アストンマーティンDB12 S(FR/8AT)

ブリティッシュスポーツの血統 2026.11.05 試乗記 佐野 弘宗 アストンマーティンのスポーツツアラー「DB12」が、より高性能な「DB12 S」に進化。エンジンもシャシーも空力も、すべてに手が加えられた名門の基幹車種は、いかなるモデルに仕上がっているのか? ブリティッシュスポーツの血統を感じさせる、その走りを報告する。
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「S」の大盤振る舞い

車名の末尾に「S」をつけたアストンマーティンは、1953年に登場した「DB3 S」を源流とするという。DB3 Sは公道走行も可能なレーシングカー「DB3」の進化型で、ホイールベースを100mm短縮して機動性を上げるとともに軽量化も果たし、3リッター直列6気筒DOHCエンジンはファインチューンされていた。こうして誕生したDB3 Sは、目立った戦績を残せなかったDB3から一転して、4年間でワークス出場した35レースで、15の勝利を飾るなど、世界トップレベルのレーシングスポーツカーとして大活躍した。

その後も、アストンはときおり車名にSの文字を使ってきたが、「DBS」のように独立した車種名だったこともあれば、「ヴァンキッシュS」や「V8ヴァンテージS」「V12ヴァンテージS」のように、追加モデル的な高性能版だったり、あるいは「ラピードS」のように事実上のマイナーチェンジモデルを意味することもあった。

いずれにしても、アストンの歴代Sには厳密に統一された意味は持たされず、また多用されることもなかった。しかし、アストンは2025年の1年間に、「DBX S」「ヴァンテージS」、そして今回のDB12 S(参照)……と、3台のSを矢継ぎ早に本国デビューさせた。これほど多様なSが同時期にそろい踏みする事態は、アストンとしては初めてといっていい。

この、いわば「Sのシリーズ化」は、2024年にベントレーの会長兼CEOからアストンに移ったエイドリアン・ホールマークCEOの意向が大きいという。ホールマーク体制下でのアストンは、「ヴァルハラ」や「ヴァレン」といった希少モデルにこれまで以上に力を入れると同時に、今回のようにSをシリーズ化することで、量販モデルでもフレッシュな話題を提供して、新しく若い顧客層を獲得することを意図している。

「DB12」は、アストンマーティンのラインナップのなかでも本流に位置する、2+2のシートレイアウトを持つラグジュアリークーペだ。
「DB12」は、アストンマーティンのラインナップのなかでも本流に位置する、2+2のシートレイアウトを持つラグジュアリークーペだ。拡大
「DB12 S」は、ベースモデルのデビューから約2年半後の、2025年10月にデビュー。現行の「S」モデルとしては3番目の車種となる。
「DB12 S」は、ベースモデルのデビューから約2年半後の、2025年10月にデビュー。現行の「S」モデルとしては3番目の車種となる。拡大
インテリアに関してはラグジュアリーカーのご多分にもれず、各部の色や素材、装飾の有無などを細かに指定可能。自分好みのデザインにコーディネートできる。
インテリアに関してはラグジュアリーカーのご多分にもれず、各部の色や素材、装飾の有無などを細かに指定可能。自分好みのデザインにコーディネートできる。拡大
標準で装備される、16wayの電動調整機構付きスポーツプラスシート。オプションでカーボンファイバーシェルのパフォーマンスシートも用意される。
標準で装備される、16wayの電動調整機構付きスポーツプラスシート。オプションでカーボンファイバーシェルのパフォーマンスシートも用意される。拡大