ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.04.20 デイリーコラム世代を問わず、洋の東西を問わず、さまざまなクルマが集った「オートモビル カウンシル2026」。その会場で、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長にインタビューする機会を得た。アジアマーケットにも深い知見を持つ彼の目に、日本のファンは、わが国のマーケットはどのように映るのか。難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方をどう考えているのか。気になるニューモデルの情報とともに、日本での新しいリーダーに話を聞いた。
世界的にも希少なほどの“クルマ愛”
――本日はよろしくお願いします。まず、今回の「オートモビル カウンシル」をご覧になっての印象をお聞かせください。新旧問わず、ポルシェもたくさん展示されていますし、ファンの方も多く詰めかけていると思いますが。
イモー・ブッシュマン社長(以下、ブッシュマン):ポルシェ以外にも素晴らしいクルマがたくさんあり、そのクオリティーの高さに驚きました。先日も東京で200台ものビンテージ・ポルシェが集まるイベントがあったばかりですが、ここでも多種多様なクルマを目にし、日本人の“クルマ愛”には並外れたものがあるなと再確認しました。
――ビンテージ・ポルシェのイベントというと、旧KK線で行われた「LUFT TOKYO」ですね。日本でも、やはりポルシェは特別な存在です。ファン以外の人からも、クルマ好きの間では一目置かれるというか。
ブッシュマン:私たちも、日本でこれだけの支持をいただいていることを非常にうれしく思っています。これは決して軽いことではなく、いかに大切で価値のあることかを常に考え、認識しています。
――ポルシェジャパンの代表に就任されて、9カ月ほどになるかと思います。この国のファンやマーケットの傾向について、他国やグローバルと比較して、どのような特色や違いを感じていますか?
ブッシュマン:大きく違う点としては、国としての「自動車文化」が非常に強固で成熟していることです。他の市場も見てきましたが、特に東アジアの地域において、ここまでビンテージカーを愛する人々がいる国は、日本以外にないのではないでしょうか。また日本の皆さんは、クルマの性能やスポーティーさを深く理解し、私たちのブランドも「スポーツカー=ポルシェ」という価値をもって愛してくださっています。街なかで目にするクルマの質の高さ、密度の濃さなどは、ドイツ以上に素晴らしいと感じますよ。
――ありがとうございます。逆に、日本特有のポルシェのイメージや人の気質から、「やりづらいな」と思うようなことはありませんか?
ブッシュマン:ポルシェはブランド力が極めて強固なため、どこにいても経営の軸がぶれることはありません。非常に落ち着いて経営に専念できています。また人の気質を見ても、日本とドイツは非常に似通っています。勤勉さ、細かいディテールへのこだわり、クオリティーの重視、時間厳守といった点において共通点が多く、非常に働きやすいと感じています。
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歴代最強のパフォーマンスを誇る「カイエン エレクトリック」
――ここからは日本に導入される予定の、特に期待してほしいモデルについて教えてください。
ブッシュマン:2026年の中核となるローンチは、やはり「カイエン エレクトリック」(その1、その2)になります。これは私たちの電動化戦略における大きなマイルストーン(標石)です。このクルマを通じて、「パフォーマンスSUV」がなにを実現できるのかを、再定義したいと考えています。
――昨年11月に受注が開始されたモデルですね。
ブッシュマン:システム出力は、これまでに市販されたポルシェで最大となる、1156PS(850kW)を誇ります(「カイエン ターボ エレクトリック」の数値)。圧倒的なパワーを持ちつつも、日々の運転は非常に快適で、操作性も優れています。インテリアの次元も一段上がっていますので、日本の皆さまにも楽しんでいただけるはずです。
――あくまで報道資料などを見ての印象なのですが、最新の電気自動車(BEV)としては、このクルマは“電動車ならではの価値”のアピールが控えめですよね。高性能BEVとしてというよりは、「エンジン車を含めた、パフォーマンスSUVというジャンル全体において新しいベンチマークを立てる」「ひとつのパフォーマンスSUVとして勝負していく」という印象を受けました。
ブッシュマン:そのとおりです。私たちは常に参入しているセグメントにおいて、最もスポーティーなクルマを出すことを追求しています。そのうえで内燃機関モデル、プラグインハイブリッド車(PHEV)、そしてBEVと、豊富な選択肢をお客さまに提供することが重要だと考えています 。今回の新型カイエンも、あくまで本質はパフォーマンスSUVであるという点が最大の売りです。マカンのBEV化に続き、カイエンがBEV化するのはロジカルな流れといえます。
――私的な話で恐縮ですが、カイエンというと過去の特別仕様車「トランスシベリア」が大好きでした(笑)。あれはトランスシベリア・ラリーの3連覇を記念したモデルでしたよね。カイエンはこの手のパフォーマンスSUVとしては珍しく、アドベンチャー性も訴求したモデルという印象があります。いっぽうBEV化に関しては、車重が重くなることで悪路でのパフォーマンスを懸念する声もあるかと思います。その点はいかがでしょう?
