兄弟車でも意外に違う? 「トヨタGR86」と「スバルBRZ」のマイナーチェンジの中身を精査する
2023.10.11 デイリーコラム今が最後のチャンス
意外に思う人もいるかもしれないが、日本ではスポーツカーの人気が上昇中だ。
軽自動車とコンパクトカーとミニバン、そしてSUVがもてはやされるこの時代になに寝言を言っているんだ? と感じる読者諸兄がいても無理はないが、理由を簡潔に言うと「電気自動車(EV)をはじめとする電動化車両へのアンチテーゼ」にほかならない。
えっ、ますます分からない?
地球温暖化対策を名目とし、自動車はとにかく二酸化炭素排出量を抑えないといけない。そのためEVはもちろん、エンジン車両も燃費向上のためモーターを組み合わせてハイブリッド化することが避けられないというわけだ。自動車メーカーがパワーユニットすら消費者ファーストで用意できないなんて、なんとも世知辛い世の中である。
でも、筆者(ここ3年間で3台の新車を買ってすべて非電動車ですがなにか?)をはじめとする一部の変態的マニア(!?)はモーター装着に断固反対し、純粋なエンジン車をこよなく愛する。そんな人たちが「モーターを搭載しない純粋なエンジン車のスポーツカーを買えるのは今が最後のチャンス!」とばかりに、スポーツカーを選んでいるというわけである。
そういわれてみれば、街を見れば意外に現行世代の「マツダ・ロードスター」が多く走っていることに気がつくのではないだろうか。実は、ロードスターはそんなガソリン車絶滅危惧が叫ばれ始めた2020年以降に販売台数が増えたのだ。
味つけの違いがより明確に
ロードスター同様に手ごろなスポーツカーとして人気を誇るのが「トヨタGR86」と「スバルBRZ」。この2台は基本メカニズムを共用する兄弟車で、先日、同じタイミングでマイナーチェンジした。そんな2台の差が「マイナーチェンジで広がったのかどうか?」というのが当コラムのテーマである。
実はこの2台は、兄弟車ながらフロントバンパーなどの見た目だけでなく足まわりのセッティングが大きく違う。バネやダンパー、そしてスタビライザーといったいわゆる“足まわり”のパーツのみならず、ナックル自体やリアスタビライザーの取り付け方法が異なるなど、「普通、そんなところを差別化するか?」という部分までつくり分けている。GR86がクイックでソリッド感を強調するのに対し、BRZはしなやかさと安定感が印象的で、それはサーキットだけでなく筆者のような凡人ドライバーが峠道を走るだけでも違いが分かるほどなのだから恐れ入る。
そして結論を言えば、その差は今回のマイナーチェンジでさらに広がった。
例えば新たに設定されたショックアブソーバーは、GR86はZFの「SACHS(ザックス)」(「SZ」グレード以上にオプション設定)だが、BRZでは日立アステモの「SFRD」という独自構造のダンパーを「STI Sport」グレードのフロントに採用。両車とも、最上級の走りを求めた仕様ではこれまで以上にダンパーの仕立てが異なるということだ。
もちろん「MT車への『アイサイト』搭載」「Brembo製ブレーキの設定」「スタビリティーコントロールの制御を最適化」など共通の変更もあるが、やはり両車の“差”として考えると広がっていると判断するのが正解だろう。
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同じ素材でつくった別の料理
もうひとつ注目したいのは、今回の改良に合わせて新たに追加された仕様だ。
GR86に期間・台数限定で用意された「RZ“40th Anniversary Limited”」は先輩である「AE86」の生誕40周年を記念する、ある意味“振り返り”のモデル。いっぽうBRZのSTI Sportはスバルが「レヴォーグ」や「フォレスター」などにも設定している、ブランドイメージを高めるための“未来を見据えたモデル”といえる。そんなキャラクターもまた、両車で違う方向を向いていると考えるのが正解だろう。
そんな両車の展開の違いがどうして起こっているかといえば、それは「マーケティングがまったく違うから」にほかならない。どんな顧客に、どんなイメージで売るのか? 同じ車体と基本メカニズムでつくられた2台だけど、トヨタとスバルが考えていることや狙っている層は全然違う。ただそれだけのこと。
実際に買うときも、この2台を比較して選ぶことにはあまり意味がなくて、たまたま同じ素材でつくったまったく別の料理と捉えるのが正しいといっていいのではないだろうか。
さて、初めての愛車としてS13型「シルビア」を買って走りを覚え、その後S15型シルビアを新車で買った、生粋の後輪駆動クーペ好きの筆者ならどちらを選ぶか。
結構真剣に悩むが、日常使いからワインディングロードまで気持ちよく走る程度なら澄んだ曲がり方をするBRZが好みだ。ただし、サーキットを走るのであればターンインがよりシャープでグイグイ曲がっていくGR86が欲しくなる。
おや……。なんだかんだいって自身で買うとなるとやっぱり比べたくなってしまうじゃないか。取りあえず「比較して選ぶことにはあまり意味がない」という前言は撤回しておこう。
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、スバル/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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