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フェラーリSF90 XXストラダーレ(4WD/8AT)【海外試乗記】

神々の頂 2023.11.27 アウトビルトジャパン AUTO BILD 編集部 「フェラーリSF90 XXストラダーレ」は、マラネロが誇るハイブリッドハイパーカー。システム最高出力1030PSを誇るパフォーマンスや「XX」を名乗るスペチアーレとしての存在価値を知るために、フェラーリのフィオラーノテストコースを訪ねた。

※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
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システム最高出力は1000PS超え

フェラーリにおいてXXは、最もエクストリームなパフォーマンスを有する特別な存在を意味している。「599XX」や「FXX」を思い浮かべてほしい。これらに共通するのは、公道走行が認められていないということだ。しかし、このSF90 XXストラダーレは公道走行が可能なハイパーモデルなのだ。

われわれはフィオラーノにあるフェラーリのテストコースで、1030PSスーパーカーを運転することが許された。

その前に、XXストラダーレのコンセプトを見てみよう。XXストラダーレは、レーストラック専用とされたXXプログラムから得た経験を生かし“セルフリバースエンジニアリング”が行われている。ドライバーの後方に極めて低く設置された4リッターV8エンジンはベースとなった「SF90ストラダーレ」よりも17PSアップの最高出力797PSを発生し、3基のモーターは合計で13PS強化され同233PSを発生する。これらのパワーソースにより、システム最高出力は1030PSになるというわけだ。0-100km/h加速は2.3秒、0-200km/h加速はたったの6.5秒(!)だ。

4リッターV8エンジンには新しいピストンとさらに精巧につくられたエキゾーストシステムが採用されている。燃焼室も最適化され、エンジン全体で3.5kg軽量化された。再構築された排気システムは、まったく新しいサウンドを生み出している。ステアリングホイールにある「eマネッティーノセレクター」で最強のドライビングモード「サーキット」を選択すれば、さらにブーストアップしているかのような錯覚に陥る。

ちなみにフェラーリは、SF90 XXストラダーレに「クオリファイ(予選)」モードで作動するF1マシン譲りの“プッシュ トゥ パス ボタン”も採用している。プッシュ トゥ パス ボタンを押すと一回最大2秒間有効の追加ブーストアップ機能が作動する。これはエネルギーストレージが許す限り何度でも繰り返し使用できる。正確な出力は走行状況や作動時点で利用可能なエネルギー残量によって異なるため、定量的に数値化することはできないという。ここフィオラーノを例に出せば、このエキストラブーストによって一周あたり0.25秒削れるはずだ。

2023年6月29日に発表されたフェラーリのハイパーモデル「SF90 XXストラダーレ」。市販のシリーズモデル「SF90ストラダーレ」「SF90スパイダー」をベースに、前者が799台、後者が599台の限定で生産される。フェラーリのなかでも“スペチアーレ”と呼ばれる特別な存在である。
2023年6月29日に発表されたフェラーリのハイパーモデル「SF90 XXストラダーレ」。市販のシリーズモデル「SF90ストラダーレ」「SF90スパイダー」をベースに、前者が799台、後者が599台の限定で生産される。フェラーリのなかでも“スペチアーレ”と呼ばれる特別な存在である。拡大
リアミドに搭載される4リッターV8エンジンはベースとなった「SF90ストラダーレ」よりも17PSアップの最高出力797PSを発生。前後3基のモーターは合計で13PS強化され、同233PSを発生する。システム最高出力は実に1030PSを誇る。
リアミドに搭載される4リッターV8エンジンはベースとなった「SF90ストラダーレ」よりも17PSアップの最高出力797PSを発生。前後3基のモーターは合計で13PS強化され、同233PSを発生する。システム最高出力は実に1030PSを誇る。拡大
インテリアの基本デザインは、ベースとなった「SF90ストラダーレ」に準じているが、軽量化の推進やよりスポーティーなバケットシートの採用などでサーキット走行に対応している。3本のルーバーをモチーフとしたドア内張りの意匠は「SF90 XX」の専用となる。
インテリアの基本デザインは、ベースとなった「SF90ストラダーレ」に準じているが、軽量化の推進やよりスポーティーなバケットシートの採用などでサーキット走行に対応している。3本のルーバーをモチーフとしたドア内張りの意匠は「SF90 XX」の専用となる。拡大
フェラーリのスペチアーレモデル「F50」以来となるカーボン製の固定式ウイングを採用。空気抵抗が必要なときにリアウイング下部に設置されたパネルを可動させる、フェラーリが特許を持つ「シャットオフガーニー」も備わっている。
フェラーリのスペチアーレモデル「F50」以来となるカーボン製の固定式ウイングを採用。空気抵抗が必要なときにリアウイング下部に設置されたパネルを可動させる、フェラーリが特許を持つ「シャットオフガーニー」も備わっている。拡大
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エアロダイナミクスが最優先事項

