2024年に登場する3列シートSUV「マツダCX-80」への期待と不安

2023.12.28 デイリーコラム 玉川 ニコ
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!
2023年1月31日(現地時間)にマツダの北米事業を統括するマツダノースアメリカンオペレーションズが発表した、新しい3列シートのミッドサイズクロスオーバーSUV「マツダCX-90」。「CX-60」と同じく、エンジン縦置きの新開発プラットフォームを採用している。
2023年1月31日(現地時間)にマツダの北米事業を統括するマツダノースアメリカンオペレーションズが発表した、新しい3列シートのミッドサイズクロスオーバーSUV「マツダCX-90」。「CX-60」と同じく、エンジン縦置きの新開発プラットフォームを採用している。拡大
「CX-90」は、2022年に発表された「CX-60」に続く「走る歓(よろこ)び」と「環境安全性能」を大幅に進化させたというラージ商品群の第2弾。マツダの新たなフラッグシップモデルとして、北米市場で販売されている。3万9595ドル(邦貨換算で約564万円)がスターティングプライスとなる。
「CX-90」は、2022年に発表された「CX-60」に続く「走る歓(よろこ)び」と「環境安全性能」を大幅に進化させたというラージ商品群の第2弾。マツダの新たなフラッグシップモデルとして、北米市場で販売されている。3万9595ドル(邦貨換算で約564万円)がスターティングプライスとなる。拡大
ワイドボディーによる余裕ある空間、天然素材を用いて細部にまでこだわり抜いたたデザインと質感が「CX-90」のインテリアにおける特徴。ダッシュボードまわりの基本デザインは「CX-60」と同じで、ドアパネルに至る連続感のあるデザインが目を引く。3人掛けとなる3列目シートには専用の空調吹き出し口が設定されている。
ワイドボディーによる余裕ある空間、天然素材を用いて細部にまでこだわり抜いたたデザインと質感が「CX-90」のインテリアにおける特徴。ダッシュボードまわりの基本デザインは「CX-60」と同じで、ドアパネルに至る連続感のあるデザインが目を引く。3人掛けとなる3列目シートには専用の空調吹き出し口が設定されている。拡大
2022年4月に発表されたマツダの新しいSUV「CX-60」。内外装の意匠はマツダのデザインテーマ「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」をさらに進化させたもので、自然と調和する日本人の感性を生かしたタフさと緻密さを、その骨格や空間構成から表現しているという。
2022年4月に発表されたマツダの新しいSUV「CX-60」。内外装の意匠はマツダのデザインテーマ「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」をさらに進化させたもので、自然と調和する日本人の感性を生かしたタフさと緻密さを、その骨格や空間構成から表現しているという。拡大

ラージ商品群のフラッグシップSUVが登場

マツダが推進するラージ商品群の第2弾モデルとして2024年、新型3列シートSUV「CX-80」が発売される。その詳細はいまだつまびらかにされていないが、現在ある程度わかっていることをベースにCX-80の姿を予想するとともに、大きな期待と少々の不安をここに表明しておきたい。

現在販売中の「CX-60」と新しいCX-80との根本的な違いは、シートの列数とボディーサイズだ。CX-60が全長4740mm×全幅1890mm×全高1685mmの2列シート車であるのに対し、CX-80は3列のシートを備える最大8人乗りの大柄なSUV。そしてボディーサイズは、米国で2023年4月に発売された3列シートSUV「CX-90」と全長&全高は同じで、全幅のみナローになると予想されている。

CX-80の全幅がCX-60と同一になると仮定し、ボディーサイズを日本での表記にあてはめれば、全長5100mm×全幅1890mm×全高1735mmとなる。CX-60より360mm長く、50mm高いそのシェイプは、ホイールベースも(CX-90と同一であれば)CX-60より250mm長いということもあって、すべての座席における快適性は十分以上なはず。そして前身である「CX-8」でも十分な居住スペースを有していた3列目は、より快適な心持ちで座れる場所になるだろう。

“CX-80のワイドボディー版”といえるCX-90が採用しているパワーユニットは、48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた新開発の3.3リッター直6ガソリンターボエンジンと、2.5リッター直4ガソリンエンジンをベースとするプラグインハイブリッドシステム「e-SKYACTIV PHEV」。このうち3.3リッター直6ガソリンターボは、ラージ商品群のために新開発されたユニットではあるものの、日本仕様のCX-60には未搭載だ。

今後発売されるCX-80に搭載されるパワーユニットは、現在のCX-60に搭載されているうちの2.5リッター直4自然吸気を除く3種類。すなわち3.3リッター直6ディーゼルターボおよびそのマイルドハイブリッド版と、2.5リッター直4ベースのプラグインハイブリッドになるだろう。そして、CX-90に搭載された3.3リッター直6ガソリンターボも加えた計4種類になると予想する。というか、期待する。トランスミッションはCX-60と同じ、そしてCX-90とも同一のトルコンレス8段ATになるだろう。

北米で発売される「CX-90」のボディーサイズは全長が200.8インチ(約5100mm)、全幅が84.9インチ(約2156mm)、全高が68.2インチ(約1732mm)で、ホイールベースが122.8インチ(約3119mm)と発表されている。
北米で発売される「CX-90」のボディーサイズは全長が200.8インチ(約5100mm)、全幅が84.9インチ(約2156mm)、全高が68.2インチ(約1732mm)で、ホイールベースが122.8インチ(約3119mm)と発表されている。拡大
「CX-60」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4740×1890×1685mm、ホイールベース=2870mmで、エンジン縦置きの新開発プラットフォームが採用されている。
「CX-60」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4740×1890×1685mm、ホイールベース=2870mmで、エンジン縦置きの新開発プラットフォームが採用されている。拡大
水平基調のダッシュボードや木目調パネル(最上級の「プレミアムモダン」は本木目)で落ち着いた雰囲気が演出された「CX-60」のインストゥルメントパネル。
水平基調のダッシュボードや木目調パネル(最上級の「プレミアムモダン」は本木目)で落ち着いた雰囲気が演出された「CX-60」のインストゥルメントパネル。拡大
ピュアホワイトのナッパレザーシートと、同色の「ルーセントクロス」がダッシュボードに用いられた「CX-60プレミアムモダン」グレードのインテリア。
ピュアホワイトのナッパレザーシートと、同色の「ルーセントクロス」がダッシュボードに用いられた「CX-60プレミアムモダン」グレードのインテリア。拡大

乗り心地は改善されたのか?

