フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン(FF/7AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン(FF/7AT) 2010.06.17 試乗記 ……242.0万円総合評価……★★★★
エンジン載せ替えで、パワーも燃費も向上したという「フォルクスワーゲン・ポロ」。1000kmオーバーの試乗を通して、クルマとしての出来栄えをチェックした。
期待どおりの名コンビ
5代目「ポロ」の日本上陸から7カ月が経った2010年5月、“本命”と目されてきた「ポロ1.2TSI」がついに登場した。小排気量の直噴ターボエンジン「1.2TSI」とマニュアル同等の高効率を誇る「DSG」の組み合わせが、精悍(せいかん)に変身した新型ポロをさらに男前にするのではないかと、期待を胸に待ちわびていた人は多いはずだ。
実際、「ポロ1.2TSI」は、そんな期待に応えるクルマだった。20.0km/リッターの低燃費を達成し、エコカー減税&補助金対象になったのも見事だが、ひとりのクルマ好きとしては、これまで以上に活発に生まれ変わった「ポロ」が、とても魅力的に思えた。
今回試乗したのは、装備充実の上級グレード「ポロTSIハイライン」だったが、エントリーグレードの「ポロTSIコンフォートライン」にも同じパワートレインが搭載されるようになり、より手頃な価格で、TSI+DSGの恩恵を享受できるのは見逃せない。個人的には、コストパフォーマンスに優れる「コンフォートライン」に強く引かれるが、スタイルにこだわり輸入車を選ぶ人なら、この「ハイライン」に抗しがたい魅力を覚えるだろう。
いずれにせよ、輸入コンパクトカー市場において「MINI」と人気を二分してきた「ポロ」が勢いづくのは確実で、さらに、「クロスポロ」「ポロGTI」などラインナップの拡大も予定していることから、輸入車オーナー予備軍にとってはますます目が離せない存在になりそうだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ポロ」は、1975年に初代がデビューした、フォルクスワーゲンのコンパクトハッチバックモデル。同社の基幹モデル「ゴルフ」の弟分である。現行モデルは、5代目にあたり、2009年のジュネーブショーでデビュー、日本では同年10月に発売された。
エクステリアは、それまでのフレンドリーなものに比べ、ややシャープ&スポーティなテイストに。メインターゲットの女性だけでなく、男性にもアピールするデザインとされた。
先代モデルより長さで80mm、幅で20mmアップするも、5ナンバー枠に収まるボディサイズを維持。ホワイトボディで7.5%という軽量化、容量が10リッター増えた荷室(280リッター)などが自慢だ。
日本におけるスターティングラインナップは1.4リッター直4エンジン(85ps、13.5kgm)を積む「1.4コンフォートライン」1車種だったが、これと入れ替わる形で、2010年6月には、新開発の1.2リッター直噴ターボエンジンを搭載する「TSIコンフォートライン/ハイライン」が発売された。
(グレード概要)
新型1.2リッターユニットを積む「ポロ」で、目下選べるグレードは2種。従来の「1.4コンフォートライン」とほぼ同等の装備内容となるベーシックグレード「TSIコンフォートライン」と、バトンタッチに際し追加された上級グレード「TSIハイライン」(=今回のテスト車)である。後者には15インチアルミホイールやフロントフォグランプ、フルオートエアコン、スポーツシート、革巻きステアリングホイール、パークディスタンスコントロール(リア)などが標準で備わり、両車の価格差は、29万円となっている。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
センタークラスターを強調した先代に比べると、おとなしくなった現行モデルのインストゥルメントパネル。しかし、上質さは大きく向上しており、落ち着いた雰囲気も印象を良くしている。コンフォートラインよりも上位に位置づけられるこのハイラインでは、センタークラスターに光沢のあるパネルが採用されて、さらに見た目が立派になった。
装備の充実ぶりもハイラインの特徴で、このほかにもエアコンがセミオートからフルオートに、スチールホイールがアルミホイールに変更されていたり、コンフォートラインにはないフォグランプやリアのパーキングセンサーがおごられている。
メーターは、とりたてて目新しい部分はないが、燃費や航続距離がチェックできる「マルチファンクションインジケーター」が備わるのはうれしいところ。一方、水温計がなかったり、外気温が常時表示されないのが、個人的には不満である。
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(前席)……★★★★
