ボルボV60 T4(FF/6AT)【海外試乗記】
ワゴンときどきクーペ 2010.10.24 試乗記 ボルボV60 T4(FF/6AT)ボルボ史上最もスポーティなワゴン「V60」にイタリアで試乗。大胆にイメージを変えた、最新ボルボの走りをリポートする。
大胆なスタイリング
ボルボの歴史で最もスポーティなセダン「S60」に続き、その精神をボルボお得意のワゴンで表現した「V60」の試乗会が、イタリアはベローナの郊外で開かれた。ベローナといえば中世の雰囲気をよく残した町で、シェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』の舞台としても知られる。われわれが訪れたのはその郊外。のんびりとした風景にワイン畑が広がり、その間をワインディングロードが縫って走る丘陵がV60の舞台だった。ボルボ・ファミリー随一のスポーツワゴンの実力を試すには、格好のコースである。
シートに着く前にぐるっとひと回り、V60のスタイリングをチェックする。ボディ側面のウィンドウグラフィックによる視覚的な効果もあって、ルーフラインは優雅な曲線を描いている。
通常なら垂直方向に切り立ったテールゲートもV60では寝かされていて、ずいぶんと躍動的だ。さらに前後のオーバーハングは左右が絞り込まれているので、斜め方向から見ると、実際よりオーバーハングが短く見えるようになっている。かなりクーペ的な造形にこだわっていることがわかる。
格好がいいぶん、ラゲッジスペースの容量が限られてしまうのは、まあ仕方のないところか。リアシートを立てた状態での容量は430リッター。「アルファ159スポーツワゴン」が445リッターで、「BMW3シリーズツーリング」が460リッターなので、V60がいかに思い切ったコンセプトを持つワゴンなのかわかるだろう。たくさん積みたい人は「V70」を選ぶべき。ボルボ自身もそう考えているはずだ。
もっとも、その限られたスペースをきっちり使い切る姿勢は、いつものボルボ流。リアシートは40:20:40の比率で倒れるようになっており、倒せばきっちりフラットになる。しかも、その状態でのフロア長は175cm近く取れるから、イケアで大物家具を買っても何とか持って帰れそうだ。
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新エンジン「T4」を搭載
V60に搭載されるエンジンはガソリン4種、ディーゼル2種の合計6種類。話をガソリンに限れば、そのラインナップは1.6リッター直4ターボ(150ps)、1.6リッター直4ターボ(180ps)、2リッター直4ターボ(203ps)、3リッター直6ターボ(304ps。これのみ4WD)となり、日本ではベーシックな1.6リッターターボ(150ps)を除いたものが2011年の夏前に発売される予定だ。
なお2リッター直4ターボは、日本で発売される前に203psから240psへと強化される予定とのこと。203psバージョンは上陸しないそうだ。
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その中から今回試したモデルは1.6リッター直4ターボ。モデルネームでは「T4」と呼ばれるものだ。ヨーロッパ車のエンジンには今、ダウンサイジング過給のトレンドが波及しており、今年の夏「XC60」に2リッター直4ターボ仕様の「T5」が追加されたのはご承知のとおり。今回、さらにその下が登場したのだ。
ベローナ郊外の道の流れは、日本の郊外よりずっと速い。そのテンポに合わせる程度なら、1.6リッターターボユニットは何ら不満なく1.5トンあまりのボディを引っ張ってくれる。高回転まで回せばそれなりに威勢のいいエンジン音を響かせるけれども、最近の小排気量エンジンの力強さには感心させられっぱなしだ。
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ただ、2リッターターボと比べれば、それなりの差はちゃんとある。まず2000rpm以下の低速トルクが、1.6リッターはそれなりに穏やかだ。なので、発進直後に加速力を必要とするような場面、たとえば今回の試乗会でよく出くわしたパターンで言うなら、側道で一時停止し、そこからペースの速い本道に合流するときなどに、一瞬もたつく感じがぬぐえなかった。
さらに、高回転まで回したときのエンジンノイズが2リッターの方が静かである。回り方のキメも細かい感じだ。両者はちゃんと住み分けが出来ているようだ。
見た目どおりの走り
実は今回、「V60 T4」で一番感心させられたのは、エンジンではなく足まわりだった。V60には2種類のシャシーセッティングが用意されており、オーナーが購入時に選択できるようになっている。スポーティな走りが自慢の硬いセッティングが「ダイナミックシャシー」、スムーズな乗り心地を身上とするよりソフトな方が「ツーリングシャシー」と呼ばれるが、前者の仕上がり具合が思いのほか素晴らしかったのである。
ダイナミックシャシー仕様車では、あのボルボ特有のおおらかな乗り味が感じられない。いかにも微小域からきっちり減衰している感じのダンパーが付き、かつてないほどフラットな印象になっている。サスペンションも無駄なストロークは一切せず、ダイレクトな感触にあふれている。
しかし路面からの入力に対して、不思議なほど角張った感じがしない。つまり、乗り心地がいいのである。ステアリングを握っていた筆者だけでなく、パッセンジャーもそういう感想を自分から述べていたくらい、いいのである。
しかも足元がやけに軽い。ボルボにしてこの感触はかなり新鮮だ。段差はタタッと軽快にやりすごすし、ワインディングロードでのフットワークはワゴンとは思えないほど軽い。車体後部に重たい「箱」を背負っているという感覚はほとんどなく、ヨーダンピングの良さは想像以上だった。
変わり行くボルボに対して、いろいろな意見はあるだろう。しかし筆者は意外にこの路線、アリだと思った。そうでないと、このスポーティな外観と走りのバランスが取れないではないか!
(文=竹下元太郎/写真=ボルボ・カーズ・ジャパン、竹下元太郎)
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竹下 元太郎
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