フォルクスワーゲン・ゴルフ TSIトレンドライン(FF/7AT)【試乗速報】
そば屋の最終兵器 2008.06.17 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフ TSIトレンドライン(FF/7AT)……248.0万円
「ゴルフ」シリーズのベーシックグレードとなる「TSIトレンドライン」は、最新のエンジンとトランスミッションを備えることで、まさに実用車のトレンド最先端を走るクルマとなった。
商売あがったりか!?
たとえばフォルクスワーゲンがそば屋だとして、かけそばばかり売れて天ぷらそばが売れなかったら商売あがったりではないでしょうか。
という心配をしてしまうほど、「ゴルフ」で最も安いグレードとなる248.0万円の「TSIトレンドライン」はよくできていた。マジメな話、「GTI」や「R32」という特殊なモデルを除けば、上級モデルを食っちゃう可能性は充分にある。
従来のゴルフ「E」(1.6リッターFSIユニット搭載)に代わって新たにラインナップに加わったTSIトレンドラインのキモは、エンジンとトランスミッション。
まずエンジンは、新開発の1.4リッターのTSIエンジン。上級グレードである「TSIコンフォートライン」や「GT TSI」も1.4リッターのTSIを積むけれど、あちらがツインチャージャー(ターボチャージャー+スーパーチャージャー)であるのに対し、新ユニットはターボのみのシングルチャージャーとなる。
もうひとつの目玉は、トランスミッションに採用された新設計の7段DSG。R32やGTIまでゴルフのDSGはすべて6段だったから、ベーシックグレードのトランスミッションが最も多段化が進んだことになる。
新開発TSIエンジン+7段DSGの効果
まずは市街地を試してみる。
信号待ちからのスタートなど、発進加速に1.4リッターという排気量から想像するセンの細さはない。それもそのはず、この1.4TSIユニットは、「2.OFSIユニット」(こちらは無過給)と同等の最大トルクを、しかもより低い回転域で発生するのだ。1250rpmで最大トルクの80%を発生するというから、スタート直後にはリッチなトルクが生まれていることになる。
発進加速の力強さには、DSGギアが1段増えて7段となったことも効いている。ギアがひとつ増えたことで、1速のギア比を約20%ローギアード化することができたのだ。
反対に7速のギア比は従来の6速より8%ハイギアード化されている。高速巡航時にはエンジン回転数が下がり、燃費向上が見込まれる。
新エンジンと新トランスミッションのコンビネーションは抜群で、街なかでもポンポンと早めのシフトアップをしていかにも効率がよさそう。従来の6段DSGと同様に変速は滑らかで、シフトセレクターでマニュアル操作した際の反応も素早い。素早いというか、電光石火だ。
少し気になったのが、路面からの突き上げ。カツンというショックがわりとダイレクトに伝わってくる。同条件で直接比較したわけではないので断言できないが、ゴルフの他グレードのアシはもう少ししなやかだった印象がある。あるいは、転がり抵抗の低いタイヤ(銘柄はコンチネンタル・エココンタクト3)の影響かもしれない。
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優れた動力性能、静粛性、安全性、さらに……
続いて高速道路。
ETCゲートをくぐるためにグッと速度を殺してからの再加速、なんていう場面でもアクセルペダルを深く踏み込む必要はない。100km/hまでなら、そんなに気合いを入れなくてもすんなり到達する。0-100km/h加速は、2.0FSIエンジン搭載のゴルフより速いくらいで、動力性能には余裕があるのだ。
アクセルペダルを深く踏めば踏んだで、1.4リッターTSIエンジンは乾いたちょっとイイ音を響かせながらシャープに回転を上げる。けれど、そういう楽しみ方はこのクルマの性格とはちょっと違う感じもする。
7速で100km/