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メルセデス・ベンツCLE220d(FR/9AT)/CLE300 4MATIC(4WD/9AT)/CLE450 4MATIC(4WD/9AT)

カッコよければすべてよし 2023.09.13 試乗記 渡辺 慎太郎 「Cクラス クーペ」と「Eクラス クーペ」の統合によって生まれたのが「メルセデス・ベンツCLE」だ。間を取るなら“CLD”では? の声があるかもしれないが、それはともかく、日本上陸よりもひと足早くスペイン北部の街で仕上がりを試した。

クーペのある暮らし

その昔、北米を中心に“セクレタリーカー”と呼ばれる2ドアクーペがちょっとしたブームになったことがある。比較的安価な設定のこのモデルは、その呼び名のとおり秘書やアシスタント業務に従事する女性に向けたプロダクトだった。「秘書=女性」という時点で、いまのご時世ならいろいろと物議を醸すだろうけれど、当時はまだそういう商品企画が成立していた。

そんなセクレタリーカーを除けば、基本的に2ドアクーペとはいわゆる高級車のカテゴリーに属するモデルが多く、個人的には最もぜいたくなボディー形状だと考えている。ボディーサイズを問わず1人か2人乗りが前提で、後席へのアプローチはお世辞にもいいとは言えない。加えて、カブリオレやコンバーチブルのようにルーフがガバッと開いて、クーペとオープンの“二刀流”を楽しめるわけでもないし、スポーツカーでもないから圧倒的な速さや俊敏な動きも望めない。自分も若いころは「クーペが欲しいならオープンにすればいいのに」と、あえてクーペを選ぶ方の心情がイマイチ理解できなかった。

実は数年前まで、メルセデスの「124シリーズ」の「300CE-24」を所有していたことがある。自分の愛車遍歴においては、初めてのクーペだった。以前からC124のスタイリングに興味があったのと、何よりクーペのある生活とはどんなものなのかを体験してみたかったのが購入理由のひとつでもあった。3年ほど共に暮らして分かったことは、クーペというジャンルはスタイリングありきということだった。動力性能や機能性が気になるなら、スポーツカーやセダンを選べばいい。スタイリングこそがクーペの命であり、同時に動力性能や機能性よりもスタイリングを重視することが正々堂々と許される唯一の車形であるということもあらためて分かった。

2023年7月6日に世界初披露された「メルセデス・ベンツCLE」。今回はスペイン北部のサンセバスチャンを起点に試乗した。
2023年7月6日に世界初披露された「メルセデス・ベンツCLE」。今回はスペイン北部のサンセバスチャンを起点に試乗した。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×1860×1428mm。全長は「Cクラス クーペ」よりも164mm、「Eクラス クーペ」よりも15mm長い。ホイールベースは「Cクラス セダン」と同寸。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×1860×1428mm。全長は「Cクラス クーペ」よりも164mm、「Eクラス クーペ」よりも15mm長い。ホイールベースは「Cクラス セダン」と同寸。拡大
これぞクーペというべきルーフラインと絞り込まれたキャビンの造形が美しい。
これぞクーペというべきルーフラインと絞り込まれたキャビンの造形が美しい。拡大
「パタゴニアレッド」のボディーカラーが鮮やかなこの試乗車は「CLE300 4MATIC」。以下、断りがない場合はすべてこの車両の写真。
「パタゴニアレッド」のボディーカラーが鮮やかなこの試乗車は「CLE300 4MATIC」。以下、断りがない場合はすべてこの車両の写真。拡大
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CとEの間に収まるサイズ

曲がらないスポーツカーや使い勝手の悪いワゴンが総スカンを食らうのと同じように、格好悪いクーペは存在価値がなくなってしまう。でも、カッコいいか悪いかは個人的主観や嗜好(しこう)によるところが大きいから、担当デザイナーにとっては相当なプレッシャーを強いられるやっかいな作業でもあるだろう。

そんなあれやこれや、社内の事情や都合なんかを加味して誕生したのがメルセデス・ベンツの新型2ドアクーペ、CLEである。「社内の事情や都合」とは、これまで「Cクラス」と「Eクラス」でそれぞれ用意していたクーペを、今回は統合したこと。ラグジュアリーブランドとしてクーペはラインナップから外せない。しかしクーペはSUVやセダンほど台数が稼げる商品でもない。そこでいっそ1車種にまとめてしまおうという戦略である。

