米国メーカーから期待のニューモデルぞくぞく【デトロイトショー2012】
2012.01.14 自動車ニュース【デトロイトショー2012】米国メーカーから期待のニューモデルぞくぞく
米国自動車産業の聖地であるデトロイトで1月9日に開幕した北米国際自動車ショー。2012年はなんといっても日本メーカーの活躍が目覚ましかった。しかし、GMやフォード、クライスラーといった地元ビッグスリーのブースもまた、ここ2、3年は見られなかった活気にあふれていた。
■アメリカ勢に復調の兆し
2008年のリーマンショック以降、米国のビッグスリーは業績だけでなく、モーターショーの展示でも低迷が続いていた。ニューモデルの数が多いとか少ないとか、そうした展示の内容以前に、経費カットのためにブースのカーペットや照明が大幅に減らされるなど、出展していること自体が奇跡と思えるような状況だったのである。
その後、業績の回復に比例するように徐々にモーターショーの会場にも華やかさが戻ってきており、今年のデトロイトは、そんな復活の兆しがさらに鮮明になった。
道路を閉鎖して牛をプレスカンファレンスの演出に使ったり、ガラスを突き破ってニューモデルを登場させたりといったリーマンショック以前の派手な演出は一切なくなり、ブース自体も手の込んだものがあまり見られなくなったことから、掛けられるお金が潤沢でないという印象は否めない。しかし、ニューモデルの質そのものは、かなり“回復”した。新しい世代への提案を含め、次の一手はしっかりと示されていた。
ビッグスリーのなかで一番の注目は、商用系のGMCを除いたシボレー、キャデラック、ビュイックの乗用車系3ブランドでニューモデルをお披露目したGMである。
シボレーからは若者に向けて発信した2台のコンパクトスポーツ・コンセプトと「ソニック」のスポーティーグレード「RS」が出展され、キャデラックからは「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」と真っ向勝負のDセグメントFRセダン「ATS」と、昨年のロサンゼルスオートショーでも並べられた「XTS」の市販バージョンがお目見え。ビュイックブランドも、オペルとコラボしたBセグメントのSUV「アンコール」などのニューモデルが見られた。
■GMは意欲作のオンパレード
これら多くのニューモデルのうち、朝から晩まで取材陣が詰めかけていたのは「キャデラックATS」だ。単独のカメラやビデオだけでなくテレビクルーも多かったので、アメリカではかなり注目度が高いのだろう。
キャデラックはこれまでも「CTS」という「Cクラス」や「3シリーズ」に対抗しうるクルマを持っていたが、ライバルに比べるとひと回り大きいアメリカンサイズのため、地元アメリカでは問題ないものの、欧州をはじめとする他の市場では思ったほどの実績を残すことができなかった。
しかし、「ATS」のボディーサイズは全長4643mm×全幅1805mm×全高1421mm、ホイールベース2775mmと、まさにライバル車とドンピシャ。パワートレインに3.6リッターV6や2.5リッター直4といったアメリカ向きのほかに2リッター直4ターボも設定したあたり、ライバルへの対抗心が感じられる。
シボレーがお披露目した2台のコンセプトカー「CODE 130Rコンセプトクーペ」「TRU 140Sコンセプトクーペ」は、若者のクルマ離れに対してGMが示した“改善策”である。日本ほどではないものの、アメリカでもクルマに興味を示さない若者が増えているのだそうだ。GMは1万人以上の若者にアンケートを採り、その結果を受けて対策を具現したのがこの2台というわけだ。
「カマロ」にも似たプチ・マッスルカー的なスタイリングを持つ「CODE 130R」は全長4.4mのFRスポーツで、「TRU 140S」はワンモーションの流麗なフォルムに仕立てられたFFスポーツ。同じく若者のクルマ離れに歯止めを掛けるべく登場した「サイオンFR-S」(「トヨタ86」の北米市場バージョン)を意識しているのは明確である。「結局、それしかないのか?」という、ややワンパターンな印象は否めないものの、特に「CODE 130R」のような走りの楽しさに訴えるクルマが登場することはクルマ好きとしては歓迎すべきことなのだろう。
