改良型「ポルシェ911カレラT」登場! その見逃せないポイントとは?
2024.12.02 デイリーコラム「911」のなかでもマニアック
巷間(こうかん)、992.2型と称される新型「ポルシェ911」シリーズに早速「カレラT」が設定されました。なぜ“早速”かといえば、カレラTは991.2型でのデビュー以降、モデルラインナップのトリを務めていたからです。もっとも、それ以前の997.2型からラストコールの役割を果たしてきた「カレラGTS」シリーズも、992.2型では電動化を施した看板グレードとして封切り役を果たしているくらいですから、もはや「順番は関係なし」ということなのでしょう。
カレラTのルーツともいえる「911T」は1967年に発表されました。搭載される空冷フラット6はロースペックながら発展性が高く、装備は簡略化されていても車体は上位モデルと遜色ないという点が注目され、ツーリングカーレースのベース車両としてももてはやされたグレードです。
カレラTは2代にわたってそのエッセンスを受け継いだシンプル&スポーティーを売りにしたグレードでした。日本仕様では初代はPDKのみの設定でしたが、2代目では7段MTの選択肢も加わり、ステアリング位置も左右が選べるなど、好事家も一目置くような内容になっています。
その最新型(992.2型)は、MTのみの設定となり、クルマとよりフィジカルな関係を望む向きに明確なメッセージを伝えるグレードへと進化しました。それを象徴するかのように、シフトノブにはオープンポアでナチュラルな風合いが楽しめる、サテンフィニッシュのウォールナットを用いて独自性を高めています。加えて内装のデコレーションパネルやリアクオーターウィンドウには、シフトパターンをモチーフとした丸い印が配されました。しつこいまでのマーキングをみるに、3ペダルMTには世界的なニーズがあり、かつそれは付加価値でさえあるとポルシェの側も踏んでいるのでしょう。
と、モチーフとなったそのシフトパターンからは、前型との最大の違いがみてとれます。それはMTが6段化されたこと。991.1型の911カレラから採用された7段MTは、横方向のトラベルが短くシフトミスを誘発するなど運転に集中できない仕様で、991.2型以降は横方向の動きの節度を高めて対処し、992.1型では5~7速間の操作性が随分改善されたことは前型のカレラTで確認できていました。まぁこれならイライラせずに乗れるかなと思っていたところに、992.2型はやっと6段化されたということで、ドライビングにまつわる心配はこれで一掃されたと言っても過言ではありません。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
夢を見せてくれる一台
一方で「?」が浮かぶのが、新たに設定された「カブリオレ」の存在です。前型のカレラTに乗る限り、カレラ比で40kgの減量はガラスやルーフパネル(カーボンはオプションですが)など、重心の高いところを主に狙っていて、これが乗り味にはっきりと伝わる確実な差を生んでいるわけですが、カブリオレは黙ってクーペ比で100kgは重くなるうえ、その要素が重心の高い位置に集中しているわけです。正直、企画との齟齬(そご)を感じますし、992.1型の印象からいえばバランス的には「911カレラ カブリオレ」のほうがベターではないかと個人的には予想します。
価格は前型に対して100万円ほど上がってしまいました。が、走行面では「リアアクスルステアリング」、運転支援面では「レーンチェンジアシスト」、快適面ではキーレスでドア&トランクへのアクセスが可能な「ポルシェエントリー」などが標準装備となっています。とうとう黄色と赤もオプション扱いとなり、無償色が白・黒のみとなったのにはあぜんとしますが、性能向上分も含めると値上がりは容認できるものです。まあ個人的にはリアアクスルステアのない新型に一度乗ってみたい気もしますが、それはかなわぬものとなりました。
現在、ポルシェジャパンのウェブサイトのコンフィギュレーターでもカレラTは選択可能で“エア商談”が楽しめるようになっています。思慮なく付けたいものをポンポン選んでいくと、あっという間にオプション価格が「アルファード」級になるという、クラブのお愛想のような恐怖の疑似体験は一度味わっておいて損はないでしょう。
おいそれと手の届かないところにいってしまった911シリーズにおいて、カレラTはクルマ好きにギリギリ夢を見せてくれるグレードです。快適性や実用性と、パフォーマンスとの折衷点においても、「911ターボ」や「911 GT3」といったアルティメイト系よりもむしろ911らしいのではと思わせてくれるところがあります。
そういうクルマですから、個人的には可能な限りシンプルに乗りたい。オプション選択として悩むとすれば色とカーボンルーフ、そしてリアシートの有無でしょうか。後部を荷室として使う機会が多ければ、背もたれを倒してフラットな荷台がつくれる後席は重量増をのんででも付けておくに越したことはありません。ちなみにリアシートは無償オプションです。
