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【スペック】全長×全幅×全高=4345×1900×1165mm/ホイールベース=2560mm/車重=1410kg/駆動方式=4WD/5.2リッターV10DOHC40バルブ(560ps/8000rpm、55.1kgm/6500rpm)/価格=2310万円

ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4(4WD/6MT)【海外試乗記】

双頭の牛 2008.06.30 試乗記 青木 禎之 ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4(4WD/6MT)
……2310万円

「パワフル・エレガンス」を標榜するニュー・ランボルギーニ、ガヤルドLP560-4。軽いボディ、強い心臓を手に入れた小柄な猛牛はどうなのか? 『NAVI』青木禎之がラスベガスで乗った。
『NAVI』2008年7月号から転載。
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6〜7秒

新しいランボルギーニ・ガヤルドは、V10の排気量が5リッター(500ps)から5.2リッター(560ps)になったのがトピックである。サブネームはLP560-4。560は最高出力、-4は4WDの意。なぜいまさらヨンクを表明するのかは、問わない約束だ。

プレス試乗会は北米ラスベガスで開催された。試乗前夜、「ショーケース・ディナー」に招かれた。イベント用の大きなテントの前でカクテルパーティ。白と黒、2台の新型ガヤルドの横で、ビスポークスーツできめたS・ヴィンケルマン社長がジャーナリストたちと歓談している。

見知ったテストドライバーの人がいたので、「エンジンが大きくなったそうで……」と水を向けると、マッチョな彼は完爾と笑い、
「それだけじゃありませんよ。サスペンションも変わりました。スプリングも、ダンパーも、スタビライザーまで一新されました」と応える。
「ハンドリングをブラッシュアップした?」
「それもありますが、むしろ乗り心地に留意しました。快適性に」
なるほど。ラスベガスの路上で見せびらかすのにピッタリですね、と言うと、口もとの笑みが大きくなった。
ただ、軟弱になったと取られると困ると思ったか、ロボタイズド6段MTたる「eギア」に「ノーマル」「スポーツ」の上を行く「コルサ」(レースモード)が加わったことが強調された。
「シフトが40%も早くなりました」

しかし、日本のユーザーにとってより気になるのは、「ノーマル」「スポーツ」と、2段階が用意されるオートマチックモードのスムーズさだろう。

白いテントの入り口に、もうひとり知り合いのドライバーがいた。挨拶の後、新旧モデルがテストコースでどのように違うのかを聞きたいと思って、「サーキット……」と口にしたとたん、「今度のガヤルドは、ニュルブルクリンクで開発したんだ」と細身の彼は言葉をほとばしらせた。
「ノルド、でね」。
意味ありげにニヤリとして、胸を張る。いまさらニュルを自慢されても……とは露とも思わない。だって、ランボルギーニだもの。
「どれくらい速くなったんですか? つまり、5リッターモデルと比較して」
「そう、6〜7秒……」
「それはすごい!」。熱心にメモするリポーターを見て、いや、10秒くらいかな、と言って片目をつぶった「ホープフリィ(願わくば)」

スタッフの人に促されて食事の席に着く。無粋な(?)技術説明は明日の朝ということか、まずはファッショナブルなイメージフィルムがテントの壁に投影される。スクリーン上を疾走するガヤルドのサウンドがやけにリアルだなぁと感心していたら、大きなテントのまわりを、白と黒のガヤルドがグルグル回っていた。なるほど、それでドライバーが2人いたわけか。

ヘッドライトは、バイキセノンタイプになった。
ヘッドライトは、バイキセノンタイプになった。 拡大
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82.5×92.8mmだったボア×ストロークのボアを拡大、84.5mmとしたニューV10。ダイレクトインジェクションだ。
82.5×92.8mmだったボア×ストロークのボアを拡大、84.5mmとしたニューV10。ダイレクトインジェクションだ。 拡大
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0.1秒から0.3秒

翌日、ヘリコプターでラスベガス・スピードウェイに降り立つ。ガヤルド“にわか”オーナーの一日が始まった。
ネバダの強い日差しの下、クールなランボが並ぶ。大きくなったフロントエアインテークがエンジン強化を暗示する。いいな、と思わせるのが新しいテール部分で、コンビネーションランプが天地に薄く、エアベントは横一線、ルーバーは廃止されて、煩雑だったリアがスッキリした。イタリア的混沌さが薄まった、ともいえますが。

室内のながめはあまり変わらない。ただ、センターコンソールのトグルスイッチが、メッキ調の樹脂で分厚く覆われるようになったのはゾッとしないが。パーキングブレーキの前には「S」「A」そして「スリッパリーな路面用」に代わって「コルサ」ボタンが設けられた。