エクステリアデザインは「CX-60をそのままストレッチした感じ」になるもようで、インテリアもCX-80のワイド版であるCX-90の北米仕様とおおむね同様になるはず。つまり、メーターに12.3インチの大画面液晶ディスプレイを採用しつつ、「日本の美意識を表現した」というしゃれた上質な意匠および素材が用いられることはほぼ間違いない。

というかマツダ車の「デザイン」に関しては、いまさら不安などあろうはずもない。どうせ──というのも妙な言い方だが、どうせイイに決まっているのだ。

例えばCX-60のやや骨ばったニュアンスのエクステリアデザインに対して「個人的な好き嫌い」というのはあるだろう。だが好みを度外視して極力客観的に見るならば、それはプレーンでシンプルな線と面により「美」と「力」を見事に表現した、高次元なデザインであると言わざるを得ないのだ。そしてインテリアデザインに関しては、これはもうほぼ満場一致で「おしゃれ! お上手!」とほめそやすしかない。近年のマツダデザインとはそういうものであり、そこに「批判」や「不安」の余地はない。あるのは「好みの問題」だけだ。

だが好みの問題だけで済ますことができないのが「乗り心地」である。CX-60で酷評された、そして筆者自身もとあるメディアでハッキリと酷評した「乗り心地の極端な悪さ」は、CX-80においてはどうなっているのだろうか?

3列シートレイアウトを採用するSUVとして2017年9月に登場した「CX-8」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4900×1840×1730mmで、全幅は「CX-5」と同じだが、全長が355mm長くなっている。
3列シートレイアウトを採用するSUVとして2017年9月に登場した「CX-8」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4900×1840×1730mmで、全幅は「CX-5」と同じだが、全長が355mm長くなっている。拡大
2023年12月で生産を終了するとアナウンスされている「CX-8」のキャビン。2列目がセパレートタイプの6人乗り(写真)のほか、ベンチタイプの7人乗りも設定していた。
2023年12月で生産を終了するとアナウンスされている「CX-8」のキャビン。2列目がセパレートタイプの6人乗り(写真)のほか、ベンチタイプの7人乗りも設定していた。拡大
米国アラバマ州ハンツビルに建設されたトヨタ自動車との合弁工場で生産される「CX-50」。「マツダ3」や「CX-30」と同じエンジン横置きのプラットフォームが使用される2列シートのSUVだ。「CX-5」の少し上で、「CX-90」の下というポジショニングとされる。
米国アラバマ州ハンツビルに建設されたトヨタ自動車との合弁工場で生産される「CX-50」。「マツダ3」や「CX-30」と同じエンジン横置きのプラットフォームが使用される2列シートのSUVだ。「CX-5」の少し上で、「CX-90」の下というポジショニングとされる。拡大
日本に導入される「CX-80」は、北米で販売される「CX-90」(写真)のナローボディー版といわれている。2023年現在北米では、CX-90に加えて「CX-30」「CX-5」「CX-50」の3種類のSUVがラインナップされている。
日本に導入される「CX-80」は、北米で販売される「CX-90」(写真)のナローボディー版といわれている。2023年現在北米では、CX-90に加えて「CX-30」「CX-5」「CX-50」の3種類のSUVがラインナップされている。拡大

ある意味最高の3列シートSUV?

試乗車もまだ存在していないCX-80ゆえに断定的なことは言えないが、北米で行われた「CX-90の試乗会」に参加したジャーナリスト陣のCX-90に対する評価から類推するのであれば、CX-80の乗り心地は「大丈夫!」ということになりそうだ。

同じくラージ商品群向けの新開発プラットフォームを採用しているCX-90の乗り心地は「硬めではあるものの、不快な突き上げのようなものは感じない」というのが、おおむね共通する評価であるもよう。新型プラットフォームのセッティングにおいてマツダの開発陣がやっと“勘どころ”をつかんだのか、それともロングホイールベース化の恩恵か、はたまた米国仕様のCX-90に履かれていたというオールシーズンタイヤが絶妙にマッチした結果なのかはわからない。だがいずれにせよ結論として日本仕様のCX-80は、CX-60において顕著だった「内臓が痛くなるような猛烈な突き上げ感」はないかたちで登場してくるものと思われる。

そして、もしも以上の見解(推測)のとおりで2024年にマツダCX-80が登場してきたならば──つまり十分なサイズがあって、3列目も広くて、内外装デザインは上質で、走りにはマツダならではの気持ちよさが宿っていて、しかしCX-60のように極悪な乗り心地ではないのだとしたら──それはもう「ある意味最高の3列シートSUVなのではないか?」と考えるほかない。

乗り心地の部分において「……とはいえ勝負はゲタを履くまでわからない」という類いの不安は少しだけ残るものの、それは大きなものではない。たぶん大丈夫なのではないかと思う。勘だが。

それゆえ名車CX-8以上にすてきな3列シートSUVが2024年に誕生することを、筆者は大いに期待している。

(文=玉川ニコ/写真=マツダ/編集=櫻井健一)

マツダ の中古車webCG中古車検索