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第271回:パリピアバルト500e

2023.11.13 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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「フィアット500e」よりもっと上白石萌歌

担当サクライ君からメールが届いた。

「来週『アバルト500e』にお乗りになりますか」
「乗る乗る~!」

私は「フィアット500e」が大好きだ。なにが好きかって、あの上品でかわいい形が大好きだ。EVはいまのところ趣味ではないが、恋は障害が大きいほど燃える。あの上品でかわいいスタイルのためなら死ねる! いや充電できる! その500eのグレードアップ版であるアバルト500eが気にならないはずはない。

くしくもそのメールの前日、私はテレビを見ていて、大いなる衝撃を受けていた。500eのように上品でかわいらしい女性を発見したのである。

「この女性はいったい誰!?」

私はNHKしか見ないため、世の中をあまり知らない。特に芸能界についてはまったく知らない。その女性も初めて見たが、上品でかわいらしい丸顔で、大変好みのタイプだった。

スマホで検索したところ、その女性は「上白石萌歌」という方だった。あれが上白石さんか! 名字だけはうっすら存じ上げていたが、あんなに上品でかわいらしい丸顔の方だったとは知らなかった。

うわさによれば歌も大変うまいという。ついでにお姉さまもそっくりなお顔で同じ職業に就かれていると知り、衝撃は二乗になった。

こうして私は、紅白でPerfumeを見て以来15年ぶりくらいに女性アイドルにときめいた。

アバルト500eは、500eよりもっと上白石萌歌なのかもしれない。私は指折り数えてその夜を待った。

今回は、2023年10月に国内導入が発表されたアバルト初の電気自動車「アバルト500e」で、夜の首都高に出撃した。同車は「これまでのブランドDNAを継承しつつ次世代のアバルトを象徴する」とうたわれるモデルだ。車両本体価格は615万円。
今回は、2023年10月に国内導入が発表されたアバルト初の電気自動車「アバルト500e」で、夜の首都高に出撃した。同車は「これまでのブランドDNAを継承しつつ次世代のアバルトを象徴する」とうたわれるモデルだ。車両本体価格は615万円。拡大
「アバルト500e」のボディーサイズは全長×全幅×全高=3675×1685×1520mmで、ホイールベースは2320mm。従来型と同じ愛らしいスタイリングを踏襲しながら、随所にブランドアイデンティティーであるサソリの意匠を取り入れている。
「アバルト500e」のボディーサイズは全長×全幅×全高=3675×1685×1520mmで、ホイールベースは2320mm。従来型と同じ愛らしいスタイリングを踏襲しながら、随所にブランドアイデンティティーであるサソリの意匠を取り入れている。拡大
ボディーサイドに稲妻の放電によって描かれたような、新デザインの「スコーピオンバッジ」が備わっている。
ボディーサイドに稲妻の放電によって描かれたような、新デザインの「スコーピオンバッジ」が備わっている。拡大
フロントアクスルに搭載される駆動用モーターは155PSの最高出力と235N・mの最大トルクを発生。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は42kWhで、WLTCモードによる一充電走行距離は303kmと発表されている。
フロントアクスルに搭載される駆動用モーターは155PSの最高出力と235N・mの最大トルクを発生。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は42kWhで、WLTCモードによる一充電走行距離は303kmと発表されている。拡大
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アバルトは歌を歌うか

「お待たせしました」

サクライ君は、音もなくやってきた。

アバルト500eは、見た目はノーマルの500eとほぼ同じだが、上白石萌歌さん同様、歌がうまいと聞いている。ノーマルの500eは歌を歌わないので、そこがポイントになりそうだ。

まずは助手席で歌を拝聴しようと思ったが、サクライ君から意外な報告があった。

サクライ:実は「レコードモンツァ」のエキゾーストノートを忠実に再現したという触れ込みのサウンドジェネレーター、スイッチが見つけられないんです。
オレ:そうなの!? ひょっとして付いてないのかな。
サクライ:かもしれません。
オレ:イタ車だから、付け忘れたってこともあるよね。昔、「アルファ156」の広報車に、間違ってディーゼルのタコメーターが付いてたことあったし。
サクライ:かもですね。

助手席に乗って発進だ。さすがアバルト、乗り心地が硬い。ガソリン車の「アバルト595エッセエッセ」ほどではないが、相当に足まわりが締め上げられている。癒やし系の萌歌さんのイメージからは遠い。

首都高代々木PAで運転を交代しても、印象は同じだった。加速は500eより鋭いが、足まわりの固さが60代にはこたえる。相変わらず歌も歌わない。

オレ:う~ん、これならノーマルの500eのほうが好きだなぁ。
サクライ:さいですか。
オレ:オレさ、この間上白石萌歌って人を発見したんだよ。すごく上品でかわいいね! あの人って500eに似てない?
サクライ:タイプ的には近いかもしれません。
オレ:お姉さんも歌手なんだってね! ビックリしたよ!
サクライ:500e姉妹ですね。