あとはエンブレムやデカール類も全レスで無垢(むく)を楽しみたいと思い……と、有り体なオチですが、この冬はやっぱり年末ジャンボいっときますかね。
(文=渡辺敏史/写真=ポルシェ/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
待望の7人乗りMPV「ルノー・グランカングー」を大解剖 ライバルにはない魅力はあるか? 2026.1.30 いよいよ日本に導入された、ロングボディー・3列シートの「ルノー・グランカングー」。満を持して登場した真打ちは、競合する国産ミニバンや7人乗りの輸入MPVに対し、どのような特徴があり、どんな人におススメなのか? 取材会で実車に触れた印象を報告する。
-
「スバルPerformance-B STIコンセプト」の市販化はズバリ2027年!? 2026.1.29 スバルが「東京オートサロン2026」でスーパー耐久シリーズ2026の参戦車両を発表。そのプロフィールは「スバルPerformance-B STIコンセプト」そのものだ。同モデルの市販化はあるのか。スバリストが願望を込めつつ予想する。
-
クワッドモーター搭載で過去にないパフォーマンス BMWが示したBEV版「M3」の青写真 2026.1.28 BMW Mが近い将来に市場投入を図る初のピュア電気自動車の骨子を発表した。車種は明かされていないものの、「BMW Mノイエクラッセ」と呼ばれており、同時に公開された写真が小型セダンであることから、おそらく次期型「M3」と思われる。その技術的特徴を紹介する。
-
春は反則金祭り!? 2026年4月に始まる「自転車の青切符導入」を考える 2026.1.26 2026年4月から、自転車を対象とした交通反則通告制度(青切符)が導入され、違反者には反則金が科されるようになる。なぜこうした事態になったのか、実情について自動車ライターの工藤貴宏が語る。
-
「K-OPEN」や競技用「ミラ イース」の開発者を直撃! 東京オートサロンで感じたダイハツの心意気 2026.1.23 「東京オートサロン2026」に、ターボエンジン+5段MTの「ミラ イース」や「K-OPEN」のプロトタイプを出展したダイハツ。両車の開発者が語った開発秘話や市販化の狙いとは? 「走る楽しさをみんなのものに」に本気で取り組む、ダイハツの心意気に触れた。
-
NEW
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(4WD)【試乗記】
2026.1.31試乗記レクサスの電気自動車「RZ」が大型アップデートを敢行。特に今回連れ出した「RZ550e“Fスポーツ”」は「ステアバイワイヤ」と「インタラクティブマニュアルドライブ」の2大新機軸を採用し、性能とともに個性も強化している。ワインディングロードでの印象を報告する。 -
NEW
「スズキGSX-8T/GSX-8TT」発表会の会場から
2026.1.30画像・写真スズキが新型モーターサイクル「GSX-8T/GSX-8TT」をいよいよ日本で発売。イタリアのデザインセンターが手がけた新型のネオクラシックモデルは、スズキに新しい風を吹き込むか? タイムレスなデザインと高次元の走りを標榜する一台を、写真で紹介する。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――トヨタ・クラウン エステートRS編
2026.1.30webCG Movies「クラウン」らしからぬデザインや4車種展開などで話題になった、新世代のトヨタ・クラウン。そのうちの一台「クラウン エステート」に試乗した、元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんの感想は? -
待望の7人乗りMPV「ルノー・グランカングー」を大解剖 ライバルにはない魅力はあるか?
2026.1.30デイリーコラムいよいよ日本に導入された、ロングボディー・3列シートの「ルノー・グランカングー」。満を持して登場した真打ちは、競合する国産ミニバンや7人乗りの輸入MPVに対し、どのような特徴があり、どんな人におススメなのか? 取材会で実車に触れた印象を報告する。 -
第946回:欧州に「277万円以下」のクルマなし! キューバ化を覚悟した冬
2026.1.29マッキナ あらモーダ!欧州でお値段1万5000ユーロ未満の大衆車が壊滅状態に! 自動車の価格高騰はなぜ起き、そしていつまで続くのか? 一般の自動車ユーザーは、この嵐をいかにしてやり過ごそうとしているのか? イタリア在住の大矢アキオがリポートする。 -
第286回:才人監督が描くディストピアのデスゲーム 『ランニング・マン』
2026.1.29読んでますカー、観てますカー「アルピーヌA290」で追っ手のハンターから逃げ延びろ! スティーブン・キングが50年前に予見した未来は、まさに現在の状況そのもの。分断とフェイクが支配する現実を鋭くえぐった最新型デスゲーム映画。







































