メルセデス・ベンツ ブルーエフィシェンシーシリーズ
クリーンの証 2009.12.17 試乗記 メルセデス・ベンツC250 CGI ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン アバンギャルド(FR/5AT)/E250 CGI ブルーエフィシェンシー アバンギャルド(FR/5AT)……657万9000円/698万円
メルセデスが、安全性能とともに力を入れている環境性能。その技術の凝縮ともいうべき、“ブルー”のバッジを備えた最新モデルを試した。
日本ではグリーン、ドイツではブルー
メルセデス・ベンツが、ハイブリッド車や新開発の直噴ガソリンエンジン搭載車を日本市場に次々と投入し、注目を集めている。具体的には「Sクラス ハイブリッドロング」や「C250 CGI」「E250 CGI」などがそうだが、これらには共通の特徴がある。ヒントはフロントフェンダー。そう、どのクルマにも「BLUE EFFICIENCY」のバッジが見つかるはずだ。
最近、よく見聞きする「ブルーエフィシェンシー」とは、メルセデスによる地球温暖化防止を目的とした取り組みのことで、CO2(二酸化炭素)削減のためのさまざまな技術で成り立っている。その最たるものが、ハイブリッドや直噴ガソリンエンジンの「CGI」、クリーンディーゼルの「ブルーテック」といった最新のパワートレインであり、さらに、車両の軽量化、空気抵抗/転がり抵抗の低減、補器類のエネルギーロス抑制などによって、走行時の効率を高め、燃費の向上、すなわち、CO2排出量の削減を図っている。そして将来は、電気自動車や燃料電池車を実用化することで、CO2ゼロを目指すという。
そんな、いまの時代にふさわしいブルーエフィシェンシーモデルのなかから、「C250 CGI ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン アバンギャルド」と「E250 CGI ブルーエフィシェンシー アバンギャルド」の2台を試乗会でチェックすることができた。
ガソリン直噴ターボ「CGI」
C250 CGIステーションワゴンとE250 CGIセダンには、新開発のCGIエンジンが搭載されている。今回のポイントは、まさにこのパワーユニットだ。CGIは「Charged Gasoline Injection」のことで、ガソリン直噴ターボエンジンの意味。フォルクスワーゲンの「TSI」やアウディの「TFSI」といったガソリン直噴ターボと同様に、排気量を小さくして機械的なロスを少なくしながら、トルク不足を過給によって補うことで、低燃費と高出力を両立させる考え方だ。
C250 CGIとE250 CGIに搭載されるのは、1.8リッターの直列4気筒エンジンで、そのネーミングから、これまでの2.5リッターV6に取って代わるパワーユニットであると推測される。実際、そのスペックを見ると、最高出力は204psと2.5リッターV6とぴったり同じ数字であり、一方、最大トルクは31.6kgmと、2.5リッターV6の25.0kgmを大きく上回っている。
注目の燃費は、たとえば、Cクラスのステーションワゴンで比較すると、V6+7AT搭載のC250が9.4km/リッターであるのに対して、直4+5ATのC250 CGIは11.0km/リッターと約17%向上した。ちなみに、1.8リッターのスーパーチャージャー付きエンジンを積むC200コンプレッサーは、C250 CGIよりも控えめ目なスペックで、10・15モード燃費は11.2km/リッター。つまり、C250 CGIはC200コンプレッサーの燃費で、C250(V6)を上回るパフォーマンスを手に入れたことになる。
Cのベストモデル
果たして能書きどおりなのか、まずはC250 CGIステーションワゴンを試してみた。現行のCクラスでは、オーソドックスな“エレガンス”とスポーティな“アバンギャルド”が選べるが、2009年8月にラインナップを見直した際、エレガンスを選べるのはC200コンプレッサーだけとなった。当然、試乗車はクーペマスクのアバンギャルドで、“ダイナミックハンドリングパッケージ”と“AMGスタイリングパッケージ”を含むメーカーオプション「AMGスポーツパッケージ」(60万円)がおごられる贅沢な車両だった。
さっそく走らせると、同じ排気量のエンジンを積むC200コンプレッサーより、明らかに出足が軽い。スーパーチャージド1.8リッターに比べて、より低い回転から豊かなトルクを絞り出しているのだ。感覚としては2.5リッターV6というより3リッターV6に近いかもしれない。アクセルペダルの動きに対するレスポンスも自然である。
スーパーチャージド1.8リッターが、ちょっとした加速時にもメカメカしいノイズを高めるのに対し、このCGIエンジンではノイズが目立たない。直噴エンジン特有の、ガラゴロといった音も気にならなかった。もちろん、高速の合流などで全開加速を試みると5000rpmを超えたあたりからそれなりにボリュームは大きくなるが、その一方で、CGIエンジンのスムーズさや力強さに感心する。数字だけでなくフィーリングという点でも、V6のC250に迫る印象である。
残念ながら燃費をチェックすることはできなかったが、10・15モードを見るかぎり、C200コンプレッサー並みのデータは期待できそう。これで価格がC200コンプレッサー並みなら文句はないが、以前のV6のC250に比べるとC200コンプレッサーに歩み寄っている。個人的にはこのC250 CGIがCクラスのベストモデルと思った。
エコロジーか、エコノミーか
同じエンジンを積むEクラスセダン、E250 CGI ブルーエフィシェンシー アバンギャルドも試した。C250 CGI ステーションワゴン同様、搭載するトランスミッションは5ATで、各ギア比や最終減速比もCクラスと同じ。それでいて、直前に乗ったCクラスワゴンよりも車両重量は160kg重い1780kg。案の定、発進はややもっさりしていて、加速するにもCクラスより多めにアクセルペダルを踏むことになるが、このあたりは慣れの問題で、しばらくすると実用上十分なパフォーマンスの持ち主であることがわかった。
燃費については、このEクラスも確認できなかったが、カタログによれば10・15モードの数字は10.8km/リッター。これは「平成22年燃費基準」に対し、「+20%」をマークし、さらに、「平成17年度排出ガス基準」については70%低減レベル、いわゆる4つ星を獲得しているので、エコカー減税(約18万7300円)とエコカー割引(25万円または10万円)の対象になる。輸入車としては、Sクラスハイブリッドにつづく。
ただ、カタログをよく見ると、アバンギャルドではない“素”のE250 CGI ブルーエフィシェンシーなら、同じパワートレインを積むCクラスセダン/ワゴン、Eクラスセダン/クーペのなかでトップの低燃費11.4km/リッターであることに気づく。車両重量は1680kgとアバンギャルドより100kg軽いが、それが裏目に出て(!?)、基準となる燃費がより厳しい数字となり、基準の+5%に留まったのだ。この理不尽な燃費基準には腹が立つが、E250 CGIを購入する際にエコロジーをとるか、エコノミーをとるかは、私が口を挟むことではないだろう。
いずれにせよ、ブルーエフィシェンシーにより、低燃費を実現するメルセデスの姿勢は高く評価したいところで、今後、クルマを選ぶうえで大きなアドバンテージになるのは間違いない。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)
![]() |
![]() |
![]() |

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。