しかし、SF90 XXストラダーレにおける開発の主眼はエアロダイナミクス、特にリアセクションに置かれている。フェラーリのデザイン部門を率いるフラビオ・マンゾーニ氏は「フェラーリ史上最も効率の高い空力パフォーマンスが備わっている」と説明する。車体後方に目をやると、ツインリアコンビライトがライトストリップに変更され、その下にはSF90ストラダーレよりも大きく立体的なディフューザーセクションが広がっている。さらにディフューザーの横には2本のフィンが並び、サイドラインが伸ばされている。

反対にフロントにはほとんど手が加えられていない。コントラストカラーに塗られたF1由来とされるSダクトの追加が目立つ程度だが、このSダクトは2つの大きな機能を有している。ひとつはフロントラジエーター用のエアダクトとして機能し、もうひとつは走行中にフロント中央のエアインテークから流入したエアが2つのダクトへと導かれ、「F8トリブート」と同じくフロントアクスルに数kgのダウンフォースをもたらす空力的な機能だ。

SF90 XXストラダーレは、ボンネットに備わる2つのSダクトとエアフローが最適化されたアンダーボディー、新しいフロントスプリッターによって、ベースとなったSF90よりも20%も大きなダウンフォースを発生する。

いっぽうリアではカーボン製の固定式ウイング(角度などの調整不可)に加えてもうひとつ、特徴的な空力デバイスが備わっている。それは「シャットオフガーニー」と呼ばれる、空気抵抗が必要なときにリアウイング下のパネルを可動させる機構だ。これによりSF90 XXストラダーレは250km/hで530kgのダウンフォースを発生させるが、そのうちの315kgはリアセクションで生み出される。

ブレーキにはフロント398mm、リア390mmの径のカーボンセラミックディスクを採用。「296GTB」に採用された新しい「ABS Evo」も統合され、より高度なセンサー技術によって制動距離をさらに短縮する。フェラーリの発表によれば100km/hから0km/hまでは29.2mで、その2倍の速度からは108.1mで完全停止するという。これは実にセンセーショナルな数字だが、サーキットではかなり現実的な数値のようだ。実際に、SF90 XXストラダーレのブレーキがとほうもなく強力で、同時に安定していることには驚かされた。

「XX」の名称が与えられているものの、サーキット専用車であった従来のXXモデルとは異なり、「SF90 XXストラダーレ」は公道走行が可能。フェラーリのデザイン部門を率いるフラビオ・マンゾーニ氏は同モデルのエクステリアデザインについて、「フェラーリのロードモデル史上最も効率の高い空力パフォーマンスが備わっている」と説明する。
「XX」の名称が与えられているものの、サーキット専用車であった従来のXXモデルとは異なり、「SF90 XXストラダーレ」は公道走行が可能。フェラーリのデザイン部門を率いるフラビオ・マンゾーニ氏は同モデルのエクステリアデザインについて、「フェラーリのロードモデル史上最も効率の高い空力パフォーマンスが備わっている」と説明する。拡大
フロントのボンネット上部に追加されたF1由来のSダクト。フロントラジエーターの冷却用エアダクトとして機能するほか、走行中にフロント中央のインテークから流入したエアが2つのダクトへと導かれ、ダウンフォースを向上させる機能が備わっている。
フロントのボンネット上部に追加されたF1由来のSダクト。フロントラジエーターの冷却用エアダクトとして機能するほか、走行中にフロント中央のインテークから流入したエアが2つのダクトへと導かれ、ダウンフォースを向上させる機能が備わっている。拡大
強化されたシャシーによってロールレートが10%減少。カーブで達成可能な遠心力は、SF90ストラダーレより9%高いという。まるでジェットコースターに乗っているかのようなコーナリングが味わえる。
強化されたシャシーによってロールレートが10%減少。カーブで達成可能な遠心力は、SF90ストラダーレより9%高いという。まるでジェットコースターに乗っているかのようなコーナリングが味わえる。拡大
「SF90 XXストラダーレ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×2014×1225mm、ホイールベースは2650mm。ベースとなった「SF90ストラダーレ」よりも全体がわずかに拡大されている。
「SF90 XXストラダーレ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×2014×1225mm、ホイールベースは2650mm。ベースとなった「SF90ストラダーレ」よりも全体がわずかに拡大されている。拡大

