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プラグインハイブリッド車はなぜ急速に増えているのか?

2025.07.14 デイリーコラム 工藤 貴宏
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あの国でPHEVが大人気!?

いまプラグインハイブリッド車(PHEV)が売れまくっている。

……なんて書くと「いやいや日本で走っているハイブリッドカーのほとんどは非プラグインじゃないか」とか「欧州では一時期ほどのPHEVの盛り上がりはないでしょ?」という声が飛び交うことだろう。

しかし、グローバルで考えるとPHEVに勢いがあるのは事実。イギリスの調査会社「グローバルデータ」の調べによると、2024年のPHEV世界販売(レンジエクステンダーEVを含む)は2023年比で58%増えて678万台。ハイブリッド車は18%の伸びで654万台。世界規模でみればハイブリッドよりも売れているのだから“ハイブリッド天国”に住む日本人としては驚くしかない。

いったいどこで売れているのか? 中国である。メーカー別にみると、PHEVのシェア上位6社は中国メーカーで、それらが世界販売の約7割を占める。気がつけばPHEVも中国メーカーが幅を利かせる市場となっているというわけだ。

ちなみに2024年に最も多くのPHEVを販売したメーカーはBYDで、販売台数は驚きの248万台(前年比7割増という信じられない実績!)。同社の世界シェアは38.4%だった。

どうして中国でPHEVが増えているのか?

まず前提として、中国だとPHEVは電気自動車(BEV)と同様に“新エネルギー車”に区分される。新エネルギー車はナンバープレートが緑色になるので一目瞭然だが、上海など都市部では緑ナンバーのなんと多いことか。こぞって緑ナンバー車を選ぶ理由は、登録をはじめ、さまざまな優遇が受けられるからだが、とはいえ……BEVだと充電や航続距離に対する不安はぬぐえない。そこで優遇を受けつつも、充電や航続距離の不安から解放されるPHEVが大人気というわけだ。実にわかりやすい。

ここ数年、国内外を問わずPHEVの新型車が急速に目につくようになった。写真は2025年6月にデビューした新型「アウディQ3」。そのPHEVモデルのEV走行距離は119kmで、現実的にBEVのように使うことも可能となっている。
ここ数年、国内外を問わずPHEVの新型車が急速に目につくようになった。写真は2025年6月にデビューした新型「アウディQ3」。そのPHEVモデルのEV走行距離は119kmで、現実的にBEVのように使うことも可能となっている。拡大
中国のBYDは、BEVのみならず、PHEVに関しても存在感を強めている。写真は2025年1月、同年末と見込まれる日本国内へのPHEV導入計画について語る、BYDジャパンの劉 学亮 代表取締役社長。
中国のBYDは、BEVのみならず、PHEVに関しても存在感を強めている。写真は2025年1月、同年末と見込まれる日本国内へのPHEV導入計画について語る、BYDジャパンの劉 学亮 代表取締役社長。拡大
トヨタ プリウス の中古車webCG中古車検索

“いいとこ取り”のよさがある

いっぽう、日本ではどうだろうか?

PHEVの先駆者といえばなんといっても「三菱アウトランダーPHEV」だが、昨今熱いのはトヨタ。かなり早い段階から用意していた「プリウス」に加え、「RAV4」や「ハリアー」といったSUV、「クラウン」シリーズ(「クラウン スポーツ」や「クラウン エステート」)、さらには大型ミニバンの「アルファード」と「ヴェルファイア」にも設定するなど拡大中だ。

この勢いはすごいし、国内展開しているトヨタのBEVが「bZ4X」だけしかないのと比べても、厚遇されているといっていい。加えてマツダには「CX-60」や「CX-80」のほか「MX-30ロータリーEV」だってある。

ユーザー側のメリットとしては、BEVのような静粛性や滑らかさを味わえる一方で、BEVと違って充電や航続距離の心配がないのは大きい。BEVの世界に飛び込むのには不安な人もたくさんいるだろうけれど、PHEVなら入っていきやすいのだ。

もちろんデメリットもあって、それは車両価格の高さ。PHEV購入者に対する補助金はあるけれど、それを含めて考えても普通のハイブリッド車よりは高いのが一般的だ(独自の補助金がある東京都民がプリウスPHEVを買うと普通のプリウスを買うよりも安いという例もあるがそれは例外中の例外)。

「外部充電してできるだけエンジンを動かさず走り、浮いたガソリン代で普通のハイブリッド車との価格差を取り戻そう」なんていう策略は、正直なところけっこう厳しいと言わざるを得ない。残念だけれど。

とはいえ、選択肢が多いことは喜ぶべきこと。ガソリン車やディーゼル車が好きな人はそれを買えばいいし、ハイブリッドという選択もあり。BEVが好きな人はそれでいい。それらと並ぶひとつの選択肢としてのPHEVというわけだ。

「トヨタ・プリウス」のプラグインハイブリッドモデルは、単に給電機能を持つだけでなく、ハイブリッドモデルよりも優れた動力性能を発揮できるプリウスのハイパフォーマンスモデルと位置づけられている。システム最高出力は223PSで、0-100km/h加速6.7秒をほこる。
「トヨタ・プリウス」のプラグインハイブリッドモデルは、単に給電機能を持つだけでなく、ハイブリッドモデルよりも優れた動力性能を発揮できるプリウスのハイパフォーマンスモデルと位置づけられている。システム最高出力は223PSで、0-100km/h加速6.7秒をほこる。拡大
パワートレインの種類が豊富な「マツダCX-80」ではPHEVも選べる。ただし、それらの価格帯は639万1000円から712万2500円までと、CX-80のなかでも、また国産車としてもかなり高額だ。
 
パワートレインの種類が豊富な「マツダCX-80」ではPHEVも選べる。ただし、それらの価格帯は639万1000円から712万2500円までと、CX-80のなかでも、また国産車としてもかなり高額だ。
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2023年に登場した「マツダMX-30ロータリーEV」は、排気量830ccのロータリーエンジンに高出力モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせる、独自のシリーズ式プラグインハイブリッドシステムを搭載。しかもドアが観音開きという、かなり個性的な一台である。
2023年に登場した「マツダMX-30ロータリーEV」は、排気量830ccのロータリーエンジンに高出力モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせる、独自のシリーズ式プラグインハイブリッドシステムを搭載。しかもドアが観音開きという、かなり個性的な一台である。拡大

ただのハイブリッドとは走りも違う

PHEVの価格が普通のハイブリッド車に比べて高いといっても、その静粛性や滑らかさという価値にエキストラフィーを払うと考えれば、そこに納得できる人もいるに違いない。かつて「追加料金を払って高出力エンジン搭載車やスポーツグレードを買う」という行為がクルマ好きの間では普通だった時代もあった。「日産シルビア」なら「Q's」ではなくターボ付きの「K's」なんて具合で。PHEVに関しては、“追加料金で得られるもの”が、エンジンを止めたまま長く走れるクルマだからこそ得られる“快適性や加速の心地よさ”に移ったと考えれば納得しやすい。

プリウスやクラウンシリーズのPHEVに乗ると、加速の爽快感は普通のハイブリッドとは格段に違う。加えてエンジンが回り始めても通常のハイブリッドの同じ加速に比べてエンジン回転数が低く保たれるなどメリットはしっかり享受できる。もちろん、充電を活用したうえでの日常の行動範囲内ならガソリンを減らさずに走れるのも美点だ。

PHEVのメリットを最大限に生かすなら家庭での充電が望ましく、それができるならとてもいい選択肢だと思う(外部充電しなくても普通に乗れるが)。

というわけで、昨今PHEVが増えているのはどうしてか? 世界で最もPHEVが売れる中国でいえば「BEVじゃないけれど、同様に優遇のメリットを最大限に受けられる存在だから」となるし、日本でいえば「BEVの購入まで決断できないけれど、不安なくBEVに近い感覚を味わえる快適で先進的な車両」というのがユーザー側としての選択理由となるだろう。

メーカーとしては「そこに買ってくれる人がいるから用意する」と同時に、特に日本では「電動化戦略を踏まえた、BEVへの過渡期として適切な存在」というのが展開の理由といえる。個人的には、プリウスやクラウン、アルファード/ヴェルファイアあたりの滑らかさに感動するいっぽうで、ロータリーEVなんて最高にファンキーでいいと思ったりして。

(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、マツダ、アウディ、webCG/編集=関 顕也)
 

「トヨタ・クラウン」4兄弟の最後として登場した「クラウン エステート」は、ハイブリッド車とPHEVの2本立て。後者はWLTCモードで89kmのEV走行が可能で、システム最高出力306PSを発生する。
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V8エンジンにモーターを組み合わせる、ランボルギーニのプラグインハイブリッドスーパースポーツ「テメラリオ」。今やランボルギーニ以外にも、フェラーリやマクラーレン、ベントレーなど、そうそうたるハイパフォーマンスカーブランドがPHEVを送り出している。
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工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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