第822回:高級化と高機能化を一気に進めた4ドアクーペ メルセデスが新型「CLA」を世界初披露
2025.03.14 エディターから一言メルセデスのターニングポイント
メルセデス・ベンツの新型「CLA」がイタリア・ローマで発表された。どうしてローマなのかはともかく、メルセデスが本国以外で(モーターショーに便乗するのではなく)わざわざ発表会だけを開催するときは、たいていそのモデルに並々ならぬ思いを抱いているということは確かである。その思いとは、これが単なるいちモデルの発表会にとどまらず、メルセデスの戦略転換のスタートとなるからだろう。
これまで、新型CLAのパワートレインなどについてはリポートしてきたが、ボディーや室内があらわになったのはこれが初めてである。フォルムは先代からのクーペルックを踏襲しているものの、全長4723mm、全幅1855mm、全高1468mm、ホイールベース2790mmのボディースペックはすべて拡大されている。なかでもホイールベースは従来型より61mmも延びており、室内が広くなっている。しかしこれは居住性の向上を狙ったというよりも、駆動用バッテリーを搭載するためにホイールベースを延ばした副産物と考えたほうがいい。
新型CLAは、電気自動車(BEV)と内燃機関(ICE)のパワートレイン(=ハイブリッド)でボディーを共有する点がひとつの特徴でもある。厳密に言うと、そもそもこのプラットフォームとボディーはBEV専用として新規開発されてきたものだった。ところが途中で「やっぱりエンジンも積もう」という話になり、でもBEV用につくってしまったボンネットは極めて小さく、やむを得ずコンパクトなエンジンも新規開発してモーターと組み合わせたハイブリッドにしたという経緯がある。メルセデスの「EQS」が量産車トップのCd値0.20を誇るように、BEVにとって空力は航続距離を稼ぐうえでも重要な要件であり、CLAでもアンダーフロアの整流に至るまで徹底的な空力改善を行い、EQSに次ぐCd値0.21を達成している。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
自社開発の最新車載OSを搭載
空力優先のエクステリアデザインは理解できるものの、スリーポインテッドスターのモノグラム化は個人的にちょっとどうなんだろうといまのところは思っている。「Eクラス」でスリーポインテッドスターをモチーフにしたテールライトがお披露目されたが、CLAではそれがヘッドライトにまでおよび、BEV仕様ではフロントグリル内にちりばめられた計142個の星にLEDが仕込まれている。以前、チーフデザイナーのゴードン・ワグナーが「一流ブランドの多くはロゴをモノグラム化している」と言っていた。おそらく「LとV」や「CとD」のアルファベットをあしらっている某アパレルブランドなどを示唆していて、メルセデスもそういうふうになりたいようなのだけれど、自動車でも果たしてそれが受け入れられるのかどうかは現時点で未知数である。ちなみに、BEV仕様はフロントにもラゲッジルーム(101リッター)が備わっている。
インテリアで存在感を放っているのは、EQシリーズよりも天地方向が抑えられて横長になった新しい「MBUXスーパースクリーン」である。一枚ガラスでダッシュボードのほぼ全体を覆った中には、運転席前に10.25インチ、センターに14インチ、助手席に14インチ(オプション)の液晶ディスプレイが配置される。細かいところで恐縮ですが、個人的に目を引かれたのはドアに設置されているパワーウィンドウのスイッチ。よく見ると4個ではなく2個しかない。リアウィンドウを作動する際には先にリア用のボタンを押すアクションが必要となる。コスト削減なのか、スペースの問題か、あるいは使用頻度に鑑みての判断なのかは分からないけれど、自分が知る限りメルセデスでは初めての試みではないかと思う。
MBUXを動かすOSは、「メルセデス・ベンツ オペレーティングシステム(MB.OS)」の完全版が初めて採用されている。マイクロソフトやグーグルと提携し、車内オペレーションにAIを積極的に活用するとともに、「ChatGPT-4o」も搭載した。ナビゲーションには「Googleマップ」とその情報を利用する。例えば目的地を入力してルートどおりに走っていても、BEV仕様の場合は気温や平均速度、渋滞状況、エアコンの稼働状況などをモニタリングして途中で充電が必要と判断すると、自動的に充電スタンドに立ち寄るようにルートを引き直すという。ソフトウエアをアップデートするOTAも装備するが、今回からその範囲がドライバーアシスタント機能にまで広がった点が新しい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
一台でスプリントもマラソンもこなす
新型CLAの発売はBEVからで、まずは「CLA250+ with EQテクノロジー」と「CLA350 4MATIC with EQテクノロジー」の2モデルが欧州のディーラーに今夏には並ぶ。CLA250は最高出力200kW(272PS)を発生するモーターをリアに搭載した後輪駆動で、WLTPモードの一充電走行距離は694-792km。CLA350はフロントにもモーターを置いてシステム出力は260kW(354PS)、一充電走行距離は672-771kmと公表されている。リアモーターには2段のギアボックスが装着されていて、メルセデスいわく「1段は短距離ランナー用、もう1段はマラソンランナー用」とのことで、図らずも「うまいこと言うね」と思ってしまった。なお、ブレーキはバイワイヤで、基本的には機械式ブレーキよりも回生ブレーキを優先的に使用し、場合によってはABSの作動時でも回生ブレーキを使うそうだ。
