第118回:デザイン目線で大総括! 2026年上半期のニューモデル ―「マツダCX-5」「ホンダ・スーパーONE」編―
2026.07.01 カーデザイン曼荼羅 拡大 |
例年同様、さまざまなニューモデルが登場した2026年の上半期。クルマ好きの注目を集めた新型車の数々を、カーデザインの視点で振り返ってみよう。まずは、一見キープコンセプトに見える新型「マツダCX-5」と、古くて新しい「ホンダ・スーパーONE」から!
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いろいろ苦労があったようで……
webCGほった(以下、ほった):2026年もちょうど半分過ぎたことですし、今回は、この上半期の主なニューモデルについて語り合ってみましょう。
清水草一(以下、清水):要はネタがないってことね(笑)。
ほった:いやぁ。話題の車種はあるんですが、もう結構、青田買いしちゃっているんですよねぇ。マツダCX-5(その1、その2)とか、「トヨタRAV4」(その1、その2)とか……。
渕野健太郎(以下、渕野):この上半期の主なニューモデルというと、そのCX-5とRAV4に、ホンダ・スーパーONEや「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」「日産リーフ」……。あとは「ホンダCR-V」というところでしょうか?
ほった:そのぐらいじゃないですか。カー・オブ・ザ・イヤーとかじゃないんで、厳密に2026年発売! 納車開始! とかじゃなくて大丈夫です。
渕野:そうですか。早速ですが、皆さんマツダCX-5はもうご覧になりました?
ほった:カッコよかったです。カッコよかったですけど、なんか当たり障りのないデザインだなってのも、率直な感想でした。
清水:そうは言うけど、デザインレベルは相当高いよね。
ほった:開発関係者にお話をうかがうと、あれも結構苦労があったみたいです。フロントウィンドウの付け根あたりとか、ちょっと冗長になっちゃっていたり、普通ではあまりやらない勘合(かんごう)の仕方にせざるを得なかったりしたそうで。フロントドアの下のほうにも謎のプレスラインが付いていますけど、これも「ここから前がフロントセクションですよ~」って錯覚させるための細工なのだとか。先代CX-5をベースに、キャビンを前後に引き伸ばしたクルマだから、なるたけダックスフンドみたいに見えないよう、気を使って仕上げたそうです。
渕野:具体的にどこを指しているのか分かりかねますが、Aピラーの付け根あたりはいつも悩む部分ですね。フロントドアの斜めのプレスラインに関しては、理屈は分かります。分かるんですが、これまでの「魂動デザイン」を考えると、少し説明的な感じもします。
清水:いやー、何言ってんのかまったく分かんない(笑)。
これでいい、これがいい
渕野:先代CX-5と比べると、リアゲートをちょっと立たせて、ルーフラインは後席の居住空間を意識して、後ろのほうをふくらませたのが分かります。サイドガラスのグラフィックからも、結構リアの居住性、乗降性を重視しているのが感じられる。このへんは、ライバルを見ながら商品開発をしているのでしょう。今ではもう、このクラスのSUVって主流中の主流で、どれも使いやすいクルマになってますからね。
ただ自分なんかは、魂動デザインに対しての期待値が高いから、もうちょっとデザイン面でのキレも求めてしまうんです。
清水:デザインの面でも、キャビン後部のボリューム感が増したのは、いい意味での違和感になっていると思いますよ。 バランスが取れすぎてない感じで。
渕野:そうですね。むしろそれはいいんじゃないですか。SUVとしてしっかり見えるし。
清水:リアゲートの逆スラントも印象的だし、カッコいい。
渕野:そうそう。後ろ、かっこいいですよね。量産車のパッケージで、これだけ逆スラントにするのは珍しい。スポーティーでいいかなって思います。
清水:道を走っててこのクルマの後ろについたら、「おっ」ってなると思いますよ。
渕野:SUVの顧客は機能性が第一ですけど、デザイン性もかなり重視されていると思います。ミニバンよりSUVが欲しいって時点で、カッコよさを重視してるわけですから。先代CX-5は、デザイン面が好評だったのに対して、ライバルと比べて機能性が若干ネガだったのでしょう。そこを払しょくしたのが新型ということなんじゃないかな。
清水:だからデザイン的には、あんまりとんがって見えない。
渕野:でも、そのイメージの方向性は、デザインコンシャスだった従来型から変わっていないわけです。とてもまっとうな商品開発だと思います。自分なんかはマツダにとがったデザインを求めてしまうけど、一般のお客さまには、これで全然オッケーでしょう。
