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トライアンフ・ストリートトリプル765 RS(6MT)

最高のネイキッドスポーツ 2023.06.12 試乗記 後藤 武 世界最高峰のレースで鍛えた技術により、さらなる進化を遂げた「トライアンフ・ストリートトリプル765」。走りのよさと扱いやすさ、そしてエキサイトメントと、全方位的に魅力が増した英国発のネイキッドスポーツは、今日における“最良の一台”に仕上がっていた。
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サーキットで得た知見をストリートへ

ロードレース世界選手権のMoto2クラスでエンジンサプライヤーとなっているトライアンフが、レースで鍛えられた技術を余すところなく注ぎ込んでつくり上げたのが、2023年モデルの「ストリートトリプル765 RS」だ。

ストリートトリプルは、優れた運動性と高いパワーを両立させたスポーツモデルとして、デビュー以来着実に進化を遂げてきたが、このモデルではエンジンのパワーを130PS、最大トルクを80N・mまで引き上げ、最新のマネジメントシステムも導入。これまで以上に高いパフォーマンスを手に入れている。

過去のインプレッションでも説明したことだが、スポーツバイクをストリートでテストしても、その本当の性能を引き出すことはできない。だからこういうテストをする場合は、これで楽しさが伝えられるものかと思うこともある。ところがストリートトリプルは事情が違う。高いスポーツ性を発揮しながらも、実用速度域で極めて乗りやすく、ファンなマシンになっているからだ。

秘密のひとつは躍動感のある3気筒エンジンだ。車体がコンパクトだから油断してしまいそうになるのだが、このマシンは低速からのトルクがすごい。低回転からスロットルを開けるとイメージしていたよりも5割増しくらいのトルクで加速していく。ストリートトリプルに初めて乗るライダーは、この力強さに驚くことになるだろう。

機敏な走りとアグレッシブなスタイルが自慢の「トライアンフ・ストリートトリプル」。2023年モデルでは大幅な改良が加えられ、車名も新たに「ストリートトリプル765」となった。
機敏な走りとアグレッシブなスタイルが自慢の「トライアンフ・ストリートトリプル」。2023年モデルでは大幅な改良が加えられ、車名も新たに「ストリートトリプル765」となった。拡大
車名の「765」は直列3気筒エンジンの排気量に由来。2023年モデルでは圧縮比が12.65:1から13.25:1に変更され、新たな燃焼室形状に合わせてピストン、コンロッド、ピストンピンの設計も見直された。
車名の「765」は直列3気筒エンジンの排気量に由来。2023年モデルでは圧縮比が12.65:1から13.25:1に変更され、新たな燃焼室形状に合わせてピストン、コンロッド、ピストンピンの設計も見直された。拡大
各種走行情報を表示するフルカラーの5インチTFTディスプレイ。背景が黒となるナイトモード付きで、またそのナイトモードでは各部のアクセントカラーを4種類から選択可能となる。
各種走行情報を表示するフルカラーの5インチTFTディスプレイ。背景が黒となるナイトモード付きで、またそのナイトモードでは各部のアクセントカラーを4種類から選択可能となる。拡大
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回転域によって変わるエンジンの表情

189kgの車体とクラス最高の130PSを発生するエンジンの組み合わせによる加速は強烈だ。中速域から全開を試すと、軽くフロントを浮かせながら加速。4000rpmからパワーがグンと盛り上がり、猛然とダッシュしていく。そして9000rpmを超えたあたりから、さらに激しくトルクが盛り上がる。

4気筒エンジンのシャープな吹け上がりと、2気筒のトルク感を併せ持ったこのときのエキサイティングさは感動的ですらある。130PSとなると、さすがにストリートの常用速度域で使い切るのは難しいのだが、このフィーリングの変化が楽しめるから、高回転まで使えなかったとしてもストレスなど感じない。特性が回転によって変化するから街でも峠でも楽しめるのである。

