フォルクスワーゲン・ティグアン スポーツ&スタイル(4WD/6AT)【試乗記】
ティグアンの本命は? 2009.04.20 試乗記 フォルクスワーゲン・ティグアン スポーツ&スタイル(4WD/6AT)422.0万円
フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「ティグアン」に上級モデルが追加された。スタイリッシュなエクステリアに専用装備が追加された“都会派”は、どんな走りを見せるのか。
オンロードに主眼をおいた
「トラック&フィールド」か、それとも「スポーツ&スタイル」か。「ティグアン」の購入を考えているドライバーで、どちらにしようか思い悩んでいた人は多いだろう。両者が揃ったところで決めたいという人たちにとって、まさに待ち焦がれていたのが「スポーツ&スタイル」の登場である。
ヨーロッパで高い人気を集め、日本では2008年9月の発売から約5カ月のあいだに1800台を販売したフォルクスワーゲン初のコンパクトSUVが「ティグアン」。発売当初は、オフロードテイストを強めた「トラック&フィールド」だけのラインナップだったが、約半年遅れで上級グレードのスポーツ&スタイルが追加となった。
スポーツ&スタイルは、オンロードでの使用に主眼をおいたモデルで、都会的な雰囲気を重視したのが特徴だ。それはデザインに大きく表れていて、なかでもフロントまわりは両者の性格の違いを明確にしている。
トラック&フィールドがアプローチアングルを確保するために、バンパー下を斜めに切り落として、アンダーガードを装着するのに対し、スポーツ&スタイルでは、フラットなデザインを採用している。好き嫌いはあるだろうが、私はスタイリッシュなスポーツ&スタイルのほうがティグアンというクルマにはお似合いだと思う。
価格差に見合った内容
フロント以外でも、サイドウィンドウを囲むメッキパーツやシルバーのルーフレール、17インチにサイズアップしたタイヤ&ホイールなど、都会派らしい演出に抜かりはない。
一方、最低地上高はトラック&フィールドと同じ170mmで、駆動方式もFFとはせず、トラック&フィールドと同じハルデックス式のフルタイム4WDを採用しているから、よほどのラフロードに分け入るのでなければ、(トラック&フィールドに)遅れを取る心配はないはずだ。
両者の違いはデザインだけではない。422万円のスポーツ&スタイルと367万円のトラック&フィールドには、それ相応に内容の違いがあるのだ。その最たるものがエンジン。トラック&フィールド同様、2リッター直噴ターボ(2.0 TSI)を搭載しながら、最高出力はチューンの違いにより30psアップの200psを誇る。
装備品では、純正HDDナビ(RNS510)と、“MEDIA-IN”と呼ばれる携帯プレーヤー接続装置、ETCが標準となる。また、シート地の一部にアルカンターラを用いたスポーツシートや盗難警報装置なども付いてくる。これにタイヤ&ホイールなどのグレードアップぶんが加わるのだから、55万円の価格差は十分に納得できるものだ。
快適さと力強さ
しかし、一番の違いはその走りっぷりにあった。まずは足まわり。カタログには謳われてないが、足まわりのチューニングは明らかに異なる。トラック&フィールドの動きはSUV的というか、多少落ち着きがなかったのに対して、スポーツ&スタイルではフラット感があり、とくに高速を巡航するような場面での快適さは一枚上だ。
一方、タイヤ&ホイールのインチアップで乗り心地の悪化が心配されたが、短時間の試乗では17インチ化の弊害は感じられなかった。
動力性能については、トラック&フィールドと同様に2000rpm以下から余裕を見せるが、その後が大きく違う。トラック&フィールドは5000rpmを超えたあたりから勢いが衰えるのに対し、スポーツ&スタイルではレブリミットの6500rpm付近までストレスなく吹け上がるのだ。ここ一番という場面で力強いのはなんとも頼もしく、それでいて10・15モード燃費は0.1km/リッターしか劣らないというのはうれしいところだ。
ちなみに、ティグアンはオフロード走行を考慮して、トルコン式の6段オートマチックを搭載したとのことだが、スポーツ&スタイルだけにでもデュアルクラッチのDSGがほしい。そうなれば両者の燃費は逆転するに違いない。
フォルクスワーゲンらしい上質なつくりやしっかりしたボディ、比較的コンパクトなサイズながら必要十分な室内空間を提供する特徴は、どちらのグレードにも共通。あとは、オンとオフのどちらを重視するかということになるが、おそらく多くのユーザーはオンロードがメインということを考えると、スポーツ&スタイルの快適さはひとつの決め手になるのではないか。ティグアンの本命は「スポーツ&スタイル」、というのが私の率直な感想である。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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