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【スペック】クーペ:全長×全幅×全高=4380×1865×1255/ホイールベース=2600mm/車重=1630kg/駆動方式=FR/4.7リッターV8DOHC32バルブ(426ps/7000rpm、47.9mkg/5750rpm)/価格=1554.0万円〜1609万6500円

アストン・マーティンV8ヴァンテージ【海外試乗記(前編)】

ベッツ政権が生んだ小さな宝石(前編) 2008.08.20 試乗記 大谷 秀雄 アストン・マーティンV8ヴァンテージ
……1554.0万円〜1756万6500円
アストン・マーティンのピュアスポーツカー「V8ヴァンテージ」がビッグマイナーチェンジを受けた。別物となったV8ユニット、新装されたインテリア。CG大谷英雄がドイツで試乗した。

『CG』2008年8月号から転載。

ニュル24時間での快挙

2008年5月のニュルブルクリング24時間で、SP8クラスに参加したV8ヴァンテージN24は、見事にクラス1-2-3を占めるという快挙を成し遂げた。

ウルリッヒ・ベッツCEOも昨年に引き続きV8ヴァンテージN24で参戦し、そちらの7号車もクラス3位に入賞したのだが、ベッツさんは今年なんと65歳を迎えるという。世界中でここまで気持ちの熱い自動車メーカーのCEOが他にいただろうか? そうしたCEOの姿に鼓舞されて、社内の士気はこれまでになく高く、それは製品にも確実に反映されているとアストンのスタッフは言う。

なぜ、こんな書き出しで始めるかというと、V8ヴァンテージの試乗会に招かれたわれわれ日本人ジャーナリストも、24時間レースをスタートからフィニッシュまで存分に観戦する機会を与えられ、好運にも勝利の美酒のお裾分けに浴することができたからだ。

ニュルブルクリング・サーキットの近くには自動車関連のヴィレッジ・インダストリーがあり、そこにアストン・マーティンは新規にテストセンターを開設したばかりで、われわれが現地入りした日がちょうど“こけら落とし”に当たった(われわれは数時間の差で間に合わなかったが)。テストセンターの目的はショールーム機能としての新車の商談はむろんのこと、車両メインテナンス、それも軽整備のみならずニュルを走るようなハイエンドな顧客向けのサーキットサービスまで担当し、ご希望とあらばガレージスペースも提供してマシーンを預かってくれるという。また、ここでは広報車の貸し出しも行なうので、ドイツで試乗会が催された際には重要な拠点として今後われわれも世話になる機会が増えるはず。

それだけに気持ちも新たに臨んだのであろう、“ニュル24時間”での快挙は、アストンのスタッフにとっては喜びもひとしおだったらしく、祝賀会では誰彼かまわずにハグし合い、歓声を上げ、若い女性スタッフ数人が不思議なダンスを踊りまくり、涙ぐむ人もあり、皆が気持ちを爆発させていた。

ベッツ政権も7年が過ぎて、同氏が牽引役として、アイコンとしてアストン・マーティンを率いてきたその成果が花開こうとしている瞬間に、われわれも運良く居合わせていることを実感させられた。なにもレースに限ってのことではない。それはビッグマイナーチェンジを受けたV8ヴァンテージの仕上がりから確かな手応えを感じ、それを踏まえた上で述べていることなのだ。


アストン・マーティンV8ヴァンテージ【海外試乗記(前編)】の画像 拡大
330km/h、8000rpmまで刻まれたメーター類は以前と同じ。
330km/h、8000rpmまで刻まれたメーター類は以前と同じ。 拡大
アストンマーティン V8ヴァンテージ の中古車

内実のあるマイナーチェンジ

写真のV8ヴァンテージを見ても変化がわからず、どこがビッグマイナーチェンジなのだ? と訝る人もいるだろう。確かに。よく見れば19インチ・ホイールのデザインが新しく、ルーフ後端にあったロッドアンテナもウィンドー貼り込み式に改められて姿を消しているのだが、外観上の違いはその程度にすぎないのだから無理もない。

しかし車体内部へ目を向けるとその考えは一蹴されるはずで、V8エンジンの4.3→4.7リッターへの排気量アップ、サスペンションの刷新、ギアボックスには大幅に手が入り、内装ではセンターコンソール周りのデザインが先にデビューしたDBSに準じたものに改められるなど、刮目すべき点は多い。

