クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4210×1790×1485mm/ホイールベース=2575mm/車重=1290kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4DOHC16バルブターボ・インタークーラー付き(122ps/5000rpm、20.4kgm/1500-4000rpm)/価格=275万円(テスト車=308万6000円/RNS510+ETC+Media-in+マルチファンクションステアリング+リアビューカメラ=33万6000円)

フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)【試乗記】

大きな石 2009.06.23 試乗記 サトータケシ フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)
……308万6000円

ゴルフといえば、マジメな優等生という評価が通り相場。でも、新型「ゴルフTSIコンフォートライン」に乗っていると、このクルマは相当のワル、不良ではないかと思えてきた。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

おぬし、ワルよのう

6代目となる新型「ゴルフ」の安いほう、車両本体価格275万円の「ゴルフTSIコンフォートライン」にカーナビとETC、リアビューカメラのオプションを付けると308万6000円。個人的にはこれ以上のオプションは必要ないから、300万円ちょいで家族4人が乗れるファーストカーが手に入る。

するとどうでしょう。この300万円ちょいのベーシック仕様と、400万円、500万円クラスのクルマとの違いはどこにあるのか? ホントに100万円、200万円の価格差ほどの違いがあるのかと、疑いの目を向けたくなる。新型ゴルフは、「大きい方がエラい」「高いほうが高級」という世の中の秩序を乱す。そういう意味で、新型ゴルフは風紀委員が眉をひそめる不良ではないかと思うわけです。

ゴルフに乗り込んでドアを閉めると、「バスン!」といい音が響く。機能重視のインテリアの基本的な意匠は先代と変わらないけれど、黒い樹脂部分の素材の手触りが滑らかになり、エアコン吹き出し口の周囲がクロームでお化粧され、平板だったメーターまわりが立体的な造形になった。質感が高まった、というのはまわりくどい言い方で、ありていに書けば先代より高く見える。
ホイールベースと前後トレッドは先代と同じだから、室内の広さは変わらないけれど、印象としてはかなりリッチになった。実用車の範疇を超えている、と言っても過言ではない。

たっぷりとしたサイズといい、ふんわりしっかりサポートする形状といい、ほどよい背もたれと座面の硬さといい、好ましいシートに収まってエンジンを始動。アイドリング状態での静かさと振動の少なさも、先代からかなり進歩している点だ。そして7速DSGをDレンジに入れて走り出すと、「おぬし、ワルよのう」の思いはさらに強くなる。


フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)【試乗記】の画像 拡大
先代でも8つのエアバッグを備えることで高い衝突安全性能を誇っていたが、新型ではニーエアバッグが追加され、9エアバッグで万全を期す。
先代でも8つのエアバッグを備えることで高い衝突安全性能を誇っていたが、新型ではニーエアバッグが追加され、9エアバッグで万全を期す。 拡大
フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンは、新型ゴルフ導入のタイミングに合わせて新しいメインテナンスプログラム「フォルクスワーゲン プロフェッショナルケア」を導入した。これは、新車登録日から初回車検満了日までの3年間の点検整備作業を工賃無償で受けることができるプログラム。
フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンは、新型ゴルフ導入のタイミングに合わせて新しいメインテナンスプログラム「フォルクスワーゲン プロフェッショナルケア」を導入した。これは、新車登録日から初回車検満了日までの3年間の点検整備作業を工賃無償で受けることができるプログラム。
拡大
フォルクスワーゲン ゴルフ の中古車webCG中古車検索

ヒエラルキーをブッ壊した

1.4リッターのガソリン直噴エンジンにターボチャージャーを組み合わせたTSIシングルチャージャーユニットは、発進と同時に力強く車体を引っ張る。最大トルク20.4kgmを、アイドリングより少し上の1500rpmから発生するというスペックに偽りはない。ただ力があるだけでなく、シャリーンと回転を上げるフィーリングも上品。ボディの遮音がしっかりしていることもあって、室内は校了明けの雑誌編集部のように穏やかだ。

高回転域でフンづまるような感触が玉にキズではあるけど、それ以外は1.4リッターという小排気量であることを感じさせない。高回転域での「ギュイーン」をお望みの方は、160psのツインチャージャーユニット搭載の「ハイライン」をお求めください、ということだろう。
個人的に、「コンフォートライン」の122psシングルチャージャーユニットと「ハイライン」の160psツインチャージャーユニットの違いは、パワーよりフィーリング面でのほうが大きいと思える。

