200万台売れたレクサスの電動車 その走りはどう進化した?
2021.06.07 デイリーコラム特に日本と欧州で人気
トヨタ自動車は、レクサスブランドの電動車の世界累計販売台数が、2021年4月末に200万台(正確には202万1000台)に達したと発表した。最初の電動車は2005年に登場した「RX400h」だから、15年間で約200万台だ。これは、毎年約30万台分の二酸化炭素排出量をゼロに抑えてきた計算になるという。
202万1000台の主な地域別販売台数とその比率は、北米:54万台(27%)、欧州:48万台(24%)、日本:40万1000台(20%)、中国:38万7000台(19%)、その他:21万2000台(10%)とされる。
一方、レクサス全車の2020年1~12月における世界販売総数の地域別比率は、北米:41%、欧州:10%、日本:7%、中国:31%だ。つまり欧州と日本は、ほかの地域に比べて電動車比率が高く、北米や中国は低めであるといえる。
日本市場の場合、レクサスの販売総数に占める比率は7%だが、電動車に限ると20%に達する。燃費規制の厳しい欧州も同様で、例えばイギリスは、「RC F」「LC」といった販売台数の少ない一部のスポーツモデルを除けば、現在選べるのはハイブリッド車か電気自動車「UX300e」のみとなっている。
今の情勢を考えると、電動化を強めるのは当然の成り行きだが、レクサスのようなプレミアムブランドでは運転の楽しさや心地よさも大切だ。その点で、レクサスの電動車はどうなのか?
「ハイブリッドでスポーツ走行」の矛盾
今のレクサスの電動車はハイブリッドが中心で、この走りの評価はドライバーの好みによって大きく変わる。
峠道などを積極的に走るのが好きなユーザーは、エンジン回転の上昇の鋭さが、高回転域/高速域になるほど増していく感覚を好む。カーブの手前でシフトダウンする時も、機敏な吹け上がりを楽しみたい。
そういう欲求にハイブリッド車の運転感覚は合わない。レクサスのなかで搭載車種の多い、2.5リッター直列4気筒のハイブリッドの場合、峠道の登坂路でアクセルペダルを深く踏み込むと、まずはエンジン回転数が高まり、その後を追いかけるように速度が上昇する。違和感が強くなり、前述の楽しさはそがれてしまう。
今のハイブリッドモデルにはシフトパドル装着車も用意されており、有段式ATのシフトダウンに似た操作も行えるが、あくまで疑似的な変速機能にすぎない。本物の有段式ATやMTと違って、歯切れのいい変速操作は行えない。さまざま用意される走行モードを変更したところで同様だ。たとえ、最もスポーティーとされるモードを選んでも、それで劇的に運転が楽しくなるわけではない。
これは当然だろう。もともとハイブリッドは環境/燃費性能を向上させる技術で、スポーツ性能を高めるものではないからだ。エンジンの回転数を高めにキープしやすくなるパドルシフトも「こういう使い方もできます」という副次的な機能だ。
洗練度や快適性に強み
その一方で、ことさらエンジン回転を高めたりせず、Dレンジで心地よく走りたいユーザーには、ハイブリッドモデルや電気自動車は魅力的だ。
例えば高速道路や街なかを一定速度で巡航する時、オートマチック車のエンジン回転数は1700~2200rpm程度の低い領域にとどまることが多い。この時に登り坂に差し掛かってアクセルペダルをそっと少し踏み増すと、有段式ATであればシフトダウンしたり、CVTなら無段階に変速してエンジン回転を高める。いずれもエンジンノイズが少し高まる。
しかしハイブリッドでは、反応の素早いモーターが駆動力を増大させる。あくまでも感覚的な話だが、エンジンの負担を増すことなく、モーターの力によって静かに坂道を登っていくような印象を受ける。加速も滑らかだ。
レクサスの2.5リッターハイブリッドの動力性能は、絶対的なフル加速でみれば、純粋な内燃エンジンの2.8リッタークラスに相当するのだが、登り坂でアクセルペダルを少し踏み増した時などは、3.5リッタークラスではないかと思える時もある。かように、アクセルペダルを緩く踏み増した時ほどメリットを感じるのだ。
ハイブリッドは環境性能/燃費性能が重要だから、摩擦抵抗の類いは極力抑えることが望ましい。その効果で車両全体の動きも滑らかになり、洗練された印象が強まっている。ハイブリッドは、スポーツ性能という点ではレベルが低いかもしれないが、快適な運転感覚という意味では、プラスに作用するメカニズムといえる。
その意味で「LS」や「RX」が搭載する3.5リッターV型6気筒のハイブリッドは、パワー重視の傾向が強い。加速力は優れているが、2.5リッター直列4気筒のハイブリッドに比べると、電動車らしさや草食系のイメージは希薄だ。妙に肉食系のキャラクターが交じっているところは、ハイブリッド車の運転感覚としては中途半端に思える。
電動化にマッチした気持ちいいクルマに
電動レクサスの運転の楽しさは、2.5リッターハイブリッドの方向で発展する。環境性能/燃費性能の要請もあるが、それだけではない。ボディーやサスペンションの取り付け剛性、ステアリングの支持剛性などが高まったことで、このパワーユニットで「正確に運転すること」に喜びを見いだせるようになったからだ。
表現を変えて言うなら、かつてのテールスライドや修正操舵を積極的に行う4輪ドリフトは、“走りの正確性”が低かった時代の楽しみ方だ。走行安定性の総合力が低いので、仮に「曲がる」方向で味つけすると、後輪を横滑りさせやすい危険なクルマになってしまう。そこで、いわゆるアンダーステアに設定して、前輪を逃がすことで後輪の横滑りを抑えた。操舵に対する反応は鈍く、操舵の正確性も低かった。
これでは峠道を走ると曲がらないし退屈だ。そこでクルマ本来の設定に反して、後輪を横滑りさせて車両を内側に向けた。競技の場合はまったく別の意味があるが、峠道などで遊ぶ時にアクションを与える目的は、こういうものだった。
しかし今のクルマはキチンとしている。運転操作に対して正確に、忠実に反応するから、普通に走るだけでも一体感を味わえて楽しく気持ちがいい。最新の「レクサスIS300h」などは、このあたりがマイナーチェンジで見違えるほど良くなった。レクサスを含め、今のクルマは電動化にマッチする方向へ発展している。
そういえば、今の若い人たちも、総じて品行方正でしっかりしているように思う。私なんぞはまるで、いい加減だった“昔のクルマ”ですね。正確性が低く、ダラダラとアンダーステアが出る。だから排出ガス規制前の3代目「カローラセダン1600GSL」で、テールスライドさせていた。人もクルマも、昭和の昔話です。
(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)
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渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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