フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン(FF/7AT)【試乗速報】
向かうところ敵なし!? 2010.06.04 試乗記 フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン(FF/7AT)……273.0万円
5代目「ポロ」の大本命、1.2リッターTSI搭載モデルが日本上陸。まずは上級モデルの走りを、箱根で試した。
20.0km/リッター達成
この5代目「ポロ」が昨年10月、日本で発売された時点から“本命”とされていた1.2リッターTSIが上陸した。すでにご存じの方も多いように、この1.2リッターターボの「ポロTSI」には2グレードが用意される。安価なほうは装備内容が従来の1.4のままでパワートレインのみ1.2TSIに換装した「TSIコンフォートライン」、そして、それにアルミホイール、オートエアコン、本革ステアリングその他の、豪華かつ、ちょいスポーティな装備を盛った上級モデルが「TSIハイライン」である。
“1.4リッター”に対して明確にパワー&トルクアップ(そして燃費も向上)した新世代ハイテクエンジンだけに、従来とほぼ同装備のコンフォートラインでも本体価格は10万円高くなった。しかし、日本の法規制に合わせた専用プログラムチューンによって、日本独自の10・15モード燃費でも20.0km/リッターを達成。待望のエコカー減税対象車になったことで、実質的な「乗り出し価格」はちょっと下がるという。
ただ、「エンジンを1.2TSIに一本化」という今回の新ラインナップは、昨年のポロ発売時点でフォルクスワーゲン・グループ・ジャパン関係者にうかがっていた内容とちょっと違う。もともとは「1.4コンフォートラインはそのままで、上級モデルとして1.2TSIハイラインを追加して2グレード体制にする」予定だった。新しい1.2TSIユニットは従来の1.6リッターNAの代替ユニットという位置づけだからだ。しかし、最終的にはこのように、ポロは全グレードが1.2TSIで統一された。その理由はハッキリしている。エコカー減税の延長だ。
アシの印象は従来と変わらず
もともと予定されていた「1.4コンフォートライン+1.2TSIハイライン」というラインナップは、日本のエコカー減税が2010年3月で終了することが前提の戦略だった。しかし、エコカー減税が続くことになると、1.2TSIのみがエコカー減税対象車となって、当初予定のラインナップでは実質価格(=乗り出し価格)の逆転現象が起きてしまう。これではビジネスがやりにくい……というか、1.4コンフォートラインはその時点で存在意義を失った。
今回の試乗に供されたのは新上級グレードのTSIハイラインだが、コンフォートラインとの差は基本的に便利快適ビジュアル系の装備だけで、タイヤサイズもシャシーチューンも両車共通。ちなみに、現在のポロには世界的に3種類のシャシーチューンしか存在せず、この「コンフォートライン/ハイライン用」はその真ん中の仕様で、他にはよりソフトな「トレンドライン用」と最も硬派な「GTI用」があるだけだそうだ。
従来の1.4リッターと新しい1.2TSIでは重量差も10kgでしかなく、従来の1.4リッターとのシャシー関連の差異はジャパン側でも把握していない。……と、こんな書き方をするのは、部品番号にも反映されない微妙な熟成作業のランニングチェンジはインポーターに通達されないケースもあるからだが、実際にも、少なくとも箱根近辺での1時間強の試乗では「1.4と変わらない」としか思えなかった。
軽量ボディと相性抜群
最高出力105ps、最大トルク17.8kgmという1.2TSIの動力性能は、言うまでもなく、1.1tのポロには余裕タップリだ。7段DSGも1.4リッターよりハイギアードの設定だが、実際の加速力はそれを補ってあまりある。メリハリの強いハンドリングやDSGに対してエンジンだけがやけにおっとり癒やし系……という従来の1.4にあったミスマッチ感も、新しいTSIでは一掃された。いかにも最新鋭っぽくパリッとした感触の1.2TSIによって、クルマ全体の完成度・統一感も確実に上がっているのだ。この「全身が高剛性にして高精度」なイイモノ感に比肩できる競合車は、今のところちょっとない。
ターボエンジン特有のラグも、ポロではほとんど気にならない。「最新ターボなんだから当然だろ!?」と言うなかれ、同じパワートレインを積んだ「ゴルフTSIトレンドライン」では、スロットル操作に一拍遅れてエンジントルクが超強力に立ち上がり、混雑した都市部をはいずるような低速走行ではギクシャクしがちだった。考えてみれば、1.2リッターで105psというのはかなりのハイチューンであり、1.2リッターという絶対排気量はポロより170kgも重いゴルフにはどうにも小さい。1.2TSIは、それ自体のキャラクターはけっこうピーキーなのだ。しかもダイレクトなDSGにはトルコンATのようなトルク変動吸収効果も望めない。その点、軽量なポロでは、この1.2TSI+乾式クラッチ7段DSGの弱点が出にくい。
関係者のお話では、ポロを全車1.2TSI化……という決断は本当にギリギリの段階での選択だったそうだが、われわれ外野にとっては結果オーライ。これだけ力強くなって燃費も向上、しかもコンフォートラインなら実質値下げ。これまでの「ポロ1.4コンフォートライン」は発売から約半年で6000台近く(前年比で約1.5倍)も売れるヒット作となったが、今回の1.2TSI化で売れっぷりがさらに加速するのは確実。そのかわり、ライバルは真っ青だろう。
(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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