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メルセデス・ベンツEQA250+(FWD)

進化が止まらない 2024.06.21 試乗記 生方 聡 メルセデス・ベンツの電気自動車(BEV)ラインナップにおいて、エントリーモデルに位置づけられる「EQA」がマイナーチェンジ。アップデートされた内外装デザインの仕上がりと、大容量・高電圧バッテリーの搭載などによって進化した走りを確かめた。
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手に入れたのは新しい顔だけじゃない

メルセデス・ベンツのBEVのなかで、最もコンパクトなモデルがEQAである。2021年にデビューしたSUVスタイルのこのクルマがわずか2年あまりでマイナーチェンジされ、日本でも2024年4月に改良型最新モデルの販売がスタートした。

モデルサイクルの短さには驚くばかり。今回のマイナーチェンジでは、「EQ」らしいフロントマスクを手に入れたのがデザイン上のハイライトだろう。すなわち、穴のないブラックパネルの中央に大きなスリーポインテッドスターを配し、それを取り囲むようにスターパターンをあしらったフロントフェイスである。「EQE」や「EQS」などですっかりおなじみとなったこのグリルによって、EQAもメルセデスのBEVであると一目でわかるようになった。

そうした見た目以上に進化しているのがパワートレインだ。導入当初の「EQA250」は1基の交流誘導モーターにより前輪を駆動し、容量66.5kWhのバッテリーで422kmの航続距離を得ていた。その後、ランニングチェンジにより新開発の同期モーターを採用したことで、航続距離は一気に555kmまで延伸。さらに、今回のマイナーチェンジを機に、容量70.5kWhのバッテリーを積む「EQA250+」に切り替わったことなどで航続距離は591kmまで向上したのだ。

この進化の速さには驚かされるが、あるいはこれくらいのスピード感がないとBEVの時代は生き抜けないということだろうか。

2024年4月に導入が発表された「メルセデス・ベンツEQA」のマイナーチェンジモデル。パワートレインの強化に伴い、グレード名が「EQA250」から「EQA250+」に変更された。車両本体価格は771万円。
2024年4月に導入が発表された「メルセデス・ベンツEQA」のマイナーチェンジモデル。パワートレインの強化に伴い、グレード名が「EQA250」から「EQA250+」に変更された。車両本体価格は771万円。拡大
従来型の「EQA250」が容量66.5kWhのバッテリーで422kmの航続距離を得ていたのに対し、最新の「EQA250+」は容量70.5kWhのバッテリーを搭載し、航続距離が591kmまで向上している。日本ではEQA250+のみのラインナップとなる。
従来型の「EQA250」が容量66.5kWhのバッテリーで422kmの航続距離を得ていたのに対し、最新の「EQA250+」は容量70.5kWhのバッテリーを搭載し、航続距離が591kmまで向上している。日本ではEQA250+のみのラインナップとなる。拡大
「EQE」や「EQS」などでおなじみとなった、メルセデス・ベンツの電気自動車に共通するスターパターングリルが「EQA」にも採用された。
「EQE」や「EQS」などでおなじみとなった、メルセデス・ベンツの電気自動車に共通するスターパターングリルが「EQA」にも採用された。拡大
「EQA250+」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4465×1850×1625mmで、ホイールベースは2730mm。写真のボディーカラーは「マウンテングレーマグノ マット」と呼ばれる28万1000円の有償色。
「EQA250+」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4465×1850×1625mmで、ホイールベースは2730mm。写真のボディーカラーは「マウンテングレーマグノ マット」と呼ばれる28万1000円の有償色。拡大
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余裕ある加速性能

コンパクトSUVスタイルが特徴のEQAは、マイナーチェンジの前後で基本的なフォルムに変わりはない。「AMGラインパッケージ」装着車の全長×全幅×全高=4465×1850×1625mmというサイズも従来型と同じである。

円形エアベントが連なる特徴的なコックピットデザインは、EQAのベースとなる「GLA」に準じている。マイナーチェンジ前に比べると、センターコンソールにあったタッチパッドが廃止されたことですっきりしたデザインになったのはうれしいところ。一方、新デザインのスポーツステアリングホイールは、右側スポーク部にあるクルーズコントロールのスイッチがわかりにくく、操作には慣れが必要だ。

最近では輸入BEVでも「V2H」や「V2L」といった給電機能を備えているモデルが増えてきた。メルセデスも搭載には積極的で、EQAでもマイナーチェンジを機に給電機能が標準装着されるようになった。余裕ある航続距離などとあいまって、令和5年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」が満額の85万円となるのは見逃せない。

