BMW i5 M60 xDrive(4WD)
こちらの顔は金剛力士 2024.02.07 試乗記 BMWの基幹セダン「5シリーズ」がフルモデルチェンジ。内外装もメカニズムもすべてが新しいが、最大のトピックは初代のデビューから約50年を経て、初めての電気自動車(BEV)「i5」がラインナップされたことだ。システム出力601PSをうたう「M60 xDrive」を試す。つくり分け自在
新しい「7シリーズ」や「XM」などでは、鬼面人を脅すようなフロントグリルで世間を驚かせたのに、新型5シリーズ セダンは一転して正統派でコンサバなスタイルである。といっても「Mパフォーマンスモデル」たるM60であるからには、抑えきれないすごみを漂わせているものの、ちょっと見ただけでは仁王様のような怪力を秘めているとは分からない。BEVでもガソリンエンジンのラグジュアリーセダンと大差ないスタイルを与えるのが今のBMWの流儀である。それも当然というべきか、ミドルクラスセダン(今や立派なアッパーミドルだが)の代名詞的存在のBMW 5シリーズは、1972年デビューの初代E12型から数えてこのG60型で通算8代目、半世紀を超える長い歴史を持ち、累計生産台数は1000万台以上という定番セダンなのである。
新型5シリーズの特徴は7シリーズ同様、同じボディー/プラットフォームで内燃ガソリンおよびディーゼルから、プラグインハイブリッド車(今後追加予定というが日本導入は未定)、さらにBEVまで多彩なパワートレインをそろえていること。しかもガソリン車とディーゼル車もマイルドハイブリッド化され、全車がいわゆる電動化されたことになる。
今のところ発表されている日本仕様は、ガソリン2リッター4気筒ターボの「523i」(「エクスクルーシブ」が798万円/「Mスポーツ」が868万円)とディーゼル2リッター4気筒ターボ4WDの「523d xDrive Mスポーツ」(918万円)、そして5シリーズでは初となるBEVの「i5 eDrive40」(「エクセレンス」「Mスポーツ」ともに998万円)、およびM60 xDrive(1548万円)というラインナップである。つまり今回試乗したi5 M60 xDriveは新型5シリーズのフラッグシップということになる。
ボディー全長が5m超に
新型のもうひとつの特徴は全体的に大型化されたことだ。i5 M60 xDriveの外寸は5060×1900×1505mm、ホイールベースは2995mmというもので(523iも全高が1515mmになる以外は同寸)、従来型と比べると全長はおよそ10cm長く、全幅と全高もそれぞれ+30mm、+36mm、ホイールベースは20mm長くなっている。ロングホイールベース版のみとなった7シリーズとのバランスを考えたためかもしれないが、ぎりぎり全長5m×全幅1.9m以内に収めたメルセデスの新型「Eクラス」よりも明らかに大きくなった。
まっとうなセダンボディーにしては全高が1500mmあまりと背が高いが、これはやはりBEVとそれ以外でボディーを共用することが理由だろう。フロア下に駆動用バッテリーを搭載するためにBEVはどうしても床が高くなり、自然で快適な後席空間を確保するにはルーフを持ち上げざるを得ない。それでもあまり背が高いようには見えないのは、伸びた全長を生かしたデザインのおかげかもしれない。またホイールベースがほぼ3mともなれば取り回しが気になるところだが、BEVのi5には後輪操舵を含む「インテグレーテッドアクティブステアリング」が標準で装備されており(523iと523dにはパッケージオプションで用意される)、最小回転半径は5.8mと発表されている。
コントロール類もBMW流
インテリアは最新のBMW各車同様、インフォメーションとコントロールディスプレイをつなげた「カーブドディスプレイ」がそびえ立ち、空調スイッチなども今やタッチディスプレイに収められているが、センターコンソールにはiDriveのダイヤルコントローラーとドライブモード切り替えなどの個別のスイッチ(振動フィードバック付きの一体式パネル上のタッチスイッチ)が残されているのがありがたい。
M60は3本スポークで握りも太めのMスポーツステアリングで、タッチセンサー式ではなくクリック感のあるステアリングスイッチが備わる。オジサン世代だけかもしれないが、運転中はやはり手元のスイッチが、しかもクリックが返ってくる物理スイッチが圧倒的に使いやすいと思う。ちなみに左側のみに付くパドルはブースト用(10秒間作動)で、回生ブレーキのレベルを変えるにはディスプレイで操作するか、セレクターでBレンジを選ぶというやり方。このあたりもメルセデスとは異なる流儀である。ただし、タッチ式になったハザードスイッチはちょっと使いづらい。
室内空間にはガソリン車とBEVとの違いは見受けられない。後席はびっくりするほどではないものの当然十分に広く、いわゆるヒール段差(シート座面とフロアの距離)も気にならず自然に座ることができる。M60は荷室の床が523iなどよりもやや高く(フロア下にも物入れあり)、ラゲッジスペース容量はガソリン車より30リッター小さい490リッターとなるが、問題はないはずだ。
踏めば鬼神のごとく
前後に261PS/365N・mと340PS/430N・mを発生するモーターをそれぞれ搭載するM60(システムトータルでは601PSと795N・m!)は、2.4t近い車重をまったくものともせず、どとうの加速を見せる(0-100km/h加速は3.8秒)。とはいえ、ローンチコントロールを試しても、アクスルがバタつくなど乱暴な挙動を一切見せないのがさすがである。おとなしく走る場合には、最新のBEVらしく従順で洗練されている。
普通に走るとターンインでわずかにレスポンスが鈍いかと感じたが、ガツガツ走ると驚くほど鋭い切れ味でどこまでもグイグイと曲がっていく。M60は「アダプティブMサスペンションプロフェッショナル(アクティブスタビライザー付き)」が標準装備(リアのみエアスプリングも備わる)で、しかもアクセラレーター操作に即応する前後の強力なモーターのおかげで、その気になればどう猛な野獣さながらに躍動する。
もっとも、そんな走り方をしているとみるみる残りレンジが減っていく。M60の電池容量は83.9kWhで、一充電走行距離はWLTCモードで455kmという。それでも航続距離が心配な人は、他に選択肢が山ほどありますよ、という懐の余裕が新型5シリーズの真価である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW i5 M60 xDrive
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5060×1900×1505mm
ホイールベース:2995mm
車重:2360kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:261PS(192kW)/8000rpm
フロントモーター最大トルク:365N・m(37.2kgf・m)/0-5000rpm
リアモーター最高出力:340PS(250kW)/8000rpm
リアモーター最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/0-5000rpm
システム最高出力:601PS
システム最大トルク:795N・m
タイヤ:(前)245/40R20 99Y XL/(後)275/35R20 102Y XL(ピレリPゼロ)
一充電走行距離:455km(WLTCモード)
交流電力量消費率:205Wh/km(WLTCモード)
価格:1548万円/テスト車=1600万9000円
オプション装備:ボディーカラー<Mブルックリングレー>(0円)/Mアルカンターラ×ヴェガンザコンビネーションインテリア<ブラック×ブラック>(0円)/セレクトパッケージ(31万5000円)/Mスポーツパッケージプロ(11万円)/Mエアロダイナミックホイール940Mバイカラー<ジェットブラック>(10万4000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1670km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:413.8km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:4.7km/kWh(車載電費計計測値)

高平 高輝
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。















































