ボルボEX30ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ(RWD)
日本の今にちょうどいい 2024.03.18 試乗記 ボルボが新しい電気自動車(BEV)専用プラットフォーム「SEA」を用いてゼロから設計した電動SUV「EX30」が上陸。日本の道路事情にもマッチするコンパクトなサイズとこだわりのスカンジナビアンデザイン、そして後輪駆動が織りなすBEVの印象は?ボルボ期待の大型新人!?
スウェーデンのプレミアムカーブランドのボルボ、そして、日本のボルボ・カー・ジャパンにとって、ここ数年で最も重要なモデルとなりそうなのが、BEVのEX30。“ボルボ史上最も小さな電気自動車”をうたう期待の大型新人がついに日本に上陸し、試乗できる日がやってきた。
ご存じのとおり、ボルボは2030年までに完全なBEVメーカーになることを目指しており、今のところその方針に変更はない。2023年の世界販売は過去最高の70万8716台を記録し、うちBEVは11万3419台。前年比で70%増加し、販売台数の16%を占めるに至っている。日本では、2023年に1万1376台を販売したうち、BEVは約14%の1589台だった。グローバル、日本市場ともに、この数字は「XC40リチャージ」「C40リチャージ」のみの販売であり、新たに加わるEX30がこの流れをどのくらい加速するかに注目が集まっている。
2023年6月にワールドプレミア、同年8月にジャパンプレミアを果たしたEX30。日本での発売は当初2023年内を予定していた。これは世界的にみても早いタイミングで、日本市場がいかに重要視されているかがわかる。ただ、実際には車両に搭載されるソフトウエアの最終調整に時間がかかったのが原因で世界的に納車が遅れ、ヨーロッパでは2024年1月、日本では2月後半からデリバリーがスタートしている。それでもヨーロッパとの時間差が2カ月弱というスピードはすごい。
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日本にぴったりのサイズ
EX30の特徴は、なんといってもそのコンパクトなボディーサイズにある。全長×全幅×全高=4235×1835×1550mmは、日本車なら「トヨタ・ヤリス クロス」、輸入車なら「アウディQ2」あたりとほぼ同じサイズだ。SUVスタイルを採用しながら、全高を1550mmと低めに抑えたおかげで、日本の機械式駐車場に対応したのもうれしい点だ。
その中身には、BEV専用プラットフォームのSEA(サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー)を採用。日本では容量69kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、1基のモーターで後輪を駆動する「EX30ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ」がまず導入される。ツインモーター仕様や、シングルモーターに51kWhのバッテリーを組み合わせたエントリーグレードは、追って日本に上陸するとのことである。
シンプルなデザインをまとうEX30は、コンパクトSUVでありながら、なかなか目立つ存在。グリルのないフロントエンドにT字型の“トールハンマーLEDランプ”を組み合わせたマスクが印象に残るし、左右のLEDテールランプを2本のラインで結んだリアビューも、ひと目でEX30とわかるだけの個性がある。
アルミホイールもユニークで、黒のセンターキャップをはめ込むことでボルト類を隠し、少しでも空気抵抗を減らす工夫が凝らされている。なお、試乗車にはオプションの20インチホイールが装着されていて、中央にボルボのロゴがないデザインが特徴。標準の19インチアルミホイールにはボルボのロゴが配置される。
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インテリアは戸惑うほどシンプル
エクステリア以上に驚かされるのがEX30のインテリアだ。運転席に座ると、目に入るのは上下がフラットのステアリングホイールと、縦長のセンタースクリーン、そしてエアコンの吹き出し口くらいで、前方の眺めは抜群だ。物理スイッチは排され、潔いほどシンプルにまとめられている。いわゆるメーターパネルはなく、速度やドライブレンジ、バッテリー残量といった情報がセンタースクリーン上部の「ドライバーインフォメーションエリア」に表示されるのは、正直なところ違和感があるが、テスラユーザーにはむしろこのほうがなじみやすいようだ。
面白いのがフロントドアトリム。細いアルミのインナードアハンドルがあるだけで、パワーウィンドウやドアミラー調節用のスイッチ、スピーカーは見当たらない。フロントドアの配線をできるだけ減らすための工夫だといい、かわりにパワーウィンドウのスイッチはセンターコンソールに移され、また、ダッシュボード上にharman/kardonのサウンドバーが置かれているのが新しい。
「クラウドブルー」のボディーカラーには「ブリーズ」と呼ばれるインテリアが組み合わされる。リサイクル素材の比率を高める取り組みを行うボルボは、このEX30でも再生PET100%素材の「ピクセルニット」と、コルクや再生PET由来の合成皮革「ノルディコ」でシートを仕上げているが、見栄えはよく座り心地も上々。廃棄された塩化ビニールや廃ブラスチックを粉砕してつくった「パーティクル」のデコラティブパネルは同じものがふたつとないデザインで、スカンジナビアの冬をイメージしているというのがなんともボルボらしいところだ。
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軽快感あふれる走り