清水:そうですよね。これをダメと言われたら、マツダも立つ瀬がない。
ほった:ワタシも目がすれてしまっていたということですね。うーん反省。
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在りし日の傑作の影がチラつく
ほった:ほいじゃ次いきます。(パソコンをポチポチしつつ……)次は、ホンダ・スーパーONEについて! 軽規格の電気自動車(EV)をベースにした、コンパクトEVですな。
渕野:私は、「N-ONE e:」やスーパーONEの元になった「N-ONE」のデザインが、すごく好きなんですよ。軽自動車のなかで一番質感が高いし、プロポーションもとてもよくできている。スーパーONEはそれをベースにしているわけですけど、最初からこの全幅でデザインしていたら、室内空間をもっと広げる方向にいって、こんなに張り出したオーバーフェンダーにはならなかったでしょう。軽をベースにフェンダーを拡幅したからこうなったわけで、そのシンプルさがすごくいい。
ほった:「スズキ・ジムニー」と「ジムニー シエラ」もそうですよね。最初っから小型車枠でつくっていたらこうはならない、奇跡の造形美です。N-ONE e:も、このくらいの質感を狙ってデザインすればよかったのかなぁ。
清水:もっとやんちゃなクルマにってこと?
ほった:もっと乗用車っぽくってことです。ワタシとしては、あの素っ気なさも好きなんですけどね。
渕野:N-ONE e:はエンジン車のN-ONEに対して、フロントセクションがかなり変わっていますよね。スラントしていたノーズを立てたりして。多分、充電口の関係だと思いますけど。
清水:あれでだいぶ魅力が削(そ)がれました。商用車みたいになっちゃった。
渕野:リアゲートのパネルも変わっています。ライセンスプレートの部分が専用品ですよね。それは多分、スーパーONEのために変えたんじゃないかなと思うんですが。
清水:はー、なるほど。
ほった:ただですね、このクルマ、いいにはいいんですけど……どうしても今はなき「ホンダe」の姿がチラついちゃうんですよね。単品で見たらいいんですが、あれと比べてどうかというと……。
清水:そうよ、デザイン的にはすごい傑作だったじゃない! ホンダeは。
ほった:ホンダがこのセグメントのEVを出すたびに、私たちは夭折(ようせつ)したアイドルのようにホンダeを思い出すのでしょうね(泣)。
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ちょっと狙いが古すぎやしないか?
渕野:スーパーONEの話に戻ると、このクルマはもうちょっとスポーティーにもできたと思うんですよ。例えばフロントバンパーの形状を見ると、結構さっぱりしてるでしょう。もっとアグレッシブにもできたはずだけど、割とクールな感じを狙っている。それもいいんですよね。
清水:いやー、私にはあんまりクールに見えないな。こういうオバフェンで、「走りの楽しさを予感させる」みたいなコンセプトって古すぎないかな? イメージカラーも紫でしょ。あまりにも昔ながらの走り屋っぽすぎる!
ほった:紫って走り屋のイメージですかね? “ブルドッグ”こと「シティ ターボII」の訴求カラーは白に赤いロゴで全然違ったし。スーパーONEはあんまりそっちのほうには寄せすぎずに、一歩手前のところで抑えていると思うんだけど。
渕野:スーパーONEはボディーカラーが白だったら、かなり普通のクルマに見えますよ。ちょっと物足りないぐらい。
ほった:ブルドッグに比べると、だいぶナンパというかシティーボーイですよね。商品イメージ的にも、いすゞじゃないけど「街の遊撃手」ってところを狙っている感じで、デザインやボディーカラーの設定もそれにマッチしていると思います。
渕野:そう。その感じがカッコいい。
清水:そうかなぁ……。それにしても、補助金の差のせいで、N-ONE e:はまったく売れなくなったよね。
ほった:自分んとこのクルマに、自分で引導を渡した格好ですね。
清水:ホンダのせいじゃないけどね(笑)。
(後編へ続く)
(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=いすゞ自動車、本田技研工業、マツダ/編集=堀田剛資)
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渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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