このエンジンにふれていると、排気量が大きいほど立派、シリンダーの数が多いほど格が上だといういままでの常識は何だったのか、と思わずにはいられない。1.4リッターより3リッター、4気筒より6気筒といったヒエラルキーをブッ壊すわけだから、このエンジンも不良だ。

7段DSGは、フツーにアクセル操作を行うと早め早めにシフトアップする。ただしシフトショックはほとんど感じられないから、変速が煩雑だという印象は受けない。受けるのは、効率よく変速しているという印象である。ポンポンポン、と、一番美味しいところをつまみ食いしながら速度が上がっていく。このパワートレーン、不良だけど賢い。

直噴+過給エンジンと、リファインが進む乾式7段DSGを組み合わせた最新のパワートレーン。今後は、この組み合わせがVWグループの主流となる。
直噴+過給エンジンと、リファインが進む乾式7段DSGを組み合わせた最新のパワートレーン。今後は、この組み合わせがVWグループの主流となる。 拡大

フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/7AT)【試乗記】の画像 拡大
日本における新型ゴルフは、1.4リッター直噴エンジン+ターボ(122ps)を積む「コンフォートライン」(275万円)と、1.4リッター直噴エンジン+ターボ+スーパーチャージャー(160ps)搭載の「ハイライン」(312万円)の2グレード展開。
日本における新型ゴルフは、1.4リッター直噴エンジン+ターボ(122ps)を積む「コンフォートライン」(275万円)と、1.4リッター直噴エンジン+ターボ+スーパーチャージャー(160ps)搭載の「ハイライン」(312万円)の2グレード展開。 拡大

ゴルフの役目は終わっちゃいない

市街地から高速道路、山道まで、乗り心地はどんな場面でもしっとりしている。ひらひらと軽快なコーナリング、というのとはちょっと違うけれど、ワインディングロードで飛ばすような場面でも動きは素直で、清々しい。ウェット路面や、コーナリング中に凸凹と遭遇するような場面でもどっしり安定しているのは嬉しい限り。頼りがいのあるがっちりしたボディと懐の深い足まわり、そしてよくできたシートなどがあいまって、東京→大阪ぐらいなら軽く走れそうな気になる。

快適に、安全かつスピーディに移動できるというドイツ車的な美点はそのままに、ダウンサイジングしたエンジンとDSGで燃費の良さも追求した「ゴルフTSIコンフォートライン」は、かなり利口そう。このクルマに乗っていると、自分まで頭がよくなったように錯覚してしまう。

となると、より大きなボディに大排気量エンジンを積むクルマの立場は? ライバルメーカーに限らず、フォルクスワーゲンだって大変だ。ゴルフより上のクラスは、大きなボディとエンジンを使うことの根拠を示す必要がある。ゴルフより下のクラスは、ゴルフ以上に効率を追求しなければならない。

よりコンパクトなクルマやハイブリッド車の台頭もあって、「ゴルフの役割は終わった」という見方もある。それも一理あるかなと思っていたけれど、じっくりと新型ゴルフに乗ってみると、やはりゴルフは自動車界の真ん中にいる。クルマ全体の底上げを担うゴルフが投じる一石は、とても大きな石だ。

(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)

荷室の広さや使い勝手は旧型と変わらない。リアゲートの「VW」のエンブレムがノブになっている。
荷室の広さや使い勝手は旧型と変わらない。リアゲートの「VW」のエンブレムがノブになっている。 拡大
「ゴルフTSIコンフォートライン」が装着するタイヤサイズは205/55R16、一方、「ハイライン」は225/45R17となる。タイヤの違いとサスペンションのセッティングの違いがあいまって、今回試乗した「コンフォートライン」のほうが日常領域ではしなやかで軽快。スポーティに味付けた「ハイライン」よりも、こちらを好む人もいるはずだ。
「ゴルフTSIコンフォートライン」が装着するタイヤサイズは205/55R16、一方、「ハイライン」は225/45R17となる。タイヤの違いとサスペンションのセッティングの違いがあいまって、今回試乗した「コンフォートライン」のほうが日常領域ではしなやかで軽快。スポーティに味付けた「ハイライン」よりも、こちらを好む人もいるはずだ。 拡大
サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

試乗記の新着記事
  • スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
  • ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
  • スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
  • トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
  • BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
試乗記の記事をもっとみる
フォルクスワーゲン ゴルフ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。