ルノー・ルーテシア ルノースポール シャシー カップ(FF/6AT)
緩急自在のフレンチロケット 2013.12.10 試乗記 ルノーのモータースポーツ部門が手がけたホットな「ルーテシア ルノースポール」。その中でも一段とハードな足まわりを持つ「シャシー カップ」に試乗した。その走りはいかに?シャシーにワザあり
新型「ルーテシア」は標準型でも十分に魅力的であるが、よりパワフルな心臓とスポーティーな装いをもつ「ルノースポール(R.S.)」は特別な存在である。1.6リッター200psエンジンはゲトラグ製のツインクラッチ6段ATの面白さを一段と引き出しているし、18インチの大径ホイールとタイヤは、強化されたサスペンションとあいまってコーナーを攻める楽しみを倍加させる。
今回は「シャシー スポール」と「シャシー カップ」の2種類から選択できる。といっても、もともとノーマルとは異なる高性能仕様であるから、どちらを選んでも姿勢変化は少ないし、上限も常識外に硬いわけでもない。
数字で見ると、「カップ」のバネ定数は「スポール」に対して前で27%、後ろで20%高められているが、これは車高を3mm低くしてフリーハイトを短くした結果だろう。固められたスプリングよりも筆者の興味を引いたのは、HCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)という機構を用いたボトミング特性だ。
本来、フランス車はボトミング対策がうまく、その中でもルノー車は群を抜いている。フランスの道を走っていると、村や小さな街への出入り口には強制的に速度を落とさせるための大きな突起がよくある。不用意にそのままのスピードで進入してしまうと、乗り上げてビックリさせられることがあるが、それを承知であえて試してみると、その受け止め方に感心させられる。
フランス車が用いるプログレッシブレート(非線形特性)のゴム製バンプラバーの衝撃吸収能力は、予想(期待)を超えている。それに対してドイツ車や日本車のものは、比べるのもためらわれるレベルでしかない。
今回のR.S.は、その部分をさらに進化させたHCCで対応する。どこが違うのかといえば、ゴムは変形する(縮む)と反発する動きが残る。HCCはゴムをなくした部分のストロークを利して、極端に非線形特性を強めて強引に受け止め、かつ次なる動きとして反発せず、動きの方向が変わる際に伸び側の減衰力を高める。オイルは圧縮されないから、ガツンというメタルコンタクトのショックもない。この部分の剛性確保や精度が高度化された結果だろう。うまい手法である。
このHCCのバウンドからリバウンドへ動きの方向が変わる瞬間の出来事は実に興味深い。無造作にハードコーナリングを敢行したとしてもダンパーに底付き感はないし、ロールの揺り返しも感じさせず、挙動は至ってスムーズに移行する。
全体のバネレートを固めるよりも最後の砦(とりで)だけ強化する方が効果的に受け止められるし、それ以外のストローク域はソフトなレートで済ませられるから接地性を上げられ、かつ乗り心地もよくできる。コレは非常に賢いチューニング手法だ。
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マニュアルで操ってこそ面白い
新型では、ローンチコントロールという自動急発進装置のポジションも選ぶことができる。最大加速作業というのは自分でやるから面白いのであって、機械がやってくれるのを見ていても面白いとは思わないが、なるほどね……と参考にはなるから、一度は試してみるとよいだろう。
コレを見て、ATがアメリカで普及した経緯を思い出した。かつて、ハイウェイに乗る際にランプでの合流で、速度差を合わせられず衝突する事故が多発した。MTを素早くギアチェンジし、各ギアでフル加速する操作は誰にでも簡単に行えるとは限らない。しかし、ATならばスロットルを踏みっぱなしにするだけでいい……ということが、ATの普及のひとつの理由になったという。
現代ではエンジンが高性能化し、ATも高効率になり、エンジンを回さなくても適度に速く走れるようにはなった。そこでフルスロットルを与える機会が少なくなった結果、本当に必要な時にスロットルペダルを大きく踏み込めない人も出てきている。ローンチコントロールは、たまにはフルスロットルの意義を思い出させてあげよう、という親心(?)なのかもしれない。
そして、なによりも面白いのは6段のEDC(エフィシエント・デュアル・クラッチ)によるATだ。ギア比は1.2リッターの標準型ルーテシアと同じで、パワーが増した分だけこちらの加速は素早いが、面白さのポイントはそのステップアップレシオにある。カタログに「クロスレシオうんぬん」と文字だけで謳(うた)う例は多いが、実際にはウソッパチも多い。しかし、このルーテシアこそ本物のクロスレシオで、ステップアップレシオを見ると、1速から6速までが1.6/1.5/1.4/1.3/1.2ときれいにそろっている。これが何を意味するかといえば、上げるにしても下げるにしても変速のリズムが取りやすく、同じ調子で繰り返せるということだ。特に1速から3速は一般公道でも楽しめる領域で、段差が少ないからよりスムーズでもある。