首都高4号線上りの代々木PAにてしばし休憩。丸みを帯びた特徴的なリアには「ABARTH」のロゴとサソリをモチーフとしたエンブレムが備わる。今回試乗した車両の外板色は、一見イエローに見える5万5000円の有償色「アシッドグリーン」。これを含め「アバルト500e」では全4色からボディーカラーを選択できる。
首都高4号線上りの代々木PAにてしばし休憩。丸みを帯びた特徴的なリアには「ABARTH」のロゴとサソリをモチーフとしたエンブレムが備わる。今回試乗した車両の外板色は、一見イエローに見える5万5000円の有償色「アシッドグリーン」。これを含め「アバルト500e」では全4色からボディーカラーを選択できる。拡大
「レコードモンツァ」のエキゾーストノートを忠実に再現したという触れ込みのサウンドジェネレーターは作動スイッチが見つけられず、ほぼ無音のまま首都高を走行。乗り心地は硬めだが、地を這(は)うように走る感覚はなかなか楽しい。
「レコードモンツァ」のエキゾーストノートを忠実に再現したという触れ込みのサウンドジェネレーターは作動スイッチが見つけられず、ほぼ無音のまま首都高を走行。乗り心地は硬めだが、地を這(は)うように走る感覚はなかなか楽しい。拡大
上品でかわいいボディーの形や、まぶたが半分閉まったようなヘッドランプデザインは「フィアット500e」譲り。フロントグリルにあたる部分には、これまでのエンブレムに代えてダークチタングレーの「ABARTH」ロゴが大きく入る。
上品でかわいいボディーの形や、まぶたが半分閉まったようなヘッドランプデザインは「フィアット500e」譲り。フロントグリルにあたる部分には、これまでのエンブレムに代えてダークチタングレーの「ABARTH」ロゴが大きく入る。拡大
インストゥルメントパネルやステアリングホイール、ヘッドレスト一体型スポーツシートなどにアルカンターラを使用。高級感も演出されている。ステアリングホイールにはブルーのセンターマークが入る。
インストゥルメントパネルやステアリングホイール、ヘッドレスト一体型スポーツシートなどにアルカンターラを使用。高級感も演出されている。ステアリングホイールにはブルーのセンターマークが入る。拡大

車外に放たれるレコードモンツァ

それにしても、上白石萌歌さんが芸能界入りしたのは10歳の時だという。私のところに彼女の情報が届くまで、13年かかったことになる。「ルネッサ~ンス」というギャグが私のところに届くのにも10年くらいかかったので順当か。

というような感じで、アバルト500eの試乗は、上白石姉妹の話題を除けば淡泊に終了した。ハイライトは、目の前にいた「マークX」が実は覆面パトで、それを左側から追い越した「マセラティ・レヴァンテ」が赤色灯を回され、捕まりそうになったことくらいだ。ドラマチック首都高。

翌日。再びサクライ君からメールが届いた。

「音の出し方、わかりました! これから伺いますから、ちょっとお聞きになりませんか?」
「聞く聞く~!」

アバルト500eのサウンドジェネレーター。それは、驚くべきことに車内ではなく、車外の車体後方にスピーカーが設置されており、外に向かって「バオン! バオン!」とアバルトのダミ声を発した。

オレ:えええええ~~~~~っ! 外に向かって電子音を出すクルマなんて初めて~!
サクライ:でしょう!?
オレ:でもこれだったら、「アバルト695トリブート131」のほうがよかったなぁ。ギア付いてたし。
サクライ:そうですか。同じ音を出すように頑張ったみたいですけど。
オレ:確かにソックリだけどさ。
サクライ:ところで上白石萌歌さんですが、今、『パリピ孔明』というドラマに出演してますよ。すっごく面白いから見てください。

私は『パリピ孔明』を見た。テレビドラマを見たのは、大河ドラマを除けば20年ぶりくらいだったが、50年くらい前から三国志ファンなのでとても面白かった。萌歌さんもかわいかった。これもアバルト500eのおかげだ。ありがたくて涙が出る。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

いつもの辰巳PAでの記念撮影シーンを、さらに撮影される。毎回こんな感じで多くのカーマニアに交じりながら、夜の首都高に出撃している。
いつもの辰巳PAでの記念撮影シーンを、さらに撮影される。毎回こんな感じで多くのカーマニアに交じりながら、夜の首都高に出撃している。拡大
辰巳PAからの帰路、首都高9号線の上りで左車線から「アバルト500e」をぶち抜いていった「マセラティ・レヴァンテ」。このあとレヴァンテに、「マークX」の覆面パトが襲いかかる。
辰巳PAからの帰路、首都高9号線の上りで左車線から「アバルト500e」をぶち抜いていった「マセラティ・レヴァンテ」。このあとレヴァンテに、「マークX」の覆面パトが襲いかかる。拡大
赤色灯を回しながらも「マセラティ・レヴァンテ」を捕まえ損ねた「マークX」の覆面パトは、しばらくして箱崎のロータリーへと消えて行った。その一部始終を目撃し、「アバルト500e」の車内は大盛り上がりだった。
赤色灯を回しながらも「マセラティ・レヴァンテ」を捕まえ損ねた「マークX」の覆面パトは、しばらくして箱崎のロータリーへと消えて行った。その一部始終を目撃し、「アバルト500e」の車内は大盛り上がりだった。拡大
「レコードモンツァ」のエキゾーストノートを忠実に再現したというサウンドジェネレーターは、停車中でなければONにできない。走行中に設定画面を開いても、項目自体が表示されない。まさに初見殺しである。
「レコードモンツァ」のエキゾーストノートを忠実に再現したというサウンドジェネレーターは、停車中でなければONにできない。走行中に設定画面を開いても、項目自体が表示されない。まさに初見殺しである。拡大
愛車“黒まむしスッポン丸”こと1989年モデルの「フェラーリ328GTS」(左)と、「アバルト500e」(右)の2ショットをわが家のガレージ前にて撮影。この翌日、上白石萌歌さんが出演するテレビドラマ『パリピ孔明』を見た。
愛車“黒まむしスッポン丸”こと1989年モデルの「フェラーリ328GTS」(左)と、「アバルト500e」(右)の2ショットをわが家のガレージ前にて撮影。この翌日、上白石萌歌さんが出演するテレビドラマ『パリピ孔明』を見た。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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