛んだ。
インストラクターのグレッグ・ウォルドロンがミドシップV8を始動させた瞬間、われわれは目を見開いて驚きを隠せなかった。2022年末に、ラウジッツリンクのピットレーンで、初めて欧州仕様のZ06の音を聞いたときにも感動したが(参照)、今回は、はるかにその上をいくものだったのだ。
寒さから目覚めたフラットプレーンV8の爆発のリズムを、胸全体で感じることができる。正直なところ、この喜びと感動を私たちから奪った欧州仕様の調整担当者は、両方の頰をたたかれるべきだろう。われわれに与えられたのは、ベースモデルの「スティングレイ」にオプション設定される、左右4本出しエキゾーストのパフォーマンスバージョン“だけ”だったのだから。
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サーキットを駆ける「C8.R」のストリートバージョン
Z06は「C8.R」のストリートバージョンとして登場した。この高性能モデルは、レーシングバージョンとの親交を隠すことなく語っている。1年前、チーフテスターのオリバー・ギャバンが「これほどまでにレーシングカーに近いコルベットはない」と約束している。そしてそのとおりだった。なにしろ、耐久レースの裏口からZ06を登場させたのと同じなのだから。
フラットクランクシャフト、それに対応する回転の快感、そして(90年代の「ZR1」以来となる)、4つのオーバーヘッドカムシャフトを備えたV8は、プッシュロッド式のスティングレイの6.2リッターとは全く関係がない。サウンドは金切り声のような高音で、8600rpmのリミッターに引っかかるまで快楽の叫びを上げ続ける。今回は、この燃えるような赤いモンスターに迫ってみたい。
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サーキットではタイヤの温度にご用心
まずはタイヤを確認する。ミシュラン製の「パイロットスポーツ4 S」だが、オプションのセミスリックタイヤには当然かなわない。275幅のフロントタイヤはフロントアクスルの安定性という点で多くのことを約束してくれるが、タイヤの温度が大きくパフォーマンスに影響する。
ターンインの挙動はよいのだが、ブレーキングを弱めるとすぐ外側に滑り始めるのが気になる。ピットアウトの際も、Z06はスティングレイより緊張感があり、トゲトゲしく感じられるが、これはドライビングダイナミクスという点では褒め言葉だ。冷えた状態のタイヤで加速するときは、スポーツESPが介入して暴れるのを抑えてくれる。
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そのパワーは345幅のリアタイヤでさえ持て余す
リアに345幅のタイヤを装着するにもかかわらず、フルパワーをアスファルトに伝えるのは難しい作業だ。だから、まずはタイヤの温度を上げながらコースを覚えていく。インストラクターのウォルドロンがベーシックな“ヴェット”を走らせるが、680PSのパワーを持つわれわれはついていくのに全く苦労しない。
2周もすると、ペースが上がり、コーナリングスピードが上がり、特にターン20ではタイヤがアスファルトに食い込むようになり、出口でクレストにぶつかるとフロントエンドが軽くなり、わずかに緩む程度になった。高速カーブでの荷重変化は? リアに引っかかりがなく、とてもいい。ステアリングを切ったときのブレーキの安定性は? 畏敬の念を抱かせるほど、驚くべきものだ。特にカーボンセラミックブレーキが直感的にコントロールできるのが気に入った。
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4500rpmから上でさく裂する珠玉のV8
しかし、スティングレイとの最も顕著な違いはパワーデリバリーだ。もちろん、200PS近いパワーアップは顕著だが、5.5リッターのパワーが各回転域でどのように配分されているかのほうが重要だ。低回転域はまだ控えめだが、4500rpmあたりでアフターバーナーが点火。6500rpmあたりまで一気に吹け上がり、狂ったように車体を引っ張り、疾走する。まだリミッターまで2100rpmもあるというのに。
「LT6」はドライサンプ潤滑方式で、内部はチタン製、コルベットにとってミドエンジンレイアウトと同じくらい革命的な基本構造を持つレーシングエンジンだ。その起源はC4世代のZR1にさかのぼる。1気筒あたり4つのバルブとオーバーヘッドカムシャフトを備えたその5.7リッターは、イギリスのロータスで開発され、コルベットの工場では製造されなかった。新しいZ06のエンジンは、シボレーが自社で初めて開発した現代の高性能V8エンジンであり、その血沸き肉躍るようなサウンドもまた特別なのだ。
結論
米国仕様のZ06は、欧州仕様と比較すると、少なくとも音響的には全く異なるクルマだ。中央の4本のパイプは、なんらろ過することなく雄たけびを上げる。パイロットスポーツ4 Sタイヤは、ドライビングダイナミクスの面ですでに多くのことを行っているが、セミスリックであれば、それをさらに向上させるだろう。
(Text=Alexander Bernt/Photos=Hunter Madison)
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AUTO BILD 編集部
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