筆者がいつもチェックする2速へのシフトダウン可能な速度は70km/hであるが、コレは回転を上げていった時のMAXが74km/hであることを考えると、エンジンを壊さないための安全圏内にあるし、またほぼ目いっぱい使っていることから、エンジンの高速耐久性に対する自信もうかがえる。
本当はクラッチ操作も自分のアシで行って、手動のレバー操作と共に忙しい思いをする方がより面白いのだが、これなら自動で機械がやってくれるのを感心して見ていてもいい。フツウの車の2速は一般的には90km/hから120km/hあたりまで伸びるから、それを70km/hちょっとに抑えた場合の加速感の凄(すさ)まじさは想像してもらえるだろう。
しかも、荒々しさとは無縁で、あたかも1速の加速Gの感覚がそのまま持続するかのよう、といえば納得されるだろうか。もちろん70km/hから上も、通常の3速とは異なる勢いを持続させた加速感を味わうことができる。
EDCを単なる自動変速のATとして使うこともできるが、このツインクラッチ式6段ATはマニュアルシフトしてこそ面白い。キカイなんかに勝手にやらせておいてなるものか、という気になる。
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これぞ今の時代のホットハッチ
このトランスミッションのギア比に関しては、有名メーカーのスポーツカーといえども、まだわれわれの要求を満たしていないところもある。象徴的にいうならば、ドイツ人よりイタリア人の方が感覚が上、さらにはフランス人の方が上といえるだろう。
設計者はドライバーでない場合も多く、走り込んでいるテストドライバーがいるメーカーほど乗ると面白いクルマを作ってくれるものである。1速と2速を接近させると、セカンド発進する人がいるから……などと、ばかな言い訳などすべきではない。
さらに、順当に3速も低められているから、欧州の一般道でたびたび遭遇する村々の通過速度規制でも、2速に落として回転を上げたまま走るより、3速を使ってより静かに走ったほうが経済的であるし、ストレスを軽減することもできる。また、上のギアでクロスさせても、エンジンブレーキが利かないから結局、2段落とすことになる。だからほとんど意味がない。フランス人旅行者はオートルートよりナショナルルートを飛ばす方を好む。それと関係があるかもしれない。
ところで新しいR.S.のボディーには、3ドアではなく5ドアが使われている。5ドアボディーではドアの前後長が短くなるから、ドライバーの乗降性からいっても便利だ。
また、ボディー剛性については、開口部の少ないほうが強度的に有利とされた時代もあったが、今では真ん中にピラーがあって、ドア周辺も補強されることから、ドアの枚数より開口部の狭さの方が有利な例もある。
R.S.のような車種にはスパルタンな荒々しさを求める人もいるだろうが、今度のR.S.は乗り心地を含め、すべての走行感覚がスムーズで洗練されている。これぞフランス的スポーツハッチである。硬くラフな乗り心地を求めるならば、もっとほかに選択肢はある。スムーズな操作こそが運転の究極であるならば、ラフで乱暴な操作のほうが速い、あるいは面白いという勘違いが横行した時代は、もはや過去のものといえるだろう。
今の時代は、普通にファミリーカーとしての役目をまっとうできる一方で、ひとりで山道を攻めるような時には、ドライバーがみずからのドライビングで走りの欲求を満たせる車が望ましい。そんな積極的な操作も、このR.S.は許容してくれる。まさに緩急自在。この大きくなった度量こそ、今度のR.S.の魅力である
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア ルノースポール シャシー カップ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4105×1750×1435mm
ホイールベース:2600mm
車重:1280kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)205/40R18 86Y/(後)205/40R18 86Y(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:--km/リッター
価格:309万円/テスト車=309万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:2042km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(3)/山岳路(2)
テスト距離:249.3km
使用燃料:25.4リッター
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/11.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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笹目 二朗
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