運転席に納まって真っ先に目にはいるのが、ステアリングホイールだ。このハイラインでは、シフトレバー、パーキングブレーキレバーとともに革巻きにグレードアップされるから、それだけでもハイラインを選ぶ理由になるはずだ。ステアリングコラムはチルトとテレスコピックの調節が可能で、さらに、シートに備わる高さ調節機能により、最適なポジションを得ることができる。
ハイラインに標準のスポーツシートは、シートバックやクッション部分の張りが強すぎることはなかったものの、幅に余裕がないため、多少窮屈に感じた。
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(後席)……★★★
4mを切る全長にもかかわらず、大人が後席に座っても必要なだけのヘッドルーム、レッグルームが確保されるのはハッチバックスタイルの美点だろう。しかし、決して余裕があるわけではなく、大人が頻繁に乗るのであれば、ひとクラス上のゴルフを選んだほうがいい。
シート自体、前席に比べて明らかに張りが強く、また、路面によってはリアからのショックも伝えがち。このあたりは、今後の熟成に期待したいところだ。
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(荷室)……★★★★
コンパクトなボディのわりに広いスペースを確保した荷室。フロアボードの高さが選べるので、通常は高い位置にして開口部の段差を低くし、荷物が多いときには低い位置にしてスペースを稼ぐなど、使い分けが可能だ。
リアシートは分割可倒式で、ヘッドレストを取り外さなくてもダブルフォールディング可能なのが便利。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
排気量を小さくして燃費を稼ぎながら、直噴システムとターボで必要なパワー&トルクを得るのが「TSI」の考え方だ。その最新エンジンがこの「1.2TSI」。これまでの1.4リッター自然吸気エンジンに比べて、クリープ時の勢いこそ控えめだが、アクセルペダルを踏み込んで走り出せば、瞬時にターボが反応し、1.2リッターとは思えない力強さを発揮する。2000rpm以下でも十分実用的なトルクがあり、一般道をおとなしく巡航する際は1500rpm以下で済ませてしまうほどだ。これが実用燃費にも寄与するわけで、ストップ&ゴーが多い都内でエアコンONの状況でも12km/リッターを上回る好燃費をマーク。高いギア比のおかげで、高速巡航時なら楽々20km/リッターオーバーの燃費を誇る。
TSI+DSGの魅力は燃費の良さだけではない。高速の合流や追い越し、山道の登りなど加速が必要な場面で、1.4リッター自然吸気とは段違いの力強さを見せてくれるのだ。
気になったのは、低回転を保っている状況から少し加速するような場面で、軽くアクセルペダルを踏み込んだだけだと反応が鈍いこと。そこでガマンしきれずにさらにアクセルペダルを強く踏むと、シフトダウンが起こって、エンジン回転が一気に上がるため、ぎくしゃくした動きにつながってしまう。この辺の制御は、同じエンジンを積む「ゴルフTSIトレンドライン」のほうが上手く、セッティングの見直しをお願いしたい。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★
現行モデルに生まれ変わって、さらにボディ剛性がアップし、安心感が高まったポロ。定評ある直進安定性も相変わらず高いレベルで、小さいながらもドイツ車らしさが感じられる。
足まわりの味付けにハードさはなく、しなやかな動きを見せる反面、一般道では落ち着きがやや足りない印象を受けた。タイヤはエントリーグレードのコンフォートラインと同じサイズの185/60R15。上位モデルだからといって、いたずらにインチアップしなかったのは喜ばしいが、そもそも14インチなら、さらに快適で落ち着いた乗り心地が得られたかもしれない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2010年6月1日-7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:4912km
タイヤ:(前)185/60R15(後)同じ(いずれも、コンチネンタル・コンチプレミアム コンタクト2)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:1045.1km
使用燃料:69.67リッター
参考燃費:15.0km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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