新型CLAのアーキテクチャーとパワートレインは、事実上「CLAシューティングブレーク」の後継車となるワゴン、「GLA」の後継車となるSUV、そして「GLB」の後継車となるSUVも共有する。ここにハッチバックモデルは含まれていないことから、「Aクラス」と「Bクラス」は現行モデルが最後となる公算が高まった。A/Bクラスはこれまで、メルセデスの商品群のなかでボトムの価格レンジを担ってきた。冒頭に書いたメルセデスの「戦略転換」とはBEV化をやめるだけでなく、新型CLAの登場を皮切りに高級路線へシフトすることも含んでいるのである。
(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

渡辺 慎太郎
-
第865回:ブリヂストンが新タイヤブランド「フィネッサ」を発表 どんなクルマに最適なのか? 2026.3.13 ブリヂストンが2026年1月に発表した「FINESSA(フィネッサ)」は、同社最新の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する乗用車用の新タイヤブランドである。高いウエットグリップ性能と快適な車内空間の実現がうたわれるフィネッサの特徴や走行時の印象を報告する。
-
第864回:冬の北海道で「CR-V/ZR-V/ヴェゼル」にイッキ乗り! ホンダ製4WDの実力に迫る 2026.3.9 氷雪に覆われた冬の北海道で、新型「CR-V」をはじめとするホンダのSUV 3兄弟に試乗。かつては実力を疑われたこともあるというホンダ製4WDだが、今日における仕上がりはどれほどのものか? 厳しい環境のもとで、そのコントロール性を確かめた。
-
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す 2026.3.3 電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
-
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して 2026.2.25 マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。
-
第861回:冬道性能やいかに ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を北の大地で試す 2026.2.18 2025年9月に日本ミシュランタイヤが発表した最新のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」の冬道性能を確かめるために、北海道に飛んだ。ドライやウエット路面に続き、ウインターシーンでの印象を報告する。
-
NEW
「空力性能」を追求すると、最終的にどのクルマも同じ形になってしまうのか?
2026.3.24あの多田哲哉のクルマQ&Aスポーティーな車種に限らず、空力性能の向上は多くのクルマの重要課題。しかし、それを突き詰めれば、どれも同じような形になってしまうのではないか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんはこう考える。 -
NEW
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】
2026.3.24試乗記販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。 -
第56回:走行16万kmでも電池の劣化なし! -20℃でもエアコンが効く! 新型「日産リーフ」のスゴイところを聞く
2026.3.23小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ航続距離が伸びたり走りの質がよくなったりで話題の3代目「日産リーフ」だが、本当に見るべき点はそこにあらず。小沢コージが開発エンジニアを直撃し、ジミだけど大きな進化や、言われなかったら気づかないような改良点などを聞いてきました。 -
カッコインサイト! スタイリッシュになった新型「ホンダ・インサイト」は買いなのか?
2026.3.23デイリーコラム2026年3月19日、通算4代目となる新型「ホンダ・インサイト」の受注が始まった。トピックはフルEVになったことと、その見た目のカッコよさ。多くの人が乗りたくなる、本命EVの登場か? 買いか否か、清水草一はこう考える。 -
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】
2026.3.23試乗記BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス” +エアロパフォーマンスパッケージ(前編)
2026.3.22ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル/STIでクルマの走りを鍛えてきた辰己英治氏が今回試乗するのは、トヨタの手になる4WDスポーツ「GRヤリス」だ。モータースポーツへの投入を目的に開発され、今も進化を続けるホットな一台を、ミスター・スバルがチェックする!











































