第264回:明らかにぺったんこ系
2023.08.07 カーマニア人間国宝への道カッコいい新型車には胸がときめく
自動車業界はビッグモーターの話題で持ち切りですね。私も一斉査定でビッグモーターさんに来てもらったことがあるのですが、そのとき僅差でカーリンクというお店が勝ち、以来、一斉査定が面倒になって(実際すごくめんどくさい)、買い取りはカーリンクのG君に任せるようになりました。G君もカーリンクの社長さんも、私のファンだと言ってくれたのが大きかった。やっぱりカーマニアはカネじゃない、信頼ですねワッハハハハ!
今回はプジョーの話題です。現在私の足グルマとして活躍しているのは、ちょいワル特急こと「プジョー508 GT BlueHDi」。2022年に299万円で手に入れた超お買い得中古車です。プジョーって話題のビッグモーターでも買えるんだろうかと思って検索してみたら、その時点では全国にたったの5台しか在庫がなかった。もちろん508なんて影も形もナシ。そもそも輸入車はわずかしかない。基本的にカーマニアとの接点は薄い会社だったようです。
とにもかくにも、私はちょいワル特急に大満足している。見るたびにちょいワルなルックスにワクワクするし、乗れば毎度毎度「はぁ~~~~~」と癒やされる。「フェラーリ328GTS」とちょいワル特急と「ダイハツ・タントスローパー」(家族用に買った介護車両)があれば、もう他にクルマはいらない! 一生買わなくてもイイ! というくらい満たされている。
しかしそれでも、カッコいい新型車が出れば胸がときめき、煩悩が頭をもたげる。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
つまり私にはストライク
昨年末は「レクサスIS500」にマジで時めき、「抽選に当たったら絶対買う!」と心に決めたけど、熱しやすく冷めやすいカーマニアなので、ディーラー様からなんの音沙汰もないうちに「もういいや」と思うようになりました。
そんな時、「プジョー408」のメディア向け試乗会の連絡があった。
408は、2022年6月にワールドプレミアされたスタイリッシュな4ドアクロスオーバークーペ。日本では後に、「コンセプトがトヨタの『クラウン クロスオーバー』に似ている」と、カーマニアの間で話題になった。
実物の408は、クラウン クロスオーバーより断然カッコよかった。クラウン クロスオーバーって、クラウンとしては革命だけど、やっぱりクラウンなので、あえておっさん臭くしてあるじゃないですか。ウエストラインが高く、でっぷり貫禄よく仕上げてあるじゃないですか。街で見かけると、そのあたりがおっさんの若作りに見えるんだよね。
でも408はマジでスタイリッシュ! おっさんが乗っても全然おっさんっぽくない。いやおっさんは何をやってもおっさんだけど、408に乗ってれば、イケてるおっさんに見えるに違いない。
408はSUVではあるけれど、全高はたったの1500mmしかなく、SUVとしてはウルトラ低い。ベースは「308」だけど、デザイン的には508のSUV版。つまり私のストライクである。
これまで54台クルマを買ってきたけれど、SUVはまだ1台も買ってない。中高年の刷り込みで、どうしてもぺったんこ系のクルマに引かれてしまう。408は明らかにぺったんこ系。「SUVとしてはぺったんこ」であっても、ぺったんこはぺったんこ。ぺったんこで直線基調のシャープなフォルムは、わが青春の「日産ガゼール」に通じるものすらある。萌(も)える……。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
自慢のディーゼルを積んでくれ
試乗したのは「408 GTハイブリッド ファーストエディション」だ。ホントはお安い「GT」(1.2リッター直3ガソリンターボ)に乗りたかったんだけど、無作為に割り当てられたので仕方ありません。669万円という価格を見た瞬間に萎(な)えます。GTの499万円ならギリギリセーフ。ちょいワル特急よりちょうど200万円高いという点にも縁を感じる。
とにもかくにも408 GTハイブリッド ファーストエディションに試乗して、「値段を見なければとってもステキなクルマだなぁ」と思いました。308ベースのプラットフォームは、508とは世代が違うだけに、剛性がかなり違う。結果、乗り心地も直進安定性も操縦性も全部イイ。しかも静か。楕円(だえん)の小径ステアリングホイールのスカした雰囲気も全体にマッチしまくり。セダン系よりちょっとだけ高い座面は、乗り降りのしやすさや適度な見晴らしの良さが、中高年カーマニアにジャストフィット。まだSUVを買ったことのない保守的なカーマニアのためにつくられたようなSUVじゃないか! つまりオレのためにつくられたクルマだ!
でも、ディーゼルがない。
最近のガソリン価格を見ると、心底「ディーゼルでよかった」と思うのです。ガソリン車に乗ることがムダに思えて仕方ありません(フェラーリや軽を除く)。408が本当にオレのためにつくられたクルマなら、プジョー自慢の1.5リッターディーゼルを積んでくれ! そしたらマジで買い替えるから!
え、本国にも設定がない? そうですか……。じゃ、一生ちょいワル特急に乗るよ! 一生本物のペッタンコで生きていくよ! んで要介護になったらタントスローパーに乗るよ! それで本望だよ! だって中高年カーマニアだから!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな 2025.9.22 清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている?
-
第318回:種の多様性 2025.9.8 清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。