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【スペック】トゥインゴ ルノースポール(写真手前):全長×全幅×全高=3610×1690×1460mm/ホイールベース=2365mm/車重=1120kg/駆動方式=FF/1.6リッター直4DOHC16バルブ(134ps/6750rpm、16.3kgm/4400rpm)/価格=250.0万円(テスト車=同じ)

ルノー・ルーテシア ルノースポール(FF/6MT)/トゥインゴ ルノースポール(FF/5MT)【試乗記】

スポール兄弟、故郷へ帰る 2010.01.27 試乗記 サトータケシ ルノー・ルーテシア ルノースポール(FF/6MT)/トゥインゴ ルノースポール(FF/5MT)
……299.0万円/250.0万円

2台揃ってアツさがウリの、ルノーの新型ハッチバック。サーキットを走らせてわかった、それぞれの実力と走りの違いを紹介する。

何周しても飽きない理由

クルマの分類方法はいくつもあるけれど、「速いクルマ」と「速いと感じるクルマ」という分け方もできると思う。世の中には、「実はそんなにスピードが出ていないのに、飛ばしているつもりになるクルマ」と、「飛ばしているつもりはないのに、思ったよりスピードが出ていてびっくりするクルマ」の2種類がある。

後者の代表はアウディの各種クワトロなど。静かで乗り心地がよくてビタッと安定しているけれど、実は油断ならない。気を抜いてボーッと運転していると、スピードメーターが途方もない数字に達しているからだ。富士スピードウェイのショートコースで試乗した「ルーテシア ルノースポール」と「トゥインゴ ルノースポール」の“体育会系ブラザース”は、典型的な前者だった。もちろん速いには速いけれど、車窓の景色がコマ送りになるような非現実的な速さじゃない。それでも「飛ばしている」「攻めている」という実感が、きわめて濃いのだ。

正しいポイントで正確にブレーキを踏んで減速、「ここだ!」というところでステアリングホイールを切って、すべてのタイミングがどんぴしゃで合ったところでアクセルペダルを踏む。すると、想像していた以上にスムーズかつダイナミックにコースを駆け抜ける。

サーキットはクルマにとって魔性の場所。全開で走れるので最初の数周はどんなクルマでもよく思える。けれども蜜月を過ぎると、フツーのクルマだと次第にアラが見えてきてしまうものだ。でもこの2台は違った。ブレーキは効きもフィーリングもばっちりだし、足まわりの懐も深い。エンジンのレスポンスも抜群だ。周回を重ねるごとに上達していることや、自分が犯してしまったミスを敏感に感じ取れる。だから何周しても飽きない。用意された2台のうち、まずは“お歯黒”顔の兄貴、「ルーテシア ルノースポール」の印象から。

「トゥインゴ ルノースポール」。ごつい形状のガンメタのフレームに収められたフォグランプや、リアスポイラーとサイドスカートといったエアロパーツがノーマルとの識別点。17インチのアルミホイールもルノースポール専用デザイン。
「トゥインゴ ルノースポール」。ごつい形状のガンメタのフレームに収められたフォグランプや、リアスポイラーとサイドスカートといったエアロパーツがノーマルとの識別点。17インチのアルミホイールもルノースポール専用デザイン。 拡大
新型「ルーテシア ルノースポール」の直列4気筒ユニット。1998ccの排気量こそ先代モデルと同じだが、吸排気系に大きく手を入れたことで32psのパワーアップをはたした。
新型「ルーテシア ルノースポール」の直列4気筒ユニット。1998ccの排気量こそ先代モデルと同じだが、吸排気系に大きく手を入れたことで32psのパワーアップをはたした。 拡大
 
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モータースポーツはスポーツだ!

コースに慣れるまでの1、2周の間、ゆっくり走っている限りは「これでホントにサーキットを走って大丈夫?」という雰囲気を「ルーテシア ルノースポール」は漂わせる。ステアリングホイールは軽いし、サーキットの路面がいいことを差し引いても乗り心地はいい。頼りないというか、仕立てのいいジャケットを着たままバッターボックスに立ってしまった人みたい。

ところが次第にペースを上げると、常人とはケタ違いの運動神経を見せつけてくれる。まず、従来からの2リッターの直列4気筒16バルブに可変バルブタイミングシステムを採用したエンジンがいい。最高出力は従来型に32ps上乗せした202psになっているけれど、ドライブして嬉しいのはパワーアップよりも高回転域での音とレスポンスが鋭くなっていることだ。

5000rpmを超えるとタコメーターの針が上昇するスピードが明らかに速くなり、腰のあたりがムズムズするような快音を発する。おまけに6MTのギア比はクロースしているから、一番おいしい領域だけを使って走ることができる。「ルーテシア ルノースポール」の本国仕様のサスペンションは「Cup」と「Sport」の2種類が設定されるが、日本仕様はやや穏やかな後者。軽く流す場面では意外にしなやかで、けれども飛ばせば飛ばすほど強靱になる。温和そうに見えて、逆境に強いタイプとお見受けした。

そして「軽くオーバーステアになりそう」と「ニュートラルステアをキープ」の間という、ものすごく狭くて微妙な領域の操縦性を実現している。何周しても効き、タッチともに変わらないブレーキを含めて、ものすごくクルマが好きで、とてつもなく運転が上手な人がセッティングしたという印象。世間には、「モータースポーツのどこがスポーツなの?」という疑問を抱く人も多い。でもこのクルマでサーキットを走れば、モータースポーツがスポーツだということがだれでも理解できる。棒高跳びやスキーなどと同じように、道具を使いこなす“人間力”を競う競技なのだ。