そんなEQA250+には、最高出力190PSのモーターが搭載される。最大トルクの385N・mを0-3550rpmで発生するというスペックどおり、動き出しから加速には余裕がある。最高出力の数字からも想像がつくように、アクセルペダルを思い切り踏みつけても過激な加速はみられないが、一般道はもちろんのこと、高速道路を走行する場面でも加速性能に不足はなく、静かでスムーズな運転を楽しめるのがBEVらしいところだ。

タービン型のエアコン吹き出し口が連なる特徴的なコックピットデザインは、「EQA」のベースとなる「GLA」に準じたもの。無数のスリーポインテッドスターを助手席前方に浮かび上がらせる「スターパターンインテリアトリム」も備わる。
タービン型のエアコン吹き出し口が連なる特徴的なコックピットデザインは、「EQA」のベースとなる「GLA」に準じたもの。無数のスリーポインテッドスターを助手席前方に浮かび上がらせる「スターパターンインテリアトリム」も備わる。拡大
新デザインのスポーツステアリングホイールを標準で装備。クルーズコントロールのスイッチを右側スポーク下段に配置している。オプションの「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を選択すると、ステアリングヒーターが追加される。
新デザインのスポーツステアリングホイールを標準で装備。クルーズコントロールのスイッチを右側スポーク下段に配置している。オプションの「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を選択すると、ステアリングヒーターが追加される。拡大
フロントに搭載する駆動用モーターは、前回の一部改良で導入当初の交流誘導電動機から、交流同期電動機に変更されている。最高出力190PS、最大トルク385N・mを発生。
フロントに搭載する駆動用モーターは、前回の一部改良で導入当初の交流誘導電動機から、交流同期電動機に変更されている。最高出力190PS、最大トルク385N・mを発生。拡大
リアコンビランプ内部のデザインを変更し、エクステリアをリフレッシュ。今回の試乗車両に装着された「20インチAMGアルミホイール(RVU)」は、オプションの「AMGラインパッケージ」に含まれるアイテムとなる。
リアコンビランプ内部のデザインを変更し、エクステリアをリフレッシュ。今回の試乗車両に装着された「20インチAMGアルミホイール(RVU)」は、オプションの「AMGラインパッケージ」に含まれるアイテムとなる。拡大

使えるインテリジェント回生

EQA250+の場合、いわゆる“ワンペダルドライブ”の機能はなく、クルマを停止させるにはブレーキを踏む必要がある。一方、回生ブレーキはパドルにより強さが変更でき、通常回生(D+)、強力回生(D)、最大回生(D-)のうち、DまたはD-を選べば、ほぼアクセルペダルだけで速度調節が可能となる。慣れれば運転が楽にできるのも、このBEVの魅力である。

さらに、メルセデスのBEVでは“インテリジェント回生(D AUTO)”が用意され、もちろんEQA250+でも利用することができる。これを使うと、先行車がいない場合は、アクセルオフでクルマがクルージング(回生ブレーキが利かない状態)する一方、先行車がいるときには最適な強さの回生ブレーキで車間距離を維持してくれるという優れモノだ。

首都高速のようにカーブが多く制限速度が低めの有料道路などでは、“アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック”(いわゆるアダプティブクルーズコントロール)よりも使い勝手がいい。

電費については満足できる数字が得られた。今回、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックを使って100km/h巡航した場合が6.3km/kWh、比較的すいた一般道を走る場面では8.0km/kWhをマークしている(いずれもエアコンはオン)。バッテリー容量の8割程度を使う場合では、高速なら約350km、一般道なら約450km走れる計算になる。

回生ブレーキは通常回生(D+)、強力回生(D)、最大回生(D-)、そしてインテリジェント回生(D AUTO)の4種類から、走行シーンや運転スタイルに合わせて任意に設定できる。
回生ブレーキは通常回生(D+)、強力回生(D)、最大回生(D-)、そしてインテリジェント回生(D AUTO)の4種類から、走行シーンや運転スタイルに合わせて任意に設定できる。拡大
充電は普通充電とCHAdeMO規格の直流急速充電に対応。前者の充電口はリアバンパー右側に、後者は右リアフェンダーに配置されている。
充電は普通充電とCHAdeMO規格の直流急速充電に対応。前者の充電口はリアバンパー右側に、後者は右リアフェンダーに配置されている。拡大
快適装備を中心とした各種機能を制限することで、バッテリーをセーブ可能。今回の試乗では、エアコンやインテリア装備の使用抑制によって、最大で22km航続距離が延びると計算された。
快適装備を中心とした各種機能を制限することで、バッテリーをセーブ可能。今回の試乗では、エアコンやインテリア装備の使用抑制によって、最大で22km航続距離が延びると計算された。拡大
後席使用時の荷室容量は340リッター、リアシートをすべて前方に倒せば最大1320リッターに拡大することができる。
後席使用時の荷室容量は340リッター、リアシートをすべて前方に倒せば最大1320リッターに拡大することができる。拡大

