第289回:アンビエントライトをオーディオに同調
2024.07.29 カーマニア人間国宝への道重要なのは光りモノ?
担当サクライ君よりメールが届いた。
「次回、メルセデス・ベンツの『CLE200カブリオレ スポーツ 』にお乗りになりませんか」
CLEカブリオレ。いったいどんなクルマだろう。メルセデスのラインナップは、どれがどれだかサッパリになって久しく、CLEカブリオレと聞いても姿形が思い浮かばない。たぶんゴージャスなオープンモデルなのだろうが、正直あまり興味はない。それでも一応「乗る乗る~」と返信しておいた。
ところがその認識は間もなく一変した。私は突如としてメルセデスが大好きになったのだ! うお~メルセデス最高! 好き好きメルセデス! クルマはメルセデスかそれ以外か! くらいの勢いだ。あ~早くメルセデスに乗りたい! 待ちきれないぞCLEカブリオレ!
当日。地元の弓道教室の練習を終えて自宅に戻ると、サクライ君がメルセデスでやってきた。
オレ:あれ? これ、意外と小さいね。
サクライ:ですね。CLEって名前ですけど、「Eクラス」より「Cクラス」寄りみたいです。
オレ:そうなんだ。まあサイズはなんでもいいよ。それより重要なのは光りモノだから!
サクライ:そうですか。
CLEカブリオレは、ヘッドランプの内側に青いLEDのラインが光っていた。ドアを開けると足元にクッキリとスリーポインテッドスターのシルエットが映し出される。よしよし、さすがメルセデス。これは期待できる。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
「オーディオと同調」ですべてが変わった
オレ:まず代々木PAに向かおう。そこで試したいことがあるんだ。
サクライ:了解です。
オレ:ところでこのクルマ、エンジンは何?
サクライ:当ててください。
オレ:う~ん……。4気筒の2リッターガソリンターボとみた!
サクライ:正解です。
最近のドイツ車はたいてい4気筒の2リッターガソリンターボなので、正解というほどでもなかった。
CLEカブリオレは代々木PAに滑り込んだ。
サクライ:何を試しましょう。オープン機構ですか。
オレ:違う、アンビエントライトだよ!
アンビエントライトとは、メルセデス得意の64色可変LEDインテリア照明システムのことである。
サクライ:普通についてますけど。
オレ:こないだ新型Eクラスに乗ったら、アンビエントライトを「オーディオに同調」ってスイッチがあってさ、それをONにして首都高を走って大感動したんだよ!
サクライ:そうなんですか。
オレ:音楽に合わせてピカピカフニフニ明滅してくれて、ウルトラ陶酔したんだよ! オレはメルセデスのアンビエントライトの「オーディオに同調」に夢中なんだよ! エンジンなんかなんでもいい。アンビエントライトが最大のポイントなんだよ!
サクライ:わかりました。探してみましょう。
われわれはセンターパネルの「アンビエントライト」の項目を探索した。
しかしこのクルマには、「オーディオと同調」スイッチはついていなかった……(たぶん)。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
フェラーリエンジンの陶酔と同レベル
Eクラスのアンビエントライトは、私が知っているそれまでのメルセデスのアンビエントライトとは破壊力が違った。
まず光量がすごい。最大にしておくと、夜の視界がヤバくなるくらいビンビンに光る。最初は「外が見えづらいじゃん!」と文句を言っていたが、オーディオと同調というスイッチを発見し、それをONにして世界が変わった。
私はいつもどおりふ抜けたメロウな音楽をかけていたのだが、それにアンビエントライトが同調して明滅することによって、脳内麻薬物質が大量に分泌され、信じられないほどウットリしてしまったのである。あああ、クルマも私もスカイツリーの中に溶けてしまいそう……というくらい。
そのあたりのことをサクライ君に説明したが、「そんなのついてたんですか。知りませんでした」と、反応は薄かった。
確かにあれは体験してみないとすごさがわからない。そして自動車メディアではほぼ取り上げられていない。特にwebCGのような正統派自動車メディアではスルーされている。私もつい最近までアンビエントライトを「邪道!」と断じていたが、「オーディオと同調」ですべてが変わった。アレはフェラーリエンジンの陶酔と同レベルでステキ!
サクライ:残念ながらこのクルマにはついてませんね。
オレ:だね。ガッカリ……。
サクライ:ではせめて、これでも聴いてください。
サクライ君はスマホを操作してPerfumeのメドレーをかけた。久しぶりに聴く彼女たちのデジタルサウンドは最高だった。ああ、これにアンビエントライトを同調させたらどんなに気持ちいいだろう。
メルセデス様、アンビエントライトの「オーディオと同調」機能は、どのモデルに装備されているんでしょう? リストをいただけたら幸いです。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
第315回:北極と南極 2025.7.28 清水草一の話題の連載。10年半ぶりにフルモデルチェンジした新型「ダイハツ・ムーヴ」で首都高に出撃。「フェラーリ328GTS」と「ダイハツ・タント」という自動車界の対極に位置する2台をガレージに並べるベテランカーマニアの印象は?
-
第314回:カーマニアの奇遇 2025.7.14 清水草一の話題の連載。ある夏の休日、「アウディA5」の試乗をしつつ首都高・辰巳PAに向かうと、そこには愛車「フェラーリ328」を車両火災から救ってくれた恩人の姿が! 再会の奇跡を喜びつつ、あらためて感謝を伝えることができた。
-
第313回:最高の敵役 2025.6.30 清水草一の話題の連載。間もなく生産終了となるR35型「日産GT-R」のフェアウェル試乗を行った。進化し、熟成された「GT-RプレミアムエディションT-spec」の走りを味わいながら、18年に及ぶその歴史に思いをはせた。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。