3代目となる現行ルノー・ルーテシアは、同社のトゥインゴや「日産ティーダ/マーチ」とプラットフォームを共用。ただしホイールベースをはじめとする外寸は、トゥインゴよりひとまわり大きくなっている。
3代目となる現行ルノー・ルーテシアは、同社のトゥインゴや「日産ティーダ/マーチ」とプラットフォームを共用。ただしホイールベースをはじめとする外寸は、トゥインゴよりひとまわり大きくなっている。 拡大
タコメーターの盤面が黄色く塗られている以外は、素っ気ない「ルーテシア ルノースポール」のインテリア。そのパフォーマンスに見合った演出があってもいいと思う一方で、価格上昇を抑えるためにはこのほうがいいと思ったり。
タコメーターの盤面が黄色く塗られている以外は、素っ気ない「ルーテシア ルノースポール」のインテリア。そのパフォーマンスに見合った演出があってもいいと思う一方で、価格上昇を抑えるためにはこのほうがいいと思ったり。 拡大
「走る、曲がる、止まる」の3つが高度にバランスするルーテシア ルノースポールであるが、リポーターが特に感銘を受けたのはブレーキ。フロントはブレンボの4ピストン、リアにはTRWのシングルピストンが奢られる。
「走る、曲がる、止まる」の3つが高度にバランスするルーテシア ルノースポールであるが、リポーターが特に感銘を受けたのはブレーキ。フロントはブレンボの4ピストン、リアにはTRWのシングルピストンが奢られる。 拡大
【スペック】ルーテシア ルノースポール:全長×全幅×全高=4020×1770×1485mm/ホイールベース=2585mm/車重=1240kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(202ps/7100rpm、21.9kgm/5400rpm)/価格=299.0万円(テスト車=同じ)
【スペック】ルーテシア ルノースポール:全長×全幅×全高=4020×1770×1485mm/ホイールベース=2585mm/車重=1240kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(202ps/7100rpm、21.9kgm/5400rpm)/価格=299.0万円(テスト車=同じ) 拡大

弟のほうがヤンチャで硬派

「ルーテシア ルノースポール」をすっかり満喫して、「トゥインゴ ルノースポール」に乗り換える。すると『webCG』の敏腕エディターであるS青年が、「トゥインゴ」から青い顔で降りてきた。インテリかつグルメで知られるSクンは、「このクルマをサーキットで走らせるの、ボクには無理です……」とポツリ。どれどれ、オジサンが見てあげよう。

コクピットに収まってコースイン、確かにこっちのほうが骨っぽい手応えのクルマだ。まず、ステアリングホイールがはっきりと重い。特にスピードを上げてタイトコーナーで切り込むような場面では「ゴーカートかよ」と思うぐらい。ステアリングホイールを握る手のひらと下っ腹に、グッと力が入る。

それから、乗り心地も硬い。「ルーテシア ルノースポール」のサスペンションは「Sport」だったけれど、「トゥインゴ ルノースポール」は「Cup」なのだ。サーキットなので乗り心地が悪いと感じるヒマはないけれど、運転しているとエイヤっと振り回す感覚になる。クルマなりにスーッと曲がる「ルーテシア」とはかなり性格が異なる。エンジン音の侵入も“兄貴”より盛大で、弟のほうがヤンチャで硬派。洗練された兄貴に対して、弟はネイキッドな操縦感覚がウリだ。

だから「そんなにスピードは出ていないけれど、走った気になる」というポイントに絞れば、弟分の「トゥインゴ ルノースポール」のほうが味は濃ゆい。一般道も含めた総合性能で見れば、50万円近く高価な兄貴のほうが一枚も二枚も上手だけれど、サーキットだけを走るのであれば弟を選んでも面白いかもしれない。サーキットで思いきり走らせると、それぞれのキャラの違いがはっきりした。というか、サーキットこそ、“体育会系ブラザース”の生まれ故郷なのかもしれない。
こういったクルマで週末をミニサーキットで過ごすというのは、クルマ好きの理想のひとつかも。自宅とサーキットの距離を縮めてくれる2台。

(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)

3つのペダルは、チェッカードフラッグの模様をイメージしたデザインのアルミ製。ステアリングホイールに載っかるように据えられたタコメーターには、6800rpmで灯るシフトアップインジケーターが備わる。シートアレンジの使い勝手などはノーマルモデルに準じる。
3つのペダルは、チェッカードフラッグの模様をイメージしたデザインのアルミ製。ステアリングホイールに載っかるように据えられたタコメーターには、6800rpmで灯るシフトアップインジケーターが備わる。シートアレンジの使い勝手などはノーマルモデルに準じる。 拡大
ルーテシアの2リッターユニットが高回転域の鋭さを売り物にしているのに対して、トゥインゴの1.6リッター直列4気筒ユニットは低回転域での粘り強さが特徴。正直、面白味には欠けるものの、ヘアピンからの脱出などでは“ツキ”のよさが味わえた。
ルーテシアの2リッターユニットが高回転域の鋭さを売り物にしているのに対して、トゥインゴの1.6リッター直列4気筒ユニットは低回転域での粘り強さが特徴。正直、面白味には欠けるものの、ヘアピンからの脱出などでは“ツキ”のよさが味わえた。 拡大
「Cup」という最もスポーティな仕様の足まわりを採用する「トゥインゴ ルノースポール」は、ベースモデルの「トゥインゴGT」より車高が14mm低められている。バネやダンパーのセッティングもかなりスパルタン。
「Cup」という最もスポーティな仕様の足まわりを採用する「トゥインゴ ルノースポール」は、ベースモデルの「トゥインゴGT」より車高が14mm低められている。バネやダンパーのセッティングもかなりスパルタン。 拡大
 
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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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