これまで4278cc(89×86mm)の排気量から380ps/7300rpm、41.8mkg/5000rpmを得ていたV8エンジンは、今回ボア91mm×ストローク91mmのスクエアとなって4735ccへと進化、もちろんボア・ストローク値が変わったのだから鋳造アルミピストンと鍛造コンロッドは新造され、広がったボアに合わせて吸気バルブも34.9→35.9mmに大径化されている。

そもそもボア・アップを可能とするには、径が増した鋳鉄ライナーを納めるためのスペースを各シリンダー間に稼ぐ必要があり、そこで従来の合金ブロックに鋳鉄ライナーを鋳込んでいた製法に代えて、あらかじめブロックを成型した後にライナーを圧入するプレス工法に改められた。当然、高い精度を要求されるわけだが(V型エンジンとなればなおさら)、おかげでより薄いライナーを使用できるようになってボアの拡大が実現したという。他にも鍛造クランクの形状変更や効率化を求めてドライサンプ・システムの引き回しが変えられるなど見るべき点は多いが、とにかくブロックそのものの製法まで変更されているのだから、これはもう別物と呼んで差し支えないだろう。

生まれ変わったV8ユニットは、出力が12%アップの426s/7000rpm、トルクが15%アップの47.9mkg/5750rpmまで発展しており、これまで価格で拮抗していたポルシェ911GT3(415ps)と、馬力でも肩を並べたことになる。

またデフの直前に配されるトランスアクスル方式を採るギアボックスに関しては、グラツィアーノ製の6MTおよび“スポーツシフト”と呼ばれるセミATともども、鋭いエンジン・レスポンスを得るためにフライホイールが軽量化され、さらにクラッチディスク/スプリングを見直すことで6MTモデルの場合、ペダル踏力が0.5kg軽減されている。(後編へつづく)

(文=CG大谷秀雄/写真=Aston Martin Lagonda Limited)

以前の4.3リッター時代、本国では18インチ・タイアが標準装備で、19インチはオプションであったが、今回から19インチがスタンダード・タイアに格上げされた。写真は20スポークでシルバー仕上げの標準ホイール。サイズは、前8.5J×19、後9.5J×19となる。
以前の4.3リッター時代、本国では18インチ・タイアが標準装備で、19インチはオプションであったが、今回から19インチがスタンダード・タイアに格上げされた。写真は20スポークでシルバー仕上げの標準ホイール。サイズは、前8.5J×19、後9.5J×19となる。 拡大
4278cc(89×86mm)から4735cc(91×91mm)へ排気量が拡大されたV8 DOHC 32バルブエンジン。内部パーツは大幅に刷新されている。吸気側に可変バルブタイミング機構あり。開発責任者のデイヴィド・クロスによれば、ニュルブルクリング北コースでのラップタイムは、4.3リッターの8分5秒から4.7リッターは7分55秒へ向上したとのこと。エンジン単体重量は4.3リッターとほぼ同じ約220kgである。新型エンジンではドライサンプ・ユニットの引き回しを変更したことでオイル潤滑の効率が上がり、燃費が向上、CO2排出量も4.3リッター時代の406g/kmから6MT:328g/km、スポーツシフト:312g/kmまで削減した(200gくらいまで減らしたいとの由)。
4278cc(89×86mm)から4735cc(91×91mm)へ排気量が拡大されたV8 DOHC 32バルブエンジン。内部パーツは大幅に刷新されている。吸気側に可変バルブタイミング機構あり。開発責任者のデイヴィド・クロスによれば、ニュルブルクリング北コースでのラップタイムは、4.3リッターの8分5秒から4.7リッターは7分55秒へ向上したとのこと。エンジン単体重量は4.3リッターとほぼ同じ約220kgである。新型エンジンではドライサンプ・ユニットの引き回しを変更したことでオイル潤滑の効率が上がり、燃費が向上、CO2排出量も4.3リッター時代の406g/kmから6MT:328g/km、スポーツシフト:312g/kmまで削減した(200gくらいまで減らしたいとの由)。 拡大
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