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【スペック】カレラS:全長×全幅×全高=4435×1808×1310mm/ホイールベース=2350mm/車重=1425kg/駆動方式=RR/3.8リッター水平対向6DOHC24バルブ(385ps/6500rpm、42.84kgm/4400rpm)(欧州仕様車)

ポルシェ911カレラS(RR/7AT)/カレラカブリオレ(RR/7AT)【海外試乗記】

衝撃のマイナーチェンジ 2008.07.04 試乗記 河村 康彦 ポルシェ911カレラS(RR/7AT)/カレラカブリオレ(RR/7AT)
デビューから4年を経てマイナーチェンをうけた「911カレラ」。新エンジンとデュアル・クラッチ・トランスミッションの採用で大きく進化した次世代911を試す。
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完全な新設計

エンジンの直噴化に加え、「PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)」と呼称されるデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)の新採用……と、ここまでは事前に入手していた情報通り。現行の997型911がデビュー4年後にして行った“ビッグマイナーチェンジ”のメニューは、この2つに象徴される「はずだった」のだ。

ところが、試乗会前日にドイツのバイザッハ研究所で行われた技術説明会で、その詳細を聞かされ驚いた。「湿式ツインクラッチを用いたZF社製の7段ユニット」というPDKの仕様は予想した通りだが、これまでの3.6/3.8リッターユニットをベースにそのヘッド部分を直噴化、というエンジン部分に関する予想については、その根本部分で軌道修正を余儀なくされた。

というのも、排気量が3.6リッターと3.8リッターの2本建てというのは従来と同様だが、“エンジン本体”は完全なる新設計! 「もしかしたら、ビスくらいには従来型との共用品があるかも知れないけれど、その他はすべてオールニュー」というのが、開発を担当したエンジニアその人のコメントなのである。

なにしろ2タイプのこの新ユニットは、そのそれぞれが従来型と異なるボア×ストローク値を採る(従って、総排気量も以前とは微妙に異なる)。さらに、その組み立てまでもがツッフェンハウゼンの工場に新設されるラインで行われるという。
従来の「911」や「ボクスター/ケイマン」用とは全く別の新ラインで組み立てられるエンジンは、その工程に必要とされる作業時間が1割ほど短縮されているとのこと。これはすなわち、この新しい心臓が様々な合理化によって、これまで以上の利益をポルシェ社にもたらさんことをも示唆している。

潤沢な資金を元に活発な設備投資を行い、さらなる利益を生み出す仕組みを創造する――今回の新エンジンに関する様々な内容は、このメーカーがそんなサイクルの真っ只中にあることを示してもいるわけだ。

ダイレクト・フューエル・インジェクション方式、つまり直噴システムを採用した水平対向6気筒エンジン。最高出力は、従来型より3.6リッターで20ps増の345ps、3.8リッターで30ps増の385psへと大幅に進化した。
ダイレクト・フューエル・インジェクション方式、つまり直噴システムを採用した水平対向6気筒エンジン。最高出力は、従来型より3.6リッターで20ps増の345ps、3.8リッターで30ps増の385psへと大幅に進化した。 拡大

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新しい911の価格は、911カレラクーペが1162.0万円(6MT:左ハンドル)、1237.0万円(PDK:左/右ハンドル)、カレラSクーペが1376.0万円(6MT:左ハンドル)、1451.0万円(PDK:左/右ハンドル)、カレラカブリオレが1337.0万円(6MT:左ハンドル)、1412.0万円(PDK:左/右ハンドル)、カレラSカブリオレ1552.0万円(6MT:左ハンドル)、1627.0万円(PDK:左/右ハンドル)。
新しい911の価格は、911カレラクーペが1162.0万円(6MT:左ハンドル)、1237.0万円(PDK:左/右ハンドル)、カレラSクーペが1376.0万円(6MT:左ハンドル)、1451.0万円(PDK:左/右ハンドル)、カレラカブリオレが1337.0万円(6MT:左ハンドル)、1412.0万円(PDK:左/右ハンドル)、カレラSカブリオレ1552.0万円(6MT:左ハンドル)、1627.0万円(PDK:左/右ハンドル)。 拡大
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ポルシェ独自のデュアル・クラッチ・トランスミッション

今回のマイチェンでは、LED式デイランニングライトや同じくLED式のリアコンビネーションランプの新採用といった“化粧直し”もあるが、詳細については各専門誌に任せ(?)早速走り出すことにしよう。

試乗会に用意されたのは、「カレラ/カレラSクーペ」と同じくカブリオレの各モデル。4WDシリーズはわずかに遅れてのリリースとなり、「GT2」や「GT3」、ターボといった“ハードコア”系モデルは、まだマイナーチェンジ自体が報告されていない。
前述のように、マイナーチェンジメニューの“大ネタ”のひとつが「PDK」にあるので、大半のテスト車両が「PDK」装備車で、一部MTという状態だった。