■巧みにラインナップ拡大
フォードの主役は、Dセグメントセダン「フュージョン」の新型だ。最近、「エスケープ」と「クーガ」が統合されるなど、米国フォードと欧州フォードの距離が急速に近づいているが、「フュージョン」もまた欧州フォードの「モンデオ」と“バッジ違いの兄弟車”の関係にある。
顔を変えただけの同じクルマを乱造して失敗した過去の経験に加え、統合によるコストダウン効果を見込んでの戦略だと思うが、世界の距離が縮まっているとはいえ、いまだ北米と欧州では趣向が異なるのは事実。果たして、フォードの戦略は吉と出るか凶と出るか? 残念ながらどちらも日本には導入されないので、当面われわれ日本人には関係のないことだが……。
フィアットの傘下で息を吹き返したクライスラーの目玉は、ダッジブランドのコンパクトセダン「ダート」だ。内外装をすっかり変えてしまっているのでわかりにくいが、アルファ・ロメオの「ジュリエッタ」がベースになっている。
これまでランチアのバッジを付けただけのクライスラーや、ダッジとバッジが違うだけのフィアットなど、小手先ばかりの変更で車種を増やしていたが、どうやらそれはあくまでも暫定的なものだったようだ。
おそらく今後は、この方向性でクライスラーおよびフィアット、アルファ・ロメオ、そしてランチアのラインナップを拡充していくことになるのだろう。今までのバッジ違いには明るい未来は見いだせなかったが、これならフィアット&クライスラーの大きな飛躍も決して夢物語ではないかもしれない。“真のダッジらしさ”まで追求しない一般的な日本人には十分ダッジらしく見えるだろうし、クルマ自体の完成度も高いように思われた。
(文と写真=新井一樹)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
関連キーワード:
シボレー,
フォード,
クライスラー,
デトロイトモーターショー2012,
イベント, 自動車ニュース
-
NEW
第695回:欧州カーシェアリングの切ない傷跡 ピニンファリーナのブルーカーにささげる言葉
2021.2.25マッキナ あらモーダ!かつて欧州におけるカーシェアの先駆けとしてパリで展開されていた「オトリブ」の車両に、イタリア・トリノで出会った大矢アキオ。「どうしてこんなところに?」と考えるうちに、同市のカーシェアを巡る意外な事実が判明したのだった。 -
NEW
ポルシェ・タイカン ターボ(後編)
2021.2.25谷口信輝の新車試乗高性能を誇るポルシェのEV「タイカン ターボ」にすっかり感心した様子の谷口信輝。しかし、試乗を続けるなかで、走りの特性にちょっと気になる点もあるという。それは一体……? -
NEW
アルピナのオリジナルマスクをプレゼント!
2021.2.25プレゼントクルマ好きならご存じ、あのアルピナエンブレムをあしらったオリジナルマスクをプレゼント! 素材はポリエステルと伸縮性のあるエラスタン。バンドの長さは調節可能です。 -
NEW
メルセデス・ベンツCクラス
2021.2.24画像・写真新世代の「メルセデス・ベンツCクラス」がデビュー。セダン、ワゴンそろって、その姿が公開された。クラシカルなプロポーションが特徴のエクステリアや、新型「Sクラス」の要素を取り入れたというインテリアを写真で紹介する。 -
NEW
新型「スバルBRZ GT300」シェイクダウンイベントの会場から
2021.2.24画像・写真2021年シーズンのSUPER GTに参戦するニューマシン、新型「スバルBRZ GT300」のシェイクダウンが、富士スピードウェイで行われた。その様子とマシンのディテールを写真で紹介する。 -
スペック的にはお買い得なのに? 「日産リーフ」が苦境を迎えている理由
2021.2.24デイリーコラム日本を代表する電気自動車である「日産リーフ」の販売台数がここにきて急落している。航続可能距離322kmで332万円からというスペックは、最新のライバル車と比較しても決してヒケをとらないのだが……。苦戦の理由を清水草一が考えた。