「スバルWRX S4 STI Sport#」が限定500台で登場 その注目ポイントをスバリストが分析する
2024.01.25 デイリーコラム間違いなく魅力的
スバルのモータースポーツ統括会社であるスバルテクニカインターナショナル(以下STI)は2024年1月12日、「WRX S4 STI Sport R EX」をベースとする特別仕様車「WRX S4 STI Sport#(シャープ)」を発表した。500台限定で販売され、同年1月28日までの期間中、全国のスバル販売店にて抽選エントリーが受け付けられている。
これと同じ2.4リッター水平対向4気筒ターボエンジンを積む「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX」に乗っている筆者から見ても、今回のWRX S4 STI Sport#は魅力的な存在であり、思わず近所の販売店まで出向き、抽選にエントリーしたくなってくる(レヴォーグを買ったばかりだというのに)。
とはいえWRX S4 STI Sport#とは「いちクルマ好き」として見た場合と、「熱心なスバリスト」として見た場合で、その評価が若干変わってくるクルマであるようにも思える。
「いちクルマ好き」として見た場合のWRX S4 STI Sport#は、間違いなく魅力的だ。ベースとなった「WRX S4 STI Sport R EX」がそもそも素晴らしく、そこに後述する「STI製フレキシブルパフォーマンスホイール」などをプラスしつつ、インテリアの色味も、やや微妙に思えたこれまでのボルドー系から精悍(せいかん)なブラック系に変更されているのだから、魅力的でないはずがないのだ。
トランスミッションがCVTである点に不満を覚える人もいるだろう。だがSTI Sport R系が採用している「スバルパフォーマンストランスミッション」に、いわゆるCVTっぽさはほとんどない。「自分はスバル車に乗るならMT以外は嫌なのだ」という意見は“信教の自由”の観点から尊重したいが、「ハッ、CVTかよ(冷笑)」という意見(というか偏見)は、積極的に無視していきたい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
注目はSTI製の専用ホイール
WRX S4 STI Sport#はその内外装がスポーティーかつ上質に仕立てられているだけでなく、「フレキシブルドロータワーバー」や「フレキシブルドロースティフナー」「スバルパフォーマンストランスミッションフルードクーラー」など、さまざまなSTI製パーツも搭載されている。
そのなかでも白眉(はくび)は「STI製フレキシブルパフォーマンスホイール」だろう。
これは、ステアリング操舵時の車両応答性を高めるためホイールの形状を前後で異なるものとし、タイヤの接地面積を最適化したという新機軸のSTIパーツ……とSTIの説明をそのまま紹介しても何のことやら伝わりにくいのだが、要するにホイールのリム形状を前後それぞれ別物にし、フロントは操舵時にタイヤをあえてゆがませることで接地面積を増やす。しかしリアタイヤの外側はゆがみを抑えることで、操舵時のタイヤグリップバランスを最適化させる――というものだ。
それによりステアリングを切り始めた際の車両応答性が高まり、ドライバーの操作に遅れることなく車両が反応する。そしてSTIによれば直進安定性も向上するため、スポーツドライビング時のみならずごく普通の高速ロングドライブをする際なども、運転はかなりラクになるのだという。
車両のデリバリー前とあってWRX S4 STI Sport#には未試乗だが、STIが、そのマニアックな技術を自信満々で発表するときはたいてい本当に素晴らしいため、STI製フレキシブルパフォーマンスホイールについては大いに期待していいはずだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“御本尊”なしでいいのか?
