ポルシェ911ターボS(4WD/8AT)
フラッグシップの威風 2026.09.29 試乗記 「ポルシェ911」シリーズのなかでも最上位に位置するモデル「ターボS」。ポルシェ独自のハイブリッドと2基の電動ターボチャージャーを得た最新モデルは、どのような走りを備えているのか? 最高出力711PSのハイパフォーマンスモデルの実力に触れた。ポルシェ911史上最強
2018年に登場した992型のポルシェ911も、ついにイグニッションスイッチがプッシュボタン式となった(!)2024年発表のモデルをもって後期型に移行。今や数多のバリエーションを用意するこのシリーズだが、準レーシングユニットとも言うべき心臓を搭載する「GT3」系を除けば、“全車ターボ付き”となって久しいことも先刻ご存じのとおりの事柄だ。
そうしたなかにあって、ポルシェがその名に特別なリスペクトを抱き、電気自動車にまでシリーズの最上位モデルであることを意味する記号として「ターボ」の呼称を用いていることも、最近ではよく知られている。
ここに紹介するのは、992の後期型として初めてターボの名を冠する911。クーペとカブリオレの両ボディーに設定される点はさておき、これまでのポルシェの流儀からは外れ、さらなるハイパフォーマンスバージョンであることを示す「S」の記号を加えた仕様からローンチされた点にも興味をそそられる。
まず注目の心臓部は、前期型から全面的に換装。3745ccだった排気量は3591ccへとダウンサイズされ、その最高出力は640PSに。ん!? 前期型は650PSだったので、これでは性能ダウンではないか。……とがく然とするのは早とちりというもの。そう、最新の911ターボSに搭載された心臓は8段DCT(PDK)とターボチャージャーの双方に電動モーターを内蔵する電動化ユニットだ。ポルシェが「T-ハイブリッド」と呼ぶこのハイブリッドシステムの採用は、2024年に発表された「GTS」に次ぐ。
かくしてトランスミッション内蔵の駆動用モーターと合わせたシステム最高出力/システム最大トルクは、それぞれ711PSと800N・mというデータ。前者は市販型の911では史上最高値で、前期型と変わらぬ値のトルクも、より幅広い回転数で発生することが示されている。
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T-ハイブリッドはアシにも利く
基本構造が同じ3.6リッターのユニットを用い、ギアレシオまでもが同一のトランスミッションを組み合わせるなど、メカニズム上はGTSとの血縁関係が色濃く見えるターボS。だが、そこに決定的な違いをもたらしているのが、排ガスエネルギーの高まりを待つことなく即座にブースト圧を上げられる電動式のターボチャージャーを、GTSの1基に対して2基備えていることだ。
これによって、排気量1リッターあたりのエンジン単体出力は、GTSの135PSから178PSへと大きく引き上げられ、システム出力もGTSの541PSからおよそ1.3倍に。その711PSという値は前期型ターボSの650PSを61PSしのぐもので、0-100km/h加速も2.5秒と、すでに驚愕のタイムであった前期型の2.7秒をさらに上回っている。
加えてこのターボSならではの見どころは、T-ハイブリッドの400Vという高電圧を活用した足まわりの制御にもある。標準で採用される「ehPDCC」という名のシステムは、電動油圧ポンプやアキュムレーター、アクチュエーターなどを用いてスタビライザーのねじり力を瞬時にコントロールし、走行の俊敏性や安定性を向上させるという、既存の「PDCC」の能力を超越したアイテム。同時に、やはり高電圧電装系の恩恵を受けて、フロントアクスルのリフトシステムの動作も大幅に高速化されている点も見逃せない。
期待を高めるオプションの数々
そんなターボSを目前にすると、一見で「カレラ」系とは別ものの強いオーラに圧倒される。
今回のテスト車が、もともと低いノーマル比でさらに10mmローダウンされた「PASMスポーツサスペンション」を装着していたことも、いくらかは関係していたかもしれない。けれども、カレラ系よりワイド化されたボディーや、リアのフェンダー前部に大きく口を開けたインテーク、専用の前後バンパーやウイングをインテグレートさせたリアスポイラーなどの独自のデザインが、すごみを増して感じさせたことは確実だ。加えて、ポルシェがターボ系のグレードに限って展開する「ターボナイト」と称される渋いグレー色のポルシェクレストやエンブレム、センターロック式のホイールなども、それに奏功している。
これはインテリアでも同様で、センターパッドに埋め込まれたクレストや、センターコンソールのモールディングなどのほか、シートベルトまでもが“ターボナイト化”されて上質さのなかに迫力を演出。ちなみに、本来はクーペが2シーター、カブリオレが4シーターとなるターボSだが、テスト車のクーペには、追加料金なしのオプションとして用意されるリアシートが装備されていた。
これらのほかにもテスト車は、ブラック(ハイグロス)塗装のフロントスポイラーセンターケーシングや自動展開式リアウイング一体の固定式スポイラーなどから成る「911Turbo SportDesignパッケージ」、オーバル形状のチタン製スポーツテールパイプ、カーボン製のワイパーアームやサンルーフ等々と、500万円を軽くオーバーするさまざまなオプションアイテムを装着。これらもまた、そもそも“911ピラミッド”の頂点に立つこのモデルに、さらなる雲上感を加える役を担っていたことは言うまでもない。
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加速にみる強烈なパンチと柔軟な応答性
そんなターボSで冷間スタートを切ると、しばらくは1000rpmプラスで回るファストアイドル状態のままに、あたかもシリーズハイブリッド車のような感覚でアクセル操作に応じて速度が上下する。構造上、EV走行やシリーズハイブリッド走行はできないT-ハイブリッドのモデルなので驚かされたが、まずはモーターの駆動力とPDKの緻密な制御で車速を制御しつつ、エンジンの暖機を促すようだ。