まずはコースを知ろうとオートマモードで走りはじめると、オッ! 旧型より60psのパワーアップ、はよくわからなかったが、5.2リッターのキャパシティから湧き出る豊かなトルクが印象的。ピットロードのなかで、さっそくLP560−4の出足のよさに感心する。

560psの最高出力は8000rpm、最大トルクはこれまでより2500rpm高い6500rpmで3.1kgm増しの55.1kgmを得る。そのうえニューモデルの車重は20kg軽い1410kgになっており、パワー(トルク)・トゥ・ウェイト・レシオは、先代の特別軽量版「スーパーレジェーラ」と同等。0-100km/h加速は、0.1秒上まわる3.7秒とされる。旧ノーマルモデルより0.3秒速い計算だ。

スポーツカーとして、排気量が243cc拡大されてより速くなったことを、手放しで喜びたい。しかしパワープラントが新しくなったのは、そのためだけではない。シリンダーへの燃料供給を直噴式にし、圧縮比を11から12.5に高め、燃費、CO2排出量とも2割がた改善された。燃料消費量は、欧州基準でeギアがリッター7.3km、6MTが6.8km、CO2はそれぞれ327gと351g/kmである。

0-100km/h=3.7秒、0-200km/h=11.8秒、最高速は325km/hとされる。
0-100km/h=3.7秒、0-200km/h=11.8秒、最高速は325km/hとされる。 拡大
6MTをベースに、eギアがオプション。しかしユーザーの人気は後者が圧倒的だとか。ギアボックスは12.8kgも軽量化された。
6MTをベースに、eギアがオプション。しかしユーザーの人気は後者が圧倒的だとか。ギアボックスは12.8kgも軽量化された。 拡大
ポジションランプのY字は、リアでも反復される。ビスカスを用いた4WDは、通常30:70に前後トルクを分配する。
ポジションランプのY字は、リアでも反復される。ビスカスを用いた4WDは、通常30:70に前後トルクを分配する。 拡大

2310万円

前走車についてスピードウェイを行くと、ガヤルドが以前にも増して乗りやすいスーパースポーツになったのがわかる。eギアは新機軸Sカムの恩恵で、ギアを変える際のトルク抜けが劇的に減った。親会社のDSGと比較されるとちょっとツラいが、ロボタイズドタイプとしては望外にスムーズだ。Sではギアを低めに保持し、一時的なパドル操作も受け付けるから、ちょっとしたスポーツ走行ならこれで十分。

しかしここはサーキットである。マニュアルに切り替える。いつものことながらシフトダウン時の回転合わせの巧さに感嘆し、満を持してコルサボタンを押すと、ギアチェンジの速さはもとより、情け容赦のないレーシィなクラッチワークに痺れる。バルクヘッドを介してガツンガツンとロボットアームの働きが伝わってきて、ドライバーの気持ちを沸騰させる。

21世紀のランボルギーニらしく、シフトモードの切り替えはESPのロジック変更を呼び、より大きなスライドを許容する。ハードコーナリングではスロットルワークに敏感に反応してノーズが向きを変え、はたまたテールをむずむずさせてドライバーの心臓を締め上げる。一方で、カーブ手前でパドルを引くたびに響く派手なエンジン音が小心者を鼓舞し、4WDならではの強い脱出力が爽快感を誘う。ストレートでもドキドキしたままだ。

ちなみにコルサでESPをオフにすると、最終的には電子デバイスが助けてくれるノーマル/Sと異なり、未熟なドライバーはスピンする。走行前にスタッフが「くれぐれもオフにしないように」と念を押したのもむべなるかな。いや、ワタシに対してだけでなく。

クローズドコースでは存分に「スポーツ」を強調したLP560-4だが、ひとたび街なか、そして砂漠の道に出ると、昨夜のテストドライバーの言葉が思い出された。乗り心地がいい。荒い舗装でもいやな突き上げがない。デビュー当時の“生な”硬さがなくなった。洗練されたオートモードと併せ、「レーストラックも長距離ドライブも」というリリースの言葉が納得できる。

7100台というサンターガタ空前の量産モデルとなったランボルギーニ・ガヤルド。560psモデルの日本での価格は2310万円である。

(文=青木禎之/写真=NAVI、アウトモビリ・ランボルギーニ)

転がり抵抗を10%低減したピレリPzeroを履く。前235/35ZR19/後295/30ZR19のサイズは変わらない。カーボンセラミックブレーキが装着可能となった。新型はローンチコントロール「THRUST」を備える。
転がり抵抗を10%低減したピレリPzeroを履く。前235/35ZR19/後295/30ZR19のサイズは変わらない。カーボンセラミックブレーキが装着可能となった。新型はローンチコントロール「THRUST」を備える。 拡大

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青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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