以上が、「いちクルマ好き」としてのスバル WRX S4 STI Sport#に対する評価というか印象である。車両価格は素のWRX S4 STI Sport R EXより121万円高い623万7000円であるため、そこに苦言を呈す方もいらっしゃろう。だが、このクオリティーのスポーツセダンにBMWやアウディなどのエンブレム(とデザイン)が付いていれば、今どきの価格は間違いなく900万~1000万円ぐらいにはなるはず。それを考えれば「むしろ安いかも!」と言えるのが、今回のWRX S4 STI Sport#なのだ。
しかし……「いちクルマ好き」であることを一時的に辞め、「一応スバリスト」としての視点でこのクルマのことを考え始めると、若干の疑問も感じられてくる。いや、ここまで述べてきたとおりクルマそのものには何の疑問も不安もないのだ。まだ乗ってないが、99.9%の確度と自信でもって「WRX S4 STI Sport#はたぶん素晴らしいですよ!」と言い切ることができる。
だがそれと同時に「ところで“御本尊”は、今どこにあるのですか?」と、どうしても尋ねたくなってしまうのだ。
今回のSTI Sport#を含む「STI Sport」各車とは、言うまでもなくSTI製コンプリートカーではなく「STIの技術の一部と“イメージ”を投入した、ややスポーティーで上質なバージョン」である。もちろん、それはそれでいい。誰しもが「S20X」(最後に登場したのは2019年の北米向け「S209」)みたいな超硬派マシンを求めているわけではなく、筆者のような中高年はS20Xだと正直ちょっとツラいので、STI Sportぐらいがちょうどいいのだ。またSTI Sport各モデルには「STI=高性能というブランドイメージの裾野を広げる」という重要な役割もある。だから、繰り返しになるがこれはこれでいいのだ。
だがしかし、いつまでもS20Xなどの“御本尊”なしで、言い方は悪いかもしれないが、そのイメージを利用したクルマだけをつくっていると――いつしか御本尊のありがたみまでもが希釈されてしまうだろう。
「BMW Mスポーツ」各車のバリューは「Mモデルの存在」が、無意識の領域において支えている。それゆえスバルも、本当に「ごくたまに」で構わないので「本物のSTIモデル」を出してほしいと思うし、また出すべきであるとも思うのだ。
(文=玉川ニコ/写真=スバル、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
新型「パジェロ」はこれから生産するのに!? 国産自動車メーカーのタイ離れが進んでいる深刻な理由NEW 2026.9.23 国内にも多くのモデルが導入されている国内ブランドのタイ生産車だが、近い将来は事情が大きく変わっている可能性がある。というのも、各社がタイに注力していたのは少し前の話で、実はその生産規模は少しずつ縮小傾向にあるのだ。その背景を解説する。
-
新型「三菱パジェロ」の走りを支えるテクノロジー 「スーパーセレクト4WD-II」って何だ? 2026.9.21 2026年10月末の国内正式発表が待たれる新型「三菱パジェロ」。その価値の多くを占める「悪路走破性」は、どんな技術に支えられているのか? 「SS4-II」「S-AWC」といったキーテクノロジーについて深堀りしてみよう。
-
「レースの技術を生かしています」は本当か? スバルのモータースポーツ関係者に問う 2026.9.18 スポーツカーの広告などで目にする「レースで鍛えられた~」という文句。あれはいったい、どこまでホントなの? スーパー耐久や全日本ラリーに参戦するスバルの関係者に、市販モデルの開発とモータースポーツの関係について語ってもらった。
-
100万円台で購入できるカーマニア納得の“素うどん的名作ハッチバック”を探す 2026.9.17 豪華な装備や使いきれないパワーはもういらない。多くの経験を積み、もしもクルマの基本である「走る・曲がる・止まる」の純粋な手応えにこだわった「素うどん的なクルマ」が気になるのなら、おススメしたいのはこの3モデルだ。
-
新型「パジェロ」も該当 タイ生産にはどんなメリットがあるのか? 2026.9.16 国内メーカーが取り扱うタイ生産車のラインナップが増えている。話題の新型「三菱パジェロ」も同様だ。東南アジアに限ったとしてもさまざまな国が存在するなかで、多くのメーカーがタイを拠点とするのはなぜなのか。そのメリットを解説する。
-
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【試乗記】
2026.9.22試乗記フェラーリの最新ラグジュアリークーペ「アマルフィ」に試乗。2+2のシートレイアウトを持つ優雅な一台は、その姿にたがわぬ快適な乗り心地を備える一方で、スーパースポーツにも比肩する高いパフォーマンスも秘めたマシンとなっていた。 -
NEW
「長く愛されるクルマ」の開発で大事なことは?
2026.9.22あの多田哲哉のクルマQ&A欲しかったクルマを購入したなら、長く付き合いたいと思うユーザーは多いはず。では、“長く愛されるクルマ”を実現するための条件とは何か? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いてみた。 -
メルセデス・ベンツCLA220シューティングブレーク(FF/8AT)【試乗記】
2026.9.21試乗記メルセデス・ベンツの「CLA」がフルモデルチェンジ。シャシーやパワーユニット、さらにインフォテインメントシステムなど、すべての要素を刷新したとされる、メルセデスの次世代を切り開くモデルだ。1.5リッターハイブリッドの「シューティングブレーク」を試す。 -
新型「三菱パジェロ」の走りを支えるテクノロジー 「スーパーセレクト4WD-II」って何だ?
2026.9.21デイリーコラム2026年10月末の国内正式発表が待たれる新型「三菱パジェロ」。その価値の多くを占める「悪路走破性」は、どんな技術に支えられているのか? 「SS4-II」「S-AWC」といったキーテクノロジーについて深堀りしてみよう。 -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(前編)
2026.9.20思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「アウディQ3」に試乗。先代から大きく変わったのはエクステリアだけではなく、新たなデバイスを採り入れるなどして操作系も一新した意欲作だ。レジェンドドライバーの評価やいかに。 -
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】
2026.9.19試乗記ホンダのCセグメントハッチバック「シビック」に、スポーティーな走りが身上の「e:HEV RS」が登場。ハイブリッドのパワートレインと専用チューニングのサスペンションが織りなす走りは、いつもの道でこそ輝くものに仕上げられていた。










