CLEのボディーサイズは全長4850mm、全幅1860mm、全高1428mm、ホイールベース2865mm。これらすべての数値は従来型のCクラス クーペよりも大きく、従来型のEクラス クーペと比べると全長以外は小さくなっていて、まさにCとEの間に収まっている。プラットフォームはもちろん、C/E/Sが共有するMRA IIである。なお、クーペは欧州で2023年11月に発売、「CLEカブリオレ」は2024年発売で、日本へは現時点でクーペの導入が2024年とされている。

デザイナーは大変だっただろうなと書いたけれど、機能性よりもデザインが優先できる点に関しては腕が振るえたはずである。実際、CLEは後席に大人2人分のスペースを確保しながらも、Bピラーから後方はリアに向かって大胆に絞り込んだデザインとし、全体として艶感のあるスタイリングに仕上げている。

エクステリアには「センシュアルピュリティー」の考えに基づいた最新のメルセデスデザインを採用。フロントマスクは「Cクラス」とほとんど変わらない。
エクステリアには「センシュアルピュリティー」の考えに基づいた最新のメルセデスデザインを採用。フロントマスクは「Cクラス」とほとんど変わらない。拡大
縦型のセンタースクリーンが主張するインテリアもまた、「Cクラス」をはじめとする最新モデルでおなじみの眺め。ストライプ入りのウッドパネルが端正だ。
縦型のセンタースクリーンが主張するインテリアもまた、「Cクラス」をはじめとする最新モデルでおなじみの眺め。ストライプ入りのウッドパネルが端正だ。拡大
センタースクリーンではビデオミーティングアプリの『Webex』などを利用できる。
センタースクリーンではビデオミーティングアプリの『Webex』などを利用できる。拡大
今回は試乗できなかったが、オープントップの「CLEカブリオレ」もラインナップされる。欧州では2024年に発売予定。
今回は試乗できなかったが、オープントップの「CLEカブリオレ」もラインナップされる。欧州では2024年に発売予定。拡大

勝手知ったるインテリアの眺め

現時点でのCLEのパワートレインは計5タイプ。ディーゼルは「CLE220d」(200PS/440N・m)のみ、ガソリンは「CLE200」(204PS/320N・m)と「CLE200 4MATIC」(204PS/320N・m)、「CLE300 4MATIC」(258PS/400N・m)、そして唯一の6気筒となる「CLE450 4MATIC」(381PS/500N・m)である。全車ISG仕様の電動化ユニットで、プラグインハイブリッド車に関しては現在開発中とのことだった。トランスミッションはおなじみの9Gトロニックである。

足まわりのセットは、エアサスの用意がなく可変ダンパーの「ダイナミックボディーコントロール」+後輪操舵の組み合わせが最上級となるため、Cクラスのそれと同等と考えていい。後輪の最大操舵角は2.5度で、60km/hを境に同位相と逆位相を切り替えている。メルセデスは最近積極的に後輪操舵の導入を進めているが、モデルによって操舵角や位相切り替えの速度を微妙に変えている。CLEの場合は、エレガントとスポーティーの中間よりもほんのわずかにスポーティー寄りといった感じである。

試乗車はCLE220d、CLE300 4MATIC、CLE450 4MATICの3タイプで、そのすべてに試乗したけれど、日本仕様がどれになるのかは未定だそうで、今回は用意されていなかったCLE200やCLE200 4MATICの可能性もある。

ドライバーズシートからの眺めはほぼほぼCクラスである。よって新鮮さはなくもはや見慣れた景色である。後席にも座ってみた。足は組めないが、フロントシートに膝が触れないくらいのスペース(身長173cmの筆者の場合)は確保されている。Bピラーが閉塞(へいそく)感を助長して残念ではある。どうしてC124や従来型のEクラス クーペのようにBピラーを排除できなかったのか、エンジニアに聞いてみた。