まずは3.6リッターカブリオレのPDKモデルで走り出す。エンジンフィール以前に感心させられたのは、PDKの微低速での「マナーの良さ」だった。
同じ2ペダルMTのフォルクスワーゲンの“DSG”や「日産GT-R」の“デュアル・クラッチ・トランスミッション”、「三菱ランサーエボリューション」の“TC-SST”など、この種のトランスミッションがこれまで最も苦手としていたのがこの領域。
わずかにアクセルペダルを踏み込んだだけなのに飛び出し気味にスタートしたり、渋滞の最中、ギクシャクした動きが不快だったりと、“微妙な動き”を滑らかにこなしにくいのがウィークポイントだったのだ。
ところがPDKはこのあたりを、トルコンAT車と較べてもハンディキャップなしにこなしているのだ。

実は、オプション設定の“スポーツクロノパッケージプラス”をチョイスすると、多少のシフトショックは覚悟の上で「究極的に素早いシフト」が手に入れられるといった選択肢もあるものの、常用シーンでは従来の“ティプトロニックS”に全く見劣りしないスムーズな走りを実現させてくれるのは望外ですらあった。

PDKの操作は、センターコンソールのセレクターレバーに加え、ステアリングホイールにあるシフトスイッチでも可能。左右2ヵ所に用意され、前へ押すとシフトアップ、裏側から手前に押すとシフトダウンとなる。
PDKの操作は、センターコンソールのセレクターレバーに加え、ステアリングホイールにあるシフトスイッチでも可能。左右2ヵ所に用意され、前へ押すとシフトアップ、裏側から手前に押すとシフトダウンとなる。 拡大

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【スペック】カレラカブリオレ:全長×全幅×全高=4435×1808×1310mm/ホイールベース=2350mm/車重=1500kg/駆動方式=RR/3.6リッター水平対向6DOHC24バルブ(345ps/6500rpm、39.78kgm/4400rpm)(欧州仕様車)
【スペック】カレラカブリオレ:全長×全幅×全高=4435×1808×1310mm/ホイールベース=2350mm/車重=1500kg/駆動方式=RR/3.6リッター水平対向6DOHC24バルブ(345ps/6500rpm、39.78kgm/4400rpm)(欧州仕様車) 拡大

MTモデルもあるけれど

一方で、PDKは、MTと殆ど同等という1〜6速のギアの上に、100km/h時に1750rpmという“クルージングギア”としての第7速目を用意。緩加速状態であればすでに70km/h付近でそこにシフトされるから「燃費は確実にMT以上」という理屈もある。
実は、そんなPDKの担当エンジニア氏から「もはやMTにメリットはない」というちょっと衝撃的な言葉も聞くことに。新型にもMTの設定があるのはそこに機能面でのメリットがあるからではなく、「それでも欲しい人がいるから」と、単にそれだけの理由であるというのだ……。

ところで、そんな最新の911に積まれる2種類のエンジンを比べれば、より強力なのは当然3.8リッターユニットのほう。だが、今回のテストドライブでより大きな感動を受けたのは、実は3.6リッターモデルのほうであった。

PDK仕様車同士の比較で、0→100km/h加速タイムはカレラの4.9秒に対してカレラSは4.7秒とわずかの差。ただし、これが0→200km/h加速になると17.2秒に対し15.7秒となり、やはり「両車の差」は厳然と存在していることがわかる。
けれども、体感上で言うとむしろ5500rpm付近からパワーがググンと伸びる感じの3.6リッターユニットのほうが、むしろスポーツカーらしいエモーションに富んでいると、感じられたのだ。従来型との差で言うと、「200km/h超からの加速が圧倒的に速い」のが新型3.6リッターという印象だ。

ちなみに、こうして「完全ニュー」を謳う新型の両エンジンだが、そのサウンドは従来型に対してそう大きくは変わっていない感触。が、あえていえばここでも従来は明確だった3.6と3.8リッターユニット間の差が、随分と縮まったように思えた。

こうして、パワーパックを一新という“衝撃のマイナーチェンジ”が実施されたのが最新の911カレラ/カレラSシリーズ。これだから、ポルシェにはどこまでいっても「一体いつ買えばいいのか?」という悩みが尽きないのだ。

(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン)

トランスミッションは6MTが標準で、新採用されたPDKはオプションとして設定され、従来のティプトロニックSに代わるものとなる。
トランスミッションは6MTが標準で、新採用されたPDKはオプションとして設定され、従来のティプトロニックSに代わるものとなる。 拡大

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河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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