マットBENNY’S.LTD.×JAPAN GT-SR 250(5MT)
迷ってるヒマはない 2025.01.24 試乗記 英国のカスタムビルダーの手になるバイクが日本で手に入る! そんなマニアックなマットモーターサイクルズから、日本専用の限定モデル「BENNY’S.LTD.×JAPAN(ベニーズリミテッド×ジャパン)GT-SR 250」が登場。貴重で独創性あふれるマシンの魅力に触れた。英国発の個性あふれるストリートバイク
なにはともあれバイクは気に入ったモデルを買うのが一番! 気に入るポイントはさまざまあれど、まずは見た目が9割(自分調べ)……。ということで、黄色のタンクがステキなマット・ベニーズリミテッド×ジャパンGT-SR 250はいかがでしょう!?
マットモーターサイクルズは、ヴィンテージバイクのカスタムで名を挙げたベニー・トーマスさんが、2013年にイギリスはバーミンガムで設立した新しいブランド。2019年から販売が始まった日本市場では、すでに両手に余るモデルが用意されている。懐かしいレトロなスタイルに、どこかストリートの風を感じさせるクールな外観がラインナップに共通する持ち味。250ccの単気筒モデルをメインに、125cc版も用意される。海外から輸入されるコンプリートカスタムにして、70万円台からというリーズナブルな価格設定が特徴だ。今回取り上げるベニーズリミテッドには、76万6700円のプライスタグが付く。
真面目なユーザーが多い日本では、フルカスタムというといまだに「切った張ったのヤクザな仕様」(失礼!)をイメージする人がいるかもしれないが、マットモーターサイクルズは、英国風のスパイスを利かせた少量生産の手堅いビジネスを狙っている。具体的には、「空冷単気筒+5段MT」をシンプルな鋼管フレームに載せた基本構造をうまく活用しながら、ハンドル、タンク、マフラー、シートにホイール、さらにはヘッドランプやインジケーター(ウインカー)ほか、各パーツをセンスよく組み合わせて、どんどん目新しいモデルをリリースしていく。要はマットというセレクトショップに、専門のコーディネーターが常駐しているようなものだ。
自分のような無粋な人間は、マットのラインナップを前に、「モデル名が暗記できない! 明確に区別できない!!」と職業的な危機感をおぼえるが、同社の主なターゲットたる高感度なシャレ者の方々は、次々と繰り出されるニューカマーのなかで「ビビビッときた」(死語)バイクが現れたら手を伸ばせばいい。
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狭い日本、そんなに急いでどこへ行く?
ベニーズリミテッド×ジャパンGT-SR 250は、その名のとおり250ccモデル の「GT-SR 250」がベース。価格はオリジナルモデルそのままに、タンクが「Benny Yellow Special」にペイントされ、専用のデカールが貼られ、バーハンドル中央下のブリッジにはやはり特別なステッカーが備わる。わずか20台の日本限定モデルだから、電撃が走った人は迷っているヒマはない。
前後18インチのムッチリしたブロックタイヤが、都会の道を行くファットバイクを思わせるベニーズリミテッド。シート高は810mmと高めで、シートクッションが硬く、サスペンションもほとんど沈まないので、小柄なユーザーや足の長さに不足がある方は、シートのアンコ抜きや、スプリングを柔らかくするといった方策をショップスタッフと相談するのもあり。顧客満足度向上のためのカスタムを、ふたつ返事で引き受けてくれるにちがいない。
シートにまたがると、アルマイト加工されたハンドルに刻まれた「BLACK METAL FROM BIRMINGHAM」のフレーズにニンマリする。生産は中国だけれど、心はバーミンガムというわけだ。アップル製品の「designed by Apple in California」と同じ精神ですね。見た目の印象より細身のタンクをゆるくヒザで挟んでのライディングポジションは、ストリートバイクらしいアップライトなもの。軽くヒジを伸ばしてリラックスして乗れる。
小径簡素なメーターは回転計で、速度は小窓にデジタル表示される。1万rpmからがレッドゾーンだが、試乗車の走行距離がわずか145kmということもあってか、スズキ由来のシングルカムユニットはあまり回りたがらない。6000rpmを超えると振動が大きくなり始めるが、中低回転域でのトルクが太いので、街乗りでは気になる前にシフトアップしてしまう。スタイリッシュな見た目とは裏腹に、黙々と働くエンジンがマットの走りを支えている。
130kgの重量に、最高出力17.2HP、最大トルク18N・mのアウトプットは、普段使いには必要十分。前輪に90偏平の120タイヤを履いていることもあって、俊敏に向きを変えるスポーティーなハンドリングとは言いにくいが、マットの場合、どこかまったりした走りがむしろ個性になる。焦らずに走りたい。
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空冷モデルが手に入るのは今のうち
ベニーズリミテッドのグリップを握りながらライターの悪癖、いつものアラ探しを始めると、スロットルレスポンスはいいけれど、レバーの遊びがやや大きいかな。クラッチレバーやシフトの操作感をもう少しシャキッとさせたい。ブレーキは制動力の立ち上がりがのんびりしているので、早利きタイプのパッドに変えて、なろうことなら足まわりはもう少ししなやかに……と個人的な希望が募る。が、それらは欠点というより今後のカスタム課題だ。メーカーというよりカスタムビルダーのマットモーターサイクルズだけに、ユーザーも購入後に一緒に愛車を育てていく姿勢が大事なのだろう。ガレージに置かれたイエロータンクのバイクを眺めながら、「次は何する?」と考えるのは楽しかろう。
ちなみに、同ブランドの最新モデルたる「DRK-01 250」は、「水冷単気筒+6段MT」という新しいパワーパックを採用。マットは日本での空冷モデルの販売を終えるというから、“こだわりの空冷エンジン好き”は、決断を急いだほうがいいかもしれない。ウワサによるとベニーズリミテッド×ジャパンGT-SR 250、すでに完売してしまったとか、していないとか……。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=ピーシーアイ)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2060×760×1150mm
ホイールベース:--mm
シート高:810mm
重量:130kg
エンジン:249cc 空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブ
最高出力:17.2HP(13kW)
最大トルク:18N・m(1.8kgf・m)
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:76万6700円
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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