軽量化に腐心する一方で、重量増に勝るメリットを得られるとなれば装備の追加をためらわないのが、すべてのポルシェ車に共通する特徴。特に911ターボSは、T-ハイブリッドに四輪駆動、リアアクスルステアリングにアクティブスタビライザー、フロントリフトシステムにアクティブエアロダイナミクス等々を標準で装備する。その車重は前期型比で85kg増の1760kgと、もはや軽いとは言えない域に達しているが、このモデルはテクノロジーショーケースとしての役割も担う存在でもあるだけに、それもやむを得ないと思えるところではある。
実際、蹴り出しの瞬間の感触は、モーターのアシストを受けてはいても正直、軽快とは言い難い。もちろん、その動きがことさら鈍いというまでではないものの、911シリーズのなかにあって、最も重厚さが強い感覚を受けたことは事実である。
一方で、ターボ車ならではのパンチ力を即座に味わえる加速感は素晴らしいのひと言。その応答性はターボラグを過去に押しやるもので、例えば4速・2000rpm=60km/hからアクセルペダルを踏み込んでも、間髪入れずにターボブーストに乗った加速を味わえるあたりは、まさにT-ハイブリッドの威力まざまざという印象だ。これが2速、3速からのフルアクセルともなると、保舵力が抜けて感じられるすさまじい加速を披露する。こうしたあたりは、同じT-ハイブリッド搭載モデルでもGTSとは一線を画す、空恐ろしいほどの感覚だ。
それほどの動力性能を、今回も確実に、そして高い安心感で御する足まわりにも感心するばかりだったが、さらなる強化型のスプリングやダンパー、スタビライザーを備え、10mmのローダウンを果たすPASMスポーツサスペンションがもたらす乗り味は、ドライブモードのポジションを問わず、なかなかにスパルタン。ここばかりは、標準仕様のPASMで食してみたいとも思えた今回のターボSであった。
(文=河村康彦/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ポルシェジャパン)
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テスト車のデータ
ポルシェ911ターボS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4555×1900×1305mm
ホイールベース:2450mm
車重:1760kg(空車重量)
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:640PS(471kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:760N・m(77.5kgf・m)/2750-5000rpm
モーター最高出力:82PS(60kW)
モーター最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)
システム最高出力:711PS(523kW)
システム最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y XL/(後ろ)325/30ZR21 108Y XL(ピレリPゼロR)
燃費:11.8-11.6リッター/100km(約8.5-8.6km/リッター、WLTPモード)
価格:3635万円/テスト車=4149万3000円
オプション装備:ボディーカラー<バナジウムグレーメタリック>(0円)/クラブレザーインテリア<バサルトブラック、ターボナイトステッチ付き>(25万4000円)/スポーツテールパイプ<チタン>(16万1000円)/PASMスポーツサスペンション<-10mm>(22万3000円)/イオナイザー(4万3000円)/Exclusive Designフューエルキャップ(0円)/電動サンルーフ<チルト/スライド式>(26万2000円)/ルーフトランスポートシステム準備<ルーフキャリア固定ポイント>(9000円)/リアシート(0円)/シートベンチレーション<フロント>(15万9000円)/プライバシーガラス(8万2000円)/ダッシュボードおよびドアトリムパッケージ<レザー>(35万5000円)/サンバイザー<レザー>(6万2000円)/センターコンソールコンパートメントリッド ポルシェクレスト エンボス加工(3万6000円)/PDKセレクターレバー<アルミニウム>(9万1000円)/Porsche Designサブセコンドクロック(15万1000円)/軽量ワイパーアーム<カーボン>(18万8000円)/ナイトビジョンアシスト(38万4000円)/Burmesterハイエンドサラウンドサウンドシステム(47万8000円)/カップホルダートリム<レザー>(4万1000円)/インナードアシルガード<レザー>カラーステッチ付き(9万円)/スラット付き<レザー>およびエアベント<レザー>/カラーステッチ付き(21万4000円)/ヒューズボックスカバー<レザー>カラーステッチ付き(4万5000円)/インテリアミラーパネル<レザー>カラーステッチ付き(5万2000円)/カスタム車両キー<エクステリアカラー塗装>およびキーポーチ(6万8000円)/カスタムフロアマット(7万9000円)/リモートパークアシスト(7万2000円)/カスタムロゴLEDドアカーテシーライト(7万8000円)/ウィンドウトライアングルトリム<カーボン>(7万5000円)/助手席フットウェルストレージネット(0円)/アルミニウムフットペダル(5万2000円)/911Turbo SportDesignパッケージ<カーボン>(133万9000円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:7786km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:343.6km
使用燃料:47.15リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.3km/リッター(満タン法)/7.7km/リッター(車載燃費計計測値)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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