BMW535i(FR/8AT)【試乗記】
手堅く、手堅く 2010.04.23 試乗記 BMW535i(FR/8AT)……892.1万円
6世代目となるニュー「5シリーズ」に試乗。その進化の度合いをチェックする。
ハッとするデザイン
従来型のデビューから7年ぶり。数えて6代目となるのが、BMWの新しい「5シリーズ」だ。まずはセダンがリリースされ、続いてステーションワゴンがそのファミリーに加わる、というのは、ライバルであるメルセデスの「Eクラス」とともに、いつも通りのシリーズ構築の流儀。そんな新型セダンのボディは、全長×全幅が4910×1860mmという大きさ。今も「BMWの中堅モデル」と紹介される5シリーズも、気がつけばかくも堂々たるサイズの持ち主になっているというわけだ。
そんな新しい5シリーズセダンを写真で初めて目にした時に感じた「今度はちょっとコンサバ(保守的)かな?」という思いは、実際には必ずしも当たってはいなかった。たしかに、伝統的なBMWの文法通りと思わせるフロントマスクは、先鋭性という点でむしろ従来型よりもちょっと後退した感がないではない。けれども、それを除けば新型セダンの各部の造形は、写真で見るよりもはるかに抑揚が強く、躍動感にあふれている。フロントフェンダー後部からドアハンドルの高さを通ってリアのコンビネーションランプへと続く、キャラクターラインのシャープなエッジの立ち方などは、ちょっとハッとするほどだ。
インテリアに見える“改心”
太い握りのドアハンドルを引いて、ドライバーズシートへ。ドアの開閉感は、なんとも金属的に硬質かつ重厚で、このあたりがまず、“ドイツ車好き”のハートをしっかりとキャッチするきっかけだろう。インテリアのデザイン全般は見慣れたBMW車のそれで、先代の「7シリーズ」が世に出た時のような驚きは、もはや見当たらない。かつては「増えすぎたスイッチ数を減らすため」という題目で、日常シーンで必要なものまでを手当たり次第(?)にディスプレイ表示の中へしまい込んだBMWだが、そんなやり方を“改心”したのは、今度は空調関係のスイッチ類がすべてセンターパネル上に復活配置されたことからも推察できる。
ただし、オプション装着されていたHUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)は、20万円超という価格にコストパフォーマンス上の疑問を感じざるを得ない。単なる速度表示だけではなく、ナビゲーションシステム使用中はそのルート案内なども表示するマルチカラーの高機能版だが、それでもドライビングのサポートに決定的なアドバンテージをもたらす実感はないし、むしろ運転に必要な前方車外の光景とメーターパネルというもともとの2カ所に加え、さらにウインドシールド上の表示面という”第3のポイント”に焦点を合わせる必要性も生まれるからだ。というわけで、そもそもこの種のバーチャル表示があまり好みではない筆者としては、たとえ2万円でも、余り食指の動かないアイテムなのだが……。
さすがはBMW
先代のエンジンがツインターボ付きだったことと、“ツインパワー・ターボ”なるキャッチフレーズが用いられることから「ターボ2連装」と勘違いしそうだが、「535i」が積むのはツインスクロールのシングルターボユニット。ターボを減らした罪滅ぼしではなかろうが、バルブリフト&タイミングシステム「バルブトロニック」を新たに加えている。そんな心臓のシリンダーレイアウトは、もちろんBMWの金看板でもある直列6気筒だ。
この心臓と新採用の8段ATとの組み合わせは、1〜3速までのアップ時にシフトショックが少々目立つ以外は、「さすがはBMW」と人々をうならせる仕上がり具合。低回転域ではターボ付きを意識させないフレキシブルさ、高回転域にかけては、ツインターボユニットに負けないパンチあふれる伸び感を味わわせてくれる。ただし、スタート時にアクセルワークとクルマの動きがわずかにイメージとずれる印象を受けることがあったのは、電子スロットル制御の問題か、はたまたバルブトロニックのいたずらか。それにしても、シフトパドルがオプション扱いなのには、ちょっとビックリ。BMWなら、当然標準装備と思うでしょう。
フットワークは好印象。このブランドにとって長年の付き合いとなるランフラットも随分と履きこなされ、かつては苦手とした、路面凹凸を拾った際の不快にとがった振動感は、今やさほど気にならない。ハンドリングの自在度と高速域でのフラット感の高さは、多くの人がBMW車に期待するであろう水準とテイストを、きっちり具現させたもの。ほぼ50:50という前後の重量配分によるコーナリング時のバランスの良さも、実際にその恩恵をイメージできる感覚がうれしい。
日本仕様は4輪アクティブ・ステアリングを標準採用するが、実はこのシステムの”小回り制御”は前進時のみということがテストでわかった。後退時の旋回性能を期待してバックしたが、狭い地下駐車場では壁にタッチしそうになってしまった。3m近いホイールベースが生み出す”外輪差”と共に、ご注意あれ。
(文=河村康彦/写真=高橋信宏)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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