レクサスRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス” プロトタイプ(4WD)/RZ300e“バージョンL”(FWD)
楽しみ方の幅が広がる 2024.01.12 試乗記 レクサス初の電気自動車(BEV)専用モデル「RZ」に2つの新しいバリエーションが登場。片やスポーツ性能を高めたエクストリームな限定車であり、一方は長い一充電走行距離が自慢の、より人々の暮らしに根差した新グレードだ。トヨタのテストコースで乗ってみた。“Fスポーツ パフォーマンス”の第3弾
レクサスのブランディングにおける“Fスポーツ パフォーマンス”の位置づけを端的に表すと「Fスポ以上F未満」ということになるだろうか。“Fスポーツ”よりは運動性能や動力性能を重視した内容でありながら、クローズドコースの走行も性能的に視野に入れる「F」ほどガチではない、とそういうあたりにいる。
現在、日本仕様で販売されている“Fスポーツ パフォーマンス”は2UR-GSEを搭載する「IS500」と、2.4リッターターボと高出力モーターを組み合わせたハイブリッドAWDの「RX500h」の2モデルとなる。
その“Fスポーツ パフォーマンス”モデルの第3弾として白羽の矢が立ったのが、e-TNGAを用いた専用アーキテクチャーBEVのRZだ。とはいえ、パワートレインは基準車の「450e」と同じ。前軸に「bZ4X」や「ソルテラ」のFWDモデルに用いる最高出力204PSのモーターを配し、後軸の109PSのモーターと合わせることで独自のパワートレイン構成としたそれを引き継いでいる。
ボディーサイズが全然違う
では何が「パフォーマンス」かといえば、独自のディメンションとサスセット、それに加えてオリジナルのエフェクトパーツによる空力特性の改善の組み合わせによって運動性能を高めていることにある。ちなみにエフェクトパーツのプロデュースはエアレースパイロットの室屋義秀選手によるもので、航空機に精通する氏の知見をもとにデザインされたカーボン製のリアウイングやタイヤ直後に配される垂直整流板=ターニングベインをはじめ、専用パーツは17点に及んでいる。
お察しの読者の方もいらっしゃるだろうが、このモデルの元ネタは2023年の東京オートサロンに出展された「レクサスRZスポーツコンセプト」だ。が、会場でそれを見た室屋氏と航空エンジニアたちの間で、コンセプトで示されたエフェクトパーツをよりきっちりと効かせる術(すべ)があるのではないかと議論になり、形状の吟味を重ねたという。それが採用されたというわけだが、コンセプトと見比べてみるとルーフスポイラーの翼部の角度や翼端形状など、細かなところに明確な違いが見て取れる。
「RZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”」の寸法はノーマルに比べると全長が55mm、全幅が70mm大きく、全高が10mm低くなっている。トレッドも前が50mm、後ろが40mm広がっており、タイヤサイズも幅広の21インチだ。明らかに異なるディメンションを土台に、走りのチューニングはレーシングドライバーの佐々木雅弘選手が担当した。コイルとダンパーの仕様を違えているが、ダンパーは電子制御可変式などは用いず、標準車と同じいわゆる「決め打ち」で設定している。
極太タイヤの効果は絶大
今年からレクサスの拠点として本格的に稼働を始める豊田市の下山地区。このモデルもきっちり走り込んだというテストコースに用意された取材車は、カムフラージュが施された開発最終段階の車両だった。中身的には完成車と思ってもらって構わないというが、テクスチャーをつぶすような柄があしらわれたラッピング越しにも圧は隠しきれない。走り始めるとオバフェン+二枚羽根のその姿に音がついてこないのは、キツネにつままれたかのようである。
下山テストコースには3カ所ほど連続的に波状入力が加わる路面があり、サスの追従性があからさまに露呈する。ここでの幾度かの試乗経験のなかではRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”が最も大きなタイヤを履いたモデルだったかと思うが、覚悟したバネ下の暴れはおおむね気になるほどではなかった。自重による抑え込みか、はたまたダウンフォースのおかげかリア側の収まりもよく、ペースを上げて跳ね気味になりつつもドライバーには接地感がしっかり伝わっているから安心してアクセルを踏んでいける。フレーム側からヨレていく気配がみじんもないあたりは、さすがBEVといったところだろうか。
コーナリングのキャラクターはベースのRZ450eに比べればさすがにハイゲインで、操舵の手応えもガチッとたくましい。そのぶん、タイヤのねじれや潰れがみちっと手のひらに伝わるような粘度も高まっているように思える。結構なペースで走ってみても、スーパーカー級のサイズとなるリアタイヤは微動だにしないグリップ感を放っており、姿勢を崩すような状況は相当な高みにありそうだ。いくら重心が低いとはいえ、自重の重さや上屋の高さは常に意識すべきだろうが、音的な高揚感もなきまま全能的なハンドリングを味わうという新しさがBEVスポーツの醍醐味(だいごみ)ということになるのだろう。
約600km走れる「RZ300e」
逆に、そういう不穏さとはまったく正対のRZも既にデビューしている。「300e」は言ってみれば450eのリアモーター抜き、出力204PSのFWDというものだ。2モーターの450eとの価格差は60万円……とあらば、それわざわざ選ぶ? という話にもなりそうなものだ。
が、これが乗ってみると上出来なBEVだった。懸念されるトルクステアの類いは徹底的に封じ込められており、操舵感は終始上質。そしてハンドリングも据わりのよさと軽やかさとのバランスがちょうどいい。限界域でもボディーコントロールデバイスの効きは滑らかだが、そんなところに至る必要がない人にとっても、レクサス+BEVの清涼なドライビングフィールを感じ取ってもらえるはずだ。
RZシリーズは今回、バッテリーのサーマルマネジメントを改善することで急速充電効率が高められたので経路充電でも利便性の向上が期待できる。300eは450eと同じ71.4kWhのバッテリーを搭載しながら、WLTCモードで599kmの航続距離をマークしているぶん、機動力も高い。BEVの進化は買う身には残酷だが、待つ身には興味深いものだとつくづく思う。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
レクサスRZ450e“Fスポーツ パフォーマンス” プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4860×1965×1625mm
ホイールベース:2850mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)
フロントモーター最大トルク:266N・m(27.1kgf・m)
リアモーター最高出力:109PS(80kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:313PS(230kW)
タイヤ:(前)255/40R21/(後)295/35R21(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:1180万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
レクサスRZ300e“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1895×1635mm
ホイールベース:2850mm
車重:1990kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:204PS(150kW)
最大トルク:266N・m(27.1kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H/(後)235/60R18 103H(ヨコハマ・アドバンV57)
一充電走行距離:599km(WLTCモード)
交流電力量消費率:120Wh/km(WLTCモード)
価格:820万円/テスト車=820万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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