排気音も、このマシンをエキサイティングにしている重要な要素だ。ひとえに“トリプル”といってもいろいろなエンジンがあるが、排気量が大きいとどうしても高回転での回り方が重々しくなり、鼓動感が強くなりすぎてスムーズな感じが薄れてしまう。その点、765 RSは高回転域の伸びが素晴らしくシャープで、1万rpmを超えても刺激的なフィーリングと排気音を堪能できるのである。

ちなみに、ハンドルには常に微振動が出ていて、6000rpmを超えるとそれが強くなっていく。振幅は大きくはないのだが、硬質な振動だから高回転を常用すると手がビリビリとする。ライダーを疲れさせる類のものではないが、若干気になるというレベル。シフターの作動は実にスムーズで、気持ちよく変速することが可能だ。

ドライブトレインではトランスミッションの各ギアおよびファイナルドライブのギア比を変更し、加速性能を強化。サーキット走行にも対応するクイックシフター(アップ/ダウンの両方に対応)を全車標準装備とした。
ドライブトレインではトランスミッションの各ギアおよびファイナルドライブのギア比を変更し、加速性能を強化。サーキット走行にも対応するクイックシフター(アップ/ダウンの両方に対応)を全車標準装備とした。拡大
大幅なエンジンの改良により、「RS」では最高出力が123PS/1万1750rpmから130PS/1万2000rpmに向上。トルク特性も7500rpm付近において増強が図られ、最大トルクは80N・m/9500rpmとなった。
大幅なエンジンの改良により、「RS」では最高出力が123PS/1万1750rpmから130PS/1万2000rpmに向上。トルク特性も7500rpm付近において増強が図られ、最大トルクは80N・m/9500rpmとなった。拡大
ライディングモードは「レイン」「ロード」「スポーツ」「トラック」「ライダー」の5種類(トラックモードは「RS」専用)。「ライダー」はいわゆるカスタマイズモードとなるが、実は他のライディングモードも設定のカスタマイズが可能となっている。
ライディングモードは「レイン」「ロード」「スポーツ」「トラック」「ライダー」の5種類(トラックモードは「RS」専用)。「ライダー」はいわゆるカスタマイズモードとなるが、実は他のライディングモードも設定のカスタマイズが可能となっている。拡大

ブレーキもサスペンションも素晴らしい

美点のひとつだったハンドリングもさらに進化した感じだ。軽快かつ素直で乗りやすいというのはもちろんなのだが、車体が常にライダーの手の内にあるような自由自在感のおかげで、高いスポーツ性を追求したモデルでありながら、ストリートライディングのような低荷重域でも乗りやすい。ストリートトリプルは初期のモデルからそういった傾向はあったが、新型はレベルがひとつ上がっている。これはスムーズな高性能サスペンション、フロントのショーワ製ビッグピストンフォークとリアのオーリンズサスペンションからの恩恵が大きい。

アシはサーキットでの走行まで考えたセッティングになっているのだけれど、初期の動きがいいから低速のコーナリングでもよく動いてくれて、ターンインでのキッカケをつかみやすいのである。このサスのおかげでツーリングでも路面の細かい継ぎ目などはほとんど気にならない。ハードさを感じるのは、大きな段差を乗り越えるときくらいだ。

車体もコンパクト。400ccクラスのスポーツバイクをひとまわり大きくしたくらいの車格だから、ミドルクラスから乗り換えてもまったく違和感がない。スポーツライディング時の運動性を考えてシートは836mmと高めだが、車体がコンバクトだから、テスターの身長(178cm)だと気にならない。さらにオプションのリンクを組み込むと、シートを10mm低くすることができる。おそらくこのあたりが、本来のスポーツ性を損なわずに下げられるリミットなのだろう。

ラジアルマウントされたブレンボのStylemaモノブロックキャリパーとMCSラジアルマスターシリンダーの組み合わせによる制動力は強力無比。コントロール性も非常に高い。市販車でここまで素晴らしいタッチのマシンがあるのかと思うくらいのブレーキシステムである。

倒立フォークのスポーツバイクでありながら、通常の使用ではUターンが苦にならないレベルの切れ角が確保されているのも、ストリートライディングではうれしいところである。