「CLE300 4MATIC」のパワーユニットは最高出力258PSの2リッター4気筒ガソリンターボエンジン。これも含めて全モデルがマイルドハイブリッド化されている。
「CLE300 4MATIC」のパワーユニットは最高出力258PSの2リッター4気筒ガソリンターボエンジン。これも含めて全モデルがマイルドハイブリッド化されている。拡大
膝まわりのサイドサポートをなくして乗り降りしやすいようにしているのがメルセデスらしい配慮。スポーツカーのようにタイトになっていないのがありがたい。
膝まわりのサイドサポートをなくして乗り降りしやすいようにしているのがメルセデスらしい配慮。スポーツカーのようにタイトになっていないのがありがたい。拡大
「Cクラス」と同寸のホイールベースが奏功し、後席も大人がなんとか座れる空間に仕上がっている。
「Cクラス」と同寸のホイールベースが奏功し、後席も大人がなんとか座れる空間に仕上がっている。拡大
後席の背もたれは45:10:45分割くらいで前に倒せる。これは「CLE220d」の写真。
後席の背もたれは45:10:45分割くらいで前に倒せる。これは「CLE220d」の写真。拡大

教科書どおりの乗り味

「Bピラーをなくした状態で十分なボディー剛性の確保と側突の安全基準をクリアしようとすると、クルマがかなり重くなってしまいます。クーペはBピラーがないほうがエレガントでふさわしいとは思いますが、やむを得ない決断でした」とのことだった。

パワートレインや駆動形式によってわずかな差はあるものの、総じてCLEの乗り味はEクラスよりはずっとCクラス寄りである。それは前述のとおり、シャシーがCクラスと同型だからだろう。どうせ数が出ないのであれば、いっそエアサスや「MBUXスーパースクリーン」なんかも導入して思い切りEクラスに寄せて、もっと高額商品にしてもよいのでは、と思ったりもするけれど、C/Eクラス クーペは以前から、カジュアルな雰囲気(と価格)も魅力のひとつだったので、そちらに重きを置いたそうである。

ハンドリングは適度なレスポンスと正確さを併せ持つもので、クルマが妙な動きを見せることはない。後輪駆動のCLE220dには軽快感が、6気筒で四輪駆動のCLE450 4MATICにはしっとりとした高級感が漂うというのは、教科書どおりの乗り味とも言える。いっぽうでCLE300 4MATICは無難なバランスとも言えるし際立った特徴が希薄とも言える。誤解のないように付け加えておくけれど、現行Cクラスがそうであるように、全体的な動的/静的質感は高く、眉間にしわが寄るような部分はまったくなかった。

なので、このクルマに関しては、ご自身の琴線に触れるか否かを最重要視して、選んでいただいていいと思います。

(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

後輪操舵の最大舵角は2.5度。「EQS」などのように大きくは切れないが、適度にスポーティーなセッティングだ。
後輪操舵の最大舵角は2.5度。「EQS」などのように大きくは切れないが、適度にスポーティーなセッティングだ。拡大
トランクルームの容量は「Cクラス クーペ」よりも60リッター大きい420リッター。
トランクルームの容量は「Cクラス クーペ」よりも60リッター大きい420リッター。拡大
後席の背もたれを倒した様子をトランク側から見てみる。
後席の背もたれを倒した様子をトランク側から見てみる。拡大
全体的な動的/静的質感が高く、安心してドライブできた「メルセデス・ベンツCLE」。スタイリングが好みの人は飛びついても大丈夫です。
全体的な動的/静的質感が高く、安心してドライブできた「メルセデス・ベンツCLE」。スタイリングが好みの人は飛びついても大丈夫です。拡大
メルセデス・ベンツCLE220d
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テスト車のデータ

メルセデス・ベンツCLE220d

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×1860×1428mm
ホイールベース:2865mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:200PS(147kW)/3600rpm
エンジン最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)/1800-2800rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/40R19/(後)275/35R19(ピレリPゼロ)
燃費:5.2-4.7リッター/100km(WLTPモード。約19.2-21.3km/リッター)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

メルセデス・ベンツCLE300 4MATIC
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メルセデス・ベンツCLE300 4MATIC

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×1860×1428mm
ホイールベース:2865mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:258PS(190kW)/5800rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-3200rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/35R20/(後)275/30R20(コンチネンタル・エココンタクト6Q)
燃費:7.6-7.0リッター/100km(WLTPモード。約13.2-14.3km/リッター)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

メルセデス・ベンツCLE450 4MATIC
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メルセデス・ベンツCLE450 4MATIC

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×1860×1428mm
ホイールベース:2865mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:381PS(280kW)/5800rpm
エンジン最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1800-5000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/35R20/(後)275/30R20(グッドイヤー・イーグルF1 アシメトリック5)
燃費:8.6-7.8リッター/100km(WLTPモード。約11.6-12.8km/リッター)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

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