XC40リチャージやC40リチャージと同様、このEX30にも車両を始動するボタンはない。カードキー、または、「キータグ」と呼ばれるボタンのないリモコンキーを車内に持ち込み、ブレーキを踏みながらステアリングコラムの右にあるシフトレバーを操作すれば、運転の準備は完了する。本来、ステアリングコラムの右にあるべきワイパーのスイッチは、コラム左のウインカーレバーに統合。ワイパーもそうだが、いざというときに戸惑わないよう、あらかじめ乗車前に基本的な操作方法を確認しておくことが大切だ。
さっそくDレンジを選んで、アクセルペダルを控えめに踏むと、EX30は軽やかに動きはじめる。走りだしからモーターのトルクは豊かで、アクセルペダルの動きにやや敏感なくらい素早く反応する。高速道路への合流や追い越しといった場面でも、アクセルペダルを深々と踏む必要がないほど余裕がある。リアに搭載されるモーターは最高出力272PS、最大トルク343N・mのスペックを誇り、車両重量1790kgのEX30を走らせるには十分すぎる性能である。試しにアクセルペダルを思い切り踏み込んでみると、なかなか素早い加速が楽しめるが、モーターの大トルクを2本のリアタイヤがしっかりと受け止めてくれるのが実に頼もしい。
BEVに欠かせない回生ブレーキは、「ワンペダルドライブ」のオン/オフにより、特性を変えることができる。オンにすると、やや強めの減速が得られるうえ、アクセルオフで最終的には停止が可能。一方、オフの場合は、軽めの減速になり、低速ではクリープ走行が可能になる。私は強めのオンが好みだが、車庫入れなどの場面ではクリープ走行するオフに切り替えて使いたい。その際、モードの切り替えは、センタースクリーンで車両設定のメニューを呼び出す必要があり面倒に思えたのだが、ステアリングホイール左の「カスタマイズボタン」にショートカットを登録することで、ボタンひとつで切り替えられると知り、面倒な操作から解放されている。
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スポーティーで魅力的なハンドリング
EX30の乗り心地は、オプションの20インチホイールと245/40R20サイズのタイヤが装着されることもあってやや硬めの感触があるが、それでも十分な快適さが確保され、ハーシュネスの遮断も良好である。標準の19インチタイヤなら、よりマイルドな乗り心地になるだろう。高速道路の直進性はまずまず。床下に重量物のバッテリーを搭載するBEVだけに、SUVスタイルであっても重心が低く、走行時のボディーの揺れがよく抑えられているのもうれしいところだ。
コーナーでは、ステアリング操作に素直に反応し、すっと向きを変えていく身軽さが印象的だ。低重心の恩恵で、コーナリング中の姿勢にも安定感がある。操舵輪と駆動輪が別々というRWDレイアウトや、前840kg、後950kgという重量配分が、この爽快な走りに効いているのだろう。
インフォテインメントシステムに「Google アプリ/サービス」を採用するEX30では、エアコンなどの操作が音声コマンドで実行できたり、ナビゲーションの目的地検索に音声認識が使えたりするなど、なにかと便利だ。目的地到着時のバッテリー残量の予測も可能で、必要に応じて途中の充電ポイントを提案してくれるのも心強い。
気になったのは後席のスペース。ヘッドルーム、ニールームともに大人でも十分なスペースが確保されるものの、爪先をあまり前に出せないので、足元がやや窮屈だった。ラゲッジスペースはボディーサイズ相応といったところで、2段式のフロアを下段に設定することで高さが稼げるのは助かる。フロントボンネット下の“フランク”はさほど大きくはないが、充電ケーブル置き場として活用できる。
試乗会ということで、電費や急速充電の性能をチェックすることはできなかったが、デザインも走りも魅力的に仕上がっていたのが確認できたEX30。日本で使うにはちょうどいいサイズや559万円という価格を考えると、2024年の注目モデルになることは間違いないだろう。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボEX30ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:1790kg
駆動方式:RWD
モーター:永久磁石同期電動機
最高出力:272PS(200kW)/6500-8000rpm
最大トルク:343N・m(35.0kgf・m)/5345rpm
タイヤ:(前)245/40R20 99V/(後)245/40R20 99V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンスSUV)
一充電走行距離:560km(WLTCモード)
交流電力量消費率:143Wh/km(WLTCモード)
価格:559万円/テスト車=576万9650円
オプション装備:ダークティンテッドガラス<リアウィンドウ5面>(0円)/フロントシートヒーター/ステアリングホイールヒーター(0円)/20インチアルミホイール“5スポークエアロ”<ダイヤモンドカット/ブラック>(9万円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<フロント&リアセット>(8万9650円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:289km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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