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上陸初年度の販売台数は1446台 中国BYDは日本でどこまで成長できるのか?

2024.03.20 デイリーコラム 鈴木 ケンイチ
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「戦略発表会」は感謝の言葉からスタート

「この場を借りまして、日本の皆さまに感謝を申し上げたいと思います」

BYDアジア太平洋地域自動車販売事業部総経理・BYDジャパン代表取締役社長である劉 学亮氏は、3月1日の「BYDオートジャパン2024戦略発表会」の冒頭のあいさつを、日本のディーラー、メディア、サプライヤー、そしてユーザーに対する感謝の言葉から始めた。そして「BYDというブランドの紹介」「2023年の振り返り」「2024年に向けての戦略」を説明したのだ。

それぞれの内容を、もう少し説明しよう。

まず「BYDというブランド」についてだ。BYDはバッテリーメーカーとして中国深センにて生まれたが、現在はバッテリーだけでなく、自動車や都市モビリティー、IT分野まで幅広い事業を展開する。自動車に関しては、電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を年間302万台販売(2023年実績)。自動車ブランドとしてはBYDをはじめYANGWANG、DENZA、FANGCHENGBAOという4つを展開し、電動車において大きな力を持つことが説明された。そして、劉代表は、この豊富なラインナップから、日本に向けて「毎年1車種を投入する」と明言したのだ。

次に「2023年の振り返り」については、BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長が登壇。2024年3月の時点で、日本の販売拠点が51(開業準備室を含む/うち正規ディーラー22)となり、2025年末までに100店舗を目指すことが、あらためて説明された。そして販売実績としては、2023年の新車登録台数は1446台を達成。内訳はSUVの「ATTO 3(アットスリー)」が1198台で、コンパクトカーの「DOLPHIN(ドルフィン)」が248台であるという。ちなみにドルフィンの苦戦は、型式認定の取得が遅れて出荷の時点で滞っているためとしたが、2024年の年央からは解消に向かうという。また、新型車「SEAL(シール)」を年央に発売する予定であり、今後も毎年1車種以上を継続的に導入することが重ねて説明された。

最後の「2024年の戦略」は、BYDオートジャパン マーケティング部の遠藤友昭部長が説明した。その内容は「3つのアップデート」というもの。3つとは「プロダクト(新型車の導入)」「体験機会(全国キャラバンの実施)」「コミュニケーション(CM放送など)」となる。プロダクトは新型車シールの導入だけでなく、現在の主力モデルATTO 3の小改良も含まれる。改良としては車内ディスプレイの大型化をはじめ、テールロゴの変化やウィンドウトリムとDピラーのブラック化、カラオケアプリの追加などが実施されている。商品力を高め、ブランド認知度を高めるイベントとCMを展開するということだ。また、認定中古車の準備も進んでいるというから期待したい。

次ページからはいよいよ1年目のBYDの数字を検証してみよう。

「BYDオートジャパン2024戦略発表会」で冒頭のあいさつに立ったBYDアジア太平洋地域自動車販売事業部総経理・BYDジャパン代表取締役社長である劉 学亮氏。各方面への感謝の言葉から切り出した。
「BYDオートジャパン2024戦略発表会」で冒頭のあいさつに立ったBYDアジア太平洋地域自動車販売事業部総経理・BYDジャパン代表取締役社長である劉 学亮氏。各方面への感謝の言葉から切り出した。拡大

年間登録台数1446台は多いのか少ないのか?

では、BYDの実力はどの程度なのだろうか? 2023年の国内新車登録台数1446台という数字は、「ゼロスタートとしては、そこそこかなと」と、BYDオートジャパンの東福寺社長が言うように、確かに悪い数字ではない。同時期に日本に(再)参入したヒョンデの2023年の実績は489台(日本自動車輸入組合発表)しかない。それと比べれば、BYDの1446台は大成功といえる。

ちなみに、年間1000~2000台レベルの輸入車ブランドは、マセラティ(1734台)、アルファ・ロメオ(1671台)、アバルト(1466台)、フェラーリ(1395台)というあたり。また、1000台以下にはDS(951台)、シボレー(737台)、ベントレー(727台)、ジャガー(697台)、ランボルギーニ(628台)、キャデラック(575台)がある。