ブッシュマン:オフロード性能にも100%の自信を持っています。日本のお客さまが、そこまで過酷な環境に行くとは想定していませんが(笑)、未舗装路での運転も十分に楽しんでいただけると確信しています。
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今も昔も変わらないポルシェの核心
――本日の会場には「911ターボS」も出展されていますね。これが日本初公開で、あのクルマも船で到着したばかりと聞きました。
ブッシュマン:911シリーズのトップレンジであるターボSは、スポーツカーの頂点でありながら、日常使いができるという極めて高いバランスを体現しています。0-100km/h加速は2.5秒という圧倒的性能を持ちながら、日常のドライブにも適している。自信を持っておすすめできる一台です。日本の皆さんは、世界的に見ても特に911を好んでくださる傾向があり、こうした熱心なファンには感謝しかありません。
――とんでもない高性能ですよね(笑)。私のような者にも、運転を楽しめるものなのでしょうか?
ブッシュマン:911のパフォーマンスを安心して楽しみたいというのでしたら、「ポルシェ・エクスペリエンスセンター(PEC)東京」に行かれるのを強くおすすめします。実は私の妻も、911のようなクルマを運転することに不安を感じていましたが、着任時にPECのプログラムを受講して、安心して運転できるようになりました。リスペクトを持って接してくださる方にこそ、プログラムを通じてより深くポルシェを理解していただきたいです。
――実車のパフォーマンスを『webCG』で紹介できるのを、楽しみにしています。
ただ、最近ではこうしたハイパフォーマンスカーのオーナーの間で、クルマの性能が上がりすぎて「運転を楽しめない」「他車との違いがわからない」という、いわゆる“パフォーマンス疲れ”の声も聞かれます。ポルシェは比較的バランスがとれている印象なのですが……。
クルマの進化は今後もとどまることはないのでしょうが、そのなかにあって、スポーツカーとして忘れてはいけない核心や、ポルシェのスポーツカーとして外せない要素はどこにあるとお考えですか?
ブッシュマン:ポルシェの最大の強みは「エブリデー・ドライビング」です。日々の生活のなかで普通に使える実用性を持ちながら、ひとたびアクセルを踏めば、ほかのスポーツカーとは明確に違う走りを体現できる。高速道路で制限速度を守って走っていても、あるいはサーキットで限界を攻めても、常にその違いを感じられることが、私たちが選ばれる理由だと考えています。
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BEVでもエンジン車でも
――もうひとつ。ポルシェは2025年時点で販売の約36%を電動化するなど、グローバルではBEVシフトを推進していますよね。いっぽう、日本ではまだBEVの販売は低調で、ユーザーのなかにはBEVに抵抗感を持つ方も少なくないように思われます。日本に赴任して、そのあたりを実感することはありましたか?
ブッシュマン:拒絶というほどの強い反応は感じていませんが、現時点で選ばない理由は人それぞれあると思います。先ほども申しましたとおり、私たちの戦略は、セグメントごとに最良のクルマを提供すること、豊富な選択肢を用意し続けることです。BEVを求める方には最高のBEVを、内燃機関やハイブリッドを求める方にはそれらを、というかたちで提供し続けていきます。
――ちなみに、社長は日本では普段、なにに乗られているのですか?
ブッシュマン:「タイカン ターボ」です。
――BEVで、かつバリバリのハイパフォーマンスモデルですね(笑)。
ブッシュマン:シティードライブもハイウェイでのクルーズもすごく快適で、とても気に入っています。娘が乗馬をしているので、毎週末、御殿場方面へドライブに行くのですよ。ワインディングロードが美しくて、そこまでの道のりは本当に素晴らしいです。
――まさに「エブリデー・ドライビング」ですね。日本にもたくさん素晴らしいドライビングコースがあるので、ぜひ楽しんでください。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=ポルシェジャパン、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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