第98回:ただいま「プリウス」増産中! 〜トヨタの工場覗いてみたら……?
2009.06.26 エディターから一言第98回:ただいま「プリウス」増産中! 〜トヨタの工場覗いてみたら……?
発売からわずか1カ月で、目標の20倍近い18万台(!)を受注したという、ハイブリッドカー「プリウス」。
いまごろトヨタは、スゴい勢いで作っているんだろうなぁ。
……って、いったいどこで? どんな風に?
ちょっと様子を見てみたい、“売れっ子の生まれ故郷”をたずねてきました。
現場はテンテコ舞い
|
東京から約3時間。やってきたのは、愛知県豊田市にある、トヨタ自動車「堤工場」。来年で40才。1970年から操業を続けるこちらのプラントでは、「プリウス」をはじめ、「カムリ」「プレミオ」さらに輸出用の「サイオン」など、同社の中型車が作られている。ごらんのように、奥の奥は、霞んじゃってます。とにかく広い!
|
門の傍らに掲げられるのは、看板商品「プリウス」の大看板。ほかにもう1カ所、トヨタ車体の富士松工場でもプリウスは作られている。
ふたつの工場をあわせて、月の目標生産台数は約5万台。そのうち3万台強を堤工場が担う。
国内に流通するのは約2万5000台なんだとか。当初予定されていた月間目標販売台数の2.5倍におよぶ“フル稼働状態”ではあるけれど、なにせバックオーダーは18万台。単純に計算しても、納車まで7カ月待ち(!)となる。ひー。
|
工場見学のスタート地点になるビジターセンターの屋根は、ぴかぴかのソーラーパネルとフカフカの芝生で覆われていた。奥に見える製造棟の上にもソーラーパネル。堤工場全体では、1時間あたり2100kw以上の太陽光発電を行うという。
……それって、どれくらいの規模なんでしょうか?
「一般家庭だと、約500世帯ぶんの消費電力に相当しますね」 ふー!
|
「撮影禁止!」な場所をスリ抜け、ここはいきなり組み立てライン。TVコマーシャルでもおなじみのスーパーマン(の垂れ幕)が見学者を迎える。
CM同様、「スクープ!」なプリウス情報がお伝えできるといいのですが……?
|
組み立てラインは、床そのものがベルトコンベヤーになっている。その上に立つ作業スタッフは、天井から吊り下げられる車体と同じ速度で動きながら、次々とパーツ類を組み付ける。世界中から届くそれらパーツの数は、主要部品で800点、ボルトやナット類が1250点におよぶという。いやはや。
|
次々とラインを流れる、プリウス。プリウス、プリウス、プリウス、プ?……プレミオ!?
アリオン(写真)の姿も。ラインは基本的に、さまざまなモデルの「混流」だ。そのうちハイブリッド車だけが、インバーターや高圧ケーブルといった独自のパーツを備える。だから、ライン全体の作業効率を落とすことなくそれら“変り種”をインストールできるかが、生産技術のウデの見せドコロ! というところ。
見上げたもんだ!?
……と、傍らを通過するのは、「無人搬送機」。読んで字のごとく、自動運転でパーツを運ぶ機械だ。
路面をセンサーで読みながら、大きなインストゥルメントパネルモジュールを、右へ、左へ。所定の場所に到着すると、180度クルリと向きを変えて、「さぁどうぞ」と作業員にパーツを差し出す。ロボの手も借りたいほど、忙しい工場なのである。
女性の姿も、けっこう目立つ。写真は、重量50kg(!)のインストゥルメントパネルを組み込んでいるところ。組み込みもロボットがサポートしてくれるから、女性でも楽々……に見えるのはシロート考えなのでしょう。その手際のよさといったら!
宙に舞い上がる、プリウス!
車体は常に吊り下げられていて、あちらのラインからこちらのラインへと軽々移動を繰り返す。
う〜ん、かなり異様な光景だ。クルマの真下なんて滅多に見られないぞ……! と、カメラを構えるも、アレ? ほかの見学者は、別の光景に気をとられている様子。
みなさんが熱心に眺めていた光景は、こちら。ズラリ並んだプリウスが次々リフトアップされて、下まわりのパーツが次々と組み付けられる。ここも、床はコンベヤー。
てきぱきと、「エンジンアンダーカバー」を取り付け中。これもまた、プリウスの空力性能(Cd値=0.25)をささえるパーツのひとつだ。
このグレードは、「G」かな? それとも「S」かな? 上級の“ツーリングセレクション”になると、フロアアンダーカバーやリアバンパースポイラーが付いて、さらにエアロな仕様になるハズだから……ぶつぶつ。
よ〜く見ると……気付きましたか? これって、左ハンドル車。
堤工場のラインでは、他のモデルだけでなく、輸出用車も混流するのだ。ラインを流れるプリウスの、ちょうど半分が海外に向けて出荷されるとのこと。
これも輸出用だとすぐわかる。だって、こんなピカピカした金色は、国内では売ってないから!
写真、Bピラーの奥に置かれた箱に注目。各作業に必要なパーツはこのようにハコ単位で持ち込まれ、作業スタッフが所定の場所にテキパキと取り付けていく。
作っただけじゃ終われない
場所は変わって、日焼けサロン。ではなくて、品質検査のライン。蛍光灯の映り込みをたよりに、傷やヘコミをチェックする。街の板金屋さんで見たことのあるかたも多いのでは?
「なんだか、車検場みたいだな……」と、誰かがつぶやく。ここも一応、検査場ですから! ただし、相手はトヨタの新車。その検査基準は、めちゃくちゃ厳しい(はず)。
以後、電装品、タイヤ切れ角、走行、ブレーキ、エンジン、足まわり、エアバッグ……検査項目がゾクゾク続く。
こちらのラインは、本当に日焼けサロン状態。3代目から備わった注目のオプション、ソーラーパネルの検査もしっかりと。全ての車両について、実際にハロゲンライトをソーラーセルに当てて発電能力を試す。
「遮音ブース」の文字が見えますか? こちらは静粛性をチェックするためのコーナー。たかが音というなかれ、お客さまからの苦情の大半は、異音に関するものだそうな。防音壁やグラスウールの天井に囲まれた静か〜なラインで、しかし厳しいチェックは続く。
ラインのすぐ外にある、通称「プリウスの森」。付近の川よりクリーンだという工場廃水の池に、鯉が泳ぐ。屋上のソーラーパネルやおびただしい植樹など、この1枚の写真には、堤工場のエコっぷりがたっぷりと……いわく、「エコなクルマは、エコな工場から」なのだそうだ。
この日の見学時間は、のべ約3時間。堤工場は1分間に2台生産できるというから、こうしている間にも300台以上のプリウスが生まれた計算だ。
見学のお土産に1台いただいても、さほど数に影響がなさそうなほど(?)、怒涛の大量生産。もうすぐ、いつもの道でも、この顔がたくさん見られるようになるでしょう!
(文と写真=webCG関顕也)

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。