めまいがするほどの加速

シャシー面ではすべての剛性が強化され、ロールレートが10%減少した。カーブで達成可能な遠心力は、SF90ストラダーレより9%高いという。まるでジェットコースターに乗っているかのように、一瞬めまいがするほどパワフルだ。

極端にブレーキングを遅らせることができるし、コーナーの奥でブレーキをかけることも可能だ。ベタベタのセミスリックタイヤのおかげでコーナー出口でのトラクションにも問題はない。高速コーナーでもわずかにオーバーステアになるだけでコントローラブルだ。

背の高いドライバーでも、適切なドライビングポジションをとることができるほどコックピットには十分なスペースがあり、終始運転に集中することができる。

この狂気の代償は、クーペモデルの「ストラダーレ」が77万ユーロ(邦貨換算で約1億2350万円)、オープンモデルの「スパイダー」が85万ユーロ(同約1億3600万円)である。

しかし、たとえ価格がいくらであっても、それは大きな問題ではない。トータル1398台が生産されるSF90 XXは、いずれのモデルもすでに完売状態で、選ばれた顧客にのみ販売される。799台のストラダーレは2024年第2四半期から、599台のスパイダーは2024年第4四半期からデリバリーが始まる予定だ。

結論

史上最高のフェラーリか? との問いかけにはこう答えよう。敏しょう性とサーキットでのポテンシャルの点で、SF90 XXストラダーレはマラネロのオリンポス、つまりかつて神々が住んだという山の頂に近い存在であると。そう、現時点でこれを超えるロードモデルのパッケージはちょっと考えられない。

(Text=Alexander Bernt/Photos=Hersteller、Ferrari)

記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)

ブレーキにはフロント398mm、リア390mmの径のカーボンセラミックディスクを採用。ベタベタのセミスリックタイヤのおかげでコーナー出口でのトラクションも問題なく、高速コーナーでもわずかにオーバーステアになるだけでコントローラブルだ。
ブレーキにはフロント398mm、リア390mmの径のカーボンセラミックディスクを採用。ベタベタのセミスリックタイヤのおかげでコーナー出口でのトラクションも問題なく、高速コーナーでもわずかにオーバーステアになるだけでコントローラブルだ。拡大
「SF90 XXストラダーレ」の試乗後、フィオラーノのピットにてフェラーリのテスト兼開発ドライバー、ラファエレ・デ・シモーネ氏(写真右)と独アウトビルトのアレックス・ベルント(写真左)が最初のスティントを分析。
「SF90 XXストラダーレ」の試乗後、フィオラーノのピットにてフェラーリのテスト兼開発ドライバー、ラファエレ・デ・シモーネ氏(写真右)と独アウトビルトのアレックス・ベルント(写真左)が最初のスティントを分析。拡大
驚くことに、背の高い筆者でも適切なドライビングポジションを得られるほど、「SF90 XXストラダーレ」のコックピットには十分なスペースがある。
驚くことに、背の高い筆者でも適切なドライビングポジションを得られるほど、「SF90 XXストラダーレ」のコックピットには十分なスペースがある。拡大
システム最高出力1030PSを誇る「SF90 XXストラダーレ」の0-100km/h加速は2.3秒、0-200km/h加速は6.5秒、最高速度は320km/h。フィオラーノのラップタイムは歴代市販モデルで最速となる1分17秒309を記録している。
システム最高出力1030PSを誇る「SF90 XXストラダーレ」の0-100km/h加速は2.3秒、0-200km/h加速は6.5秒、最高速度は320km/h。フィオラーノのラップタイムは歴代市販モデルで最速となる1分17秒309を記録している。拡大
AUTO BILD 編集部

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