追加されたEVユーザー目線の機能

急速充電も試してみた。EQA250+では最高100kWまでの急速充電に対応し、最近増えている90kW充電器で70kW超えを確認した。150kW充電器ならさらに高い出力を利用した充電が可能である。うれしいのは、充電中の電力がリアルタイムでわかるだけでなく、バッテリー残量やバッテリー温度などに左右される最大充電出力がセンターメーターに表示されること。充電する急速充電器を選ぶ際には大いに参考になるはずだ。

また、冬の時期など気温が低いときには急速充電の速度が上がらないこともあるが、このEQA250+では、ナビゲーションシステムで充電スタンドを目的地に設定すると、気温が低い場合などにあらかじめバッテリー温度を適温まで高めるプレコンディショニングが働く。EVユーザーにとって役に立つ機能が盛り込まれているのは実にうれしい。

ところで、今回の試乗車ではメーカーオプションのAMGラインパッケージが選択されており、電子制御ダンパーが組み込まれたアダプティブダンピングシステム付きサスペンションが採用される。重量物のバッテリーを低い位置に搭載することもあり、EQA250+の走りは標準の「Comfort」モードでも落ち着きを感じ、少し硬めとはいえ乗り心地も快適であった。コーナリング時のロールやピッチングの動きもよく抑えられていて、運転が楽しいクルマに仕上がっている。

試乗で唯一、気になったのが室内のスペース。後席はボディーサイズ相応のスペースを確保するが、フロアから座面までがやや低く、また、前席下の奥まで足を伸ばすことができないぶん大人には少々窮屈に思えてしまう。ラゲッジスペースもとりたてて広いとはいえない。後席や荷室に余裕を求める人には7人乗りの「EQB」をお薦めする一方、身軽に走らせたいという人にはこのEQA250+が打ってつけのチョイスになるだろう。

(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

オプションの「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を選択すると、写真のブラック本革シートが装着される。前席のシートには、いずれもヒーターとメモリー付き電動調整機構が備わる。
オプションの「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を選択すると、写真のブラック本革シートが装着される。前席のシートには、いずれもヒーターとメモリー付き電動調整機構が備わる。拡大
ボディーサイズ相応の空間が確保される後席エリア。シートはフロアから座面までがやや低く、前席下の奥まで足を伸ばすことができないので、少々窮屈な印象だ。背もたれには40:20:40の分割可倒機構が備わる。
ボディーサイズ相応の空間が確保される後席エリア。シートはフロアから座面までがやや低く、前席下の奥まで足を伸ばすことができないので、少々窮屈な印象だ。背もたれには40:20:40の分割可倒機構が備わる。拡大
「EQA250+」は、最大出力100kWまでの急速充電に対応している。今回の試乗時には、最近増えている90kWの充電器において、最大出力70kWでの充電が確認できた。
「EQA250+」は、最大出力100kWまでの急速充電に対応している。今回の試乗時には、最近増えている90kWの充電器において、最大出力70kWでの充電が確認できた。拡大
「EQA250+」の走りは、標準の「Comfort」モードでも落ち着きがあり、少し硬めではあるが乗り心地もいい。コーナリング時のロールやピッチングの動きもよく抑えられていて、重心の低いスポーティーなハンドリングが楽しめる。
「EQA250+」の走りは、標準の「Comfort」モードでも落ち着きがあり、少し硬めではあるが乗り心地もいい。コーナリング時のロールやピッチングの動きもよく抑えられていて、重心の低いスポーティーなハンドリングが楽しめる。拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツEQA250+

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4465×1850×1625mm
ホイールベース:2730mm
車重:2020kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:190PS(140kW)/3550-7000rpm
最大トルク:385N・m(43.7kgf・m)/0-3550rpm
タイヤ:(前)235/45R20 100T XL/(後)235/45R20 100T XL(コンチネンタル・エココンタクト6)
一充電走行距離:591km(WLTCモード)
交流電力量消費率:140Wh/km(WLTCモード)
価格:771万円/テスト車=925万1000円
オプション装備:/ボディーカラー<マウンテングレーマグノ マット>(28万1000円)/AMGラインパッケージ(55万円)/アドバンスドパッケージ(34万円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(18万円)/AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(19万円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:763km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:380.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.4km/kWh

メルセデス・ベンツEQA250+
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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