長い販売歴のあるブランドがずらりと並ぶように、日本では年間1000台レベルの販売も簡単ではないのだ。

その上の5000~1万台には、ランドローバー(9096台)、プジョー(8126台)、ポルシェ(8002台)、ルノー(7096台)、シトロエン(5109台)が並ぶ。

そして、1万台以上は7ブランドだ。すなわちメルセデス・ベンツ(5万1228台)、BMW(3万4501台)、フォルクスワーゲン(3万1809台)、アウディ(2万4632台)、MINI(1万7796台)、ボルボ(1万3376台)、ジープ(1万1174台)である。

全体のランキングでいえば、BYDの2023年の成績は17位。全体の分布としては、1位から7位が1万台以上、8~12位が5000台以上、14~17位が1000台以上、そして18位以降が1000台以下となる。日本の輸入車市場をこの4グループに分けてみると、新規参入であるBYDは、早速、3番目のグループに届いているのだ。

また、同じBEV専業ブランドであるテスラの名はランキングにないが、その成績は日本自動車輸入組合が「Others」に分類する5522台の大部分であると予測できる。2023年の輸入車全体の販売は24万6735台で、そのうちBEVの輸入車の販売数は1万4348台だ。

輸入車全体としてのBYDの存在感は小さいが、BEVだけで考えれば、BYDのシェアは10%を超えている。初年度としてのBYDの成績は、十分なものではないだろうか。説明会の冒頭で、劉代表が感謝の言葉を述べるのも納得だ。

2023年に1198台が販売された「BYD ATTO 3」。2024年3月1日にはセンタースクリーンを大型化するなどしたアップデートモデルの販売がスタートした。
2023年に1198台が販売された「BYD ATTO 3」。2024年3月1日にはセンタースクリーンを大型化するなどしたアップデートモデルの販売がスタートした。拡大

全国100拠点がそろうとどれだけ伸びるのか?

BYDの現在の国内の販売拠点は51で、2025年末には100を予定しているという。この数は、どの程度のもので、そして、100店舗体制になったときは、どれだけ販売を伸ばせるのだろうか?

まずは、既存のブランドの販売拠点数をチェックしてみよう。各社ウェブサイトのディーラー検索にある店をカウントすると、年間1万台以上を販売するブランドのディーラー数は以下のとおりとなる。

  • メルセデス・ベンツ:327
  • BMW:256
  • フォルクスワーゲン:301
  • アウディ:187
  • MINI:210
  • ボルボ:122
  • ジープ:104

5000台以上を販売するブランドは以下のとおりだ。

  • ランドローバー:51
  • プジョー:94
  • ポルシェ:70
  • ルノー:81
  • シトロエン:66

ちなみに、インターネット販売に重きを置くテスラとヒョンデのリアル店舗の数は少ない。テスラは全国10カ所のみで、ヒョンデも全国5カ所のショールームしかない。

これらのディーラー数を見てみると、年間1万台以上を販売するブランドは、どこも全国に100以上の店舗を展開していることが分かる。そういう意味で、BYDが全国100店舗展開をすれば、年間1万台の可能性もあるということだろう。

しかし、一方でBEVそのものの売れ行きが伸びていないという問題もある。BEVの輸入車の販売台数は2023年で1万4348台。日本車を合わせても日本市場ではBEVが3万1592台しか売れていないのだ。3万台ちょっとの日本のBEV市場で、年間1万台を目標とするのであれば、テスラだけでなく、日産やトヨタという日本のブランドを超える必要がある。それは相当に高いハードルではないだろうか。

どちらにせよ、当面の目標はテスラの5000台レベルだろう。モデル数の充実とディーラー網の拡充があれば、テスラに追いつく可能性は高い。しかし、その後にどれだけ伸びるかは、BYDの実力だけでなく、日本のBEV市場の盛り上がりが重要になる。もちろん年間販売5000台レベルを維持するだけでも十分に立派な成績でもある。この調子であれば、BYDの日本定着はほぼ確実なのではないだろうか。

(文=鈴木ケンイチ/写真=BYDオートジャパン、webCG/編集=藤沢 勝)

2024年の年央に国内導入予定の「BYDシール」。「ATTO 3」「ドルフィン」とは異なり、「テスラ・モデルS」などと競合するハイパフォーマンスモデルだ。
2024年の年央に国内導入予定の「BYDシール」。「ATTO 3」「ドルフィン」とは異なり、「テスラ・モデルS」などと競合するハイパフォーマンスモデルだ。拡大
鈴木 ケンイチ

鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

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