ブレーキはブレンボ製で、「RS」ではフロントにφ310mmのツインディスクとブレンボ製Stylema 4ピストンラジアルモノブロックキャリパーを装備。最新のコーナリングABSや介入度合いを4段階で切り替えできるコーナリングトラクションコントロールなど、走りに関する装備は充実している。
ブレーキはブレンボ製で、「RS」ではフロントにφ310mmのツインディスクとブレンボ製Stylema 4ピストンラジアルモノブロックキャリパーを装備。最新のコーナリングABSや介入度合いを4段階で切り替えできるコーナリングトラクションコントロールなど、走りに関する装備は充実している。拡大
サスペンションは前がショーワ製41mm倒立式ビッグピストンフォーク、後ろがオーリンズSTX40ピギーバックリザーバーモノショックの組み合わせだ。
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バイクの性格が性格だけに、シート高は836mmと高め。それでも車体がコンパクトなので、足つき性はそこまで悪くない。
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タイヤサイズは前が120/70ZR17、後ろが180/55ZR17。ピレリのハイグリップタイヤ「ディアブロ スーパーコルサSP V3」が装着されていた。
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現行の「ストリートトリプル」のカタログモデルは「R」と「RS」の2種類。両者の間では、ライディングモードの種類やフロントブレーキの仕様、エンジンの出力、足まわりのジオメトリーなどが異なっている。
現行の「ストリートトリプル」のカタログモデルは「R」と「RS」の2種類。両者の間では、ライディングモードの種類やフロントブレーキの仕様、エンジンの出力、足まわりのジオメトリーなどが異なっている。拡大
液晶ディスプレイの表示は切り替えが可能で、全4種類の表示レイアウトが用意されている。ただ、どの表示でもエンジン回転計の分かりづらさが気になった。
液晶ディスプレイの表示は切り替えが可能で、全4種類の表示レイアウトが用意されている。ただ、どの表示でもエンジン回転計の分かりづらさが気になった。拡大
もともと定評のあった従来型から、さらに長足の進化を遂げていた「ストリートトリプル765」。排気量を問わず、今日におけるスポーツバイクのなかでは最良のモデルとしてお薦めできる一台だった。
もともと定評のあった従来型から、さらに長足の進化を遂げていた「ストリートトリプル765」。排気量を問わず、今日におけるスポーツバイクのなかでは最良のモデルとしてお薦めできる一台だった。拡大

すべての面で進化を遂げている

ストリートトリプル765 RSをストリートメインで使う場合、気になるのは前傾姿勢がきついこと。もちろん激しいポジションのスーパースポーツに比べれば楽なのだが、パイプハンドルのバイクとしてはかなり前傾姿勢が強いから、ライダーによっては長距離が厳しいかもしれない。

そして独特なタコメーター表示は慣れるまでに時間がかかる。表示の仕方はいくつか切り替えができるのだけれど、5インチの大型ディスプレイなのに数字が小さい。回転が上がるにつれて面積が広がっていく独特の表示方法は、慣れてきたら感覚的に回転数を認識できるようになるのかもしれないが、斬新すぎて、ストリートを少し走った程度ではなかなかなじめなかった。

ストリートトリプルは、今回のモデルでずいぶん完成度を上げたように思う。高いパフォーマンスとストリートでの扱いやすさ、エキサイティングなフィーリングのすべてがアップしている。全排気量帯のスポーツバイクのなかで、最も魅力的なのではないかと思うくらい、個人的に気に入っているバイクである。

(文=後藤 武/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)

トライアンフ・ストリートトリプル765 RS
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トライアンフ・ストリートトリプル765 RS(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×792×1064mm
ホイールベース:1399mm
シート高:836mm
重量:188kg
エンジン:765cc 水冷4ストローク直列3気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:130PS(95.6kW)/1万2000rpm
最大トルク:80N・m(8.2kgf・m)/9500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:149万5000円~152万1000円

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後藤 武

後藤 武

ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。

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