ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ新型CX-5に関する疑問をぶつける!
ああ、本当に出ちゃいましたね、新型「マツダCX-5」。一時はマツダの世界販売の3分の1、売り上げの半分を占める“大黒柱”で、CX-5コケたらみなコケる!? といった失敗できない四番バッターでしたが、現行2代目になってモデルチェンジの話が絶えてはや数年。もしや3代目CX-5はなくなるのか? 説すらありました。
なぜなら3年前に出たCX-60ほかの新世代ラージ商品群が事実上の後継車になる可能性があったから。CX-60は骨格がFRプラットフォームになり、全長4.7m台とバカデカくなりましたけど、大人5人が前後に乗れる居住スペースや500リッタークラスのラゲッジ容量はほぼ同じ。
高級FRにスイッチはしたけれど代替になるとなればCX-5は要らないのでは? と。なにより存在価値的に“かぶる”でしょう?
そしたら今春ついに3代目が発表されてリーク情報では広さはCX-60を超える!? とか質感もいいとか、コスパじゃ当然CX-60より上? などいろんな下克上疑惑であり問題が!!
果たしてジャパンモビリティショー2025で実車が公開された新型CX-5の立ち位置はどうなるのか? 兄貴分とのかぶり? ディーゼルなくなる問題? 1年置いて出るとうわさの理想の新作ハイブリッド「eスカイアクティブZ」はどうなる? 湧き出る疑問を担当エンジニアに容赦なく聞いてきましたっ!
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ホントにディーゼルなくすんですか?
小沢:まず開発主査の山口浩一郎さんに聞きづらいところから聞いていこうと思いますが、CX-5ってマツダの屋台骨ですよね? いろんな意味で失敗はできないと思うんですけど、今回は欧州仕様とはいえ、ディーゼルがないじゃないですか。ってことは日本仕様のCX-5もまたディーゼル廃止ですか?
山口:はい。今回はディーゼルを廃止し、eスカイアクティブZ+電動駆動(電駆)サポートで同じ価値をどうにか提供できないかと四苦八苦しながら開発しています。2027年以降に遅れて導入しますが、そちらでディーゼルのお客さまに訴求したいと。
小沢:eスカイアクティブZって、カンタンに言っちゃうとどんなパワートレインなんですか?
山口:ディーゼルの進化のなかで培ったいろんな技術を含めて燃焼技術を進化させていますし、ガソリンの進化を取り入れてスーパーリーンバーンや排気量のライトサイジング、あるいはSPCCI燃焼、これらを燃焼の理想として追求したうえで電駆技術でサポートしています。ディーゼルがお好きな方には豊かなトルクを、ガソリンがお好きな方には伸びのよさをと、それぞれを兼ね備えたエンジンです。
小沢:つまり「Z」=「ディーゼルとガソリンのいいとこどり」ということ?
山口:おっしゃるとおり(笑)。
小沢:ただマツダといえばやはりディーゼルのイメージであり、トヨタでいうところのハイブリッドみたいなものなわけで、なくなるのは正直惜しいと思ってるんです。ぶっちゃけ排ガスが厳しいんですか? 特にディーゼルだと欧州の厳しいユーロ7規制がクリアできない?
山口:「ユーロ7以降」ですね。それから世界をみるとディーゼルの需要は減退傾向です。日本ではご好評ですけど、ヨーロッパではいろんな事情があり、シュリンクしている事実がございます。そのなかで、マツダの規模でどこに次世代エンジン技術を集中させるか、といろいろ議論した結果eスカイアクティブZを開発するということになりました。
小沢:やはりZしかないと?
山口:ただし、われわれにはもう一つの武器があって、新しい直6ディーゼルです。6発のほうはちゃんと進化させていくと。
小沢:このマツダの内燃機関の進化表によると、左からはガソリンが進化、右からはディーゼルが進化し、両方の終着駅が中央のスカイアクティブZになっている。要するにマツダさん的にはもうディーゼルもガソリンもない……みたいな。
山口:おっしゃるとおり(笑)。
単純に……CX-60とかぶりませんか?
小沢:もう一つ聞きにくいことですが新型CX-5、かなりデカくなりましたよね。ボディーはもちろん室内は特に広くなってて、実際リアシートは兄貴分のCX-60より広いと思うんです。現行CX-5の時点でほぼCX-60と同じだったんで。
山口:はいはい。
小沢:つまり新型CX-5は広さではCX-60を超えてしまう。堂々したスタイルやFRの走りはいいけど、逆転される。この下克上ってお客さん的にはすごく悩んじゃうと思うんです。
山口:そこもちゃんと狙いとして考えていて、確かに新型CX-5の全長はCX-60より50mmほど短いです。それでいてリア席の膝前は逆に50mmほど広い。ですがその寸法を何に使っているかというと、直6・FRのためなんです。つまりそこに金額や価値を感じていただける方にはCX-60をお求めいただき、スペースユーティリティーや使い勝手を重視される方にはCX-5をお求めいただくと。
小沢:よりスタイルや走りのよさを求める方にはCX-60、よりスペース効率を求める方にはCX-5。そういう二者択一という意味では現行とまったく変わらないと。
山口:おっしゃるとおりです。
小沢:とはいえすべてにベストを求める、「マツダのSUVで一番いいの持ってこい」みたいな方は悩んじゃうかなと(笑)。
山口:そこはお客さんの好みと意思で選んでいただければと思います。
小沢:具体的に新型のリアシートの広さはすごいみたいで。膝前でほぼ6cm以上延びて。
山口:64mmです。一方ラゲッジも45mm延びた。
小沢:つまり全長115mmの延長分はほぼきっちりリアシートとラゲッジに使った。
山口:逆に言いますと、マツダはすでにドライビングポジションをきっちりとっていますから、これ以上広げる必要がないんですよ。素直にユーティリティーを重視したらそうなった。
小沢:とはいえ全長に関していうと、現行CX-5は4.5m台で競合の「RAV4」や「フォレスター」より短く便利だった。そのあたりの扱いやすさは狭い日本ではアドバンテージだったのが、ほぼ4.7mになって失ってしまった。そこはいいんですか?
山口:非常に悩んだポイントで、2代目に進化したときも「車庫に入らない」みたいなことをおっしゃるお客さんはおられました。そのうえで、今回は日々の使い勝手に絞って初代への原点回帰も含め、パッケージは誰にも負けない、SUVの王道を極めようと決めました。
また国内のお客さまでも実は「CX-8」を買われて、3列目は使わないけど「あの広さが欲しい」という方が結構いらっしゃいます。また競合車も大きくなったなか、CX-5の各種調査で「なぜ購入されなかったか」と聞くと「広さが起因で断念した」という声が倍増しています。
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6段ATでホントにイイんですか?
小沢:え? 現行型では狭い? 具体的にどこが?
山口:後席ですね。主にグローバルの話ですけど、ま、そういったことを勘案したうえで次世代SUVとしてパッケージを訴求したのが3代目です。
小沢:また細かいとこですけど、ギアボックスは6段ATですよね? 進化してるのかもしれないけど、よそはもっと多段化しているし、CX-60では8段のトルコンレスATを使っているし、あれはあれで大変そうでしたが今回は6段のままでいいんですか?
山口:今のところこれもご好評を頂いていて、むやみに多段化することより突き詰めて使う、手の内化して使う、そこに注力しました。もともとロックアップは速いですし、フィーリングはCVTとは全然違いますから。
そのうえでeスカイアクティブZは、電駆とのコンビネーションになりますから、すぐに多段化が……というのはまだないかと。いろいろ検討している要素で急に多段化に走ることはないかなと思います。
小沢:いたずらに目新しさやハイテクを追っているわけではないと。そういう意味では価格には期待で、CX-5っていうと、内外装のクオリティーが非常に高く、それでいて価格は非常に安くて、もう200万円台から買えるみたいなところがあった。それでいて今やこのミディアムSUVクラスってスバルのフォレスターが全車400万円超えですよ! しかも今後出てくるトヨタRAV4は全車ハイブリッドになるので、絶対価格は上がるだろうといわれてる(注:2025年12月17日に発売されて450万円~)。ここでやっぱりCX-5のコスパのよさっていうのは失ってほしくないんですけど(笑)。
山口:そこは私、主査としても一大課題でして、いろんな方面で検討しながら……(苦笑)。
ってなわけで新型CX-5ゼンブ聞く! ですがまだまだ続きそうなので次回はさらにデザインと賛否両論のメカスイッチ排除の大画面新インフォテインメントなどについて突っ込ませていただきたいと思いますっ!!
(文=小沢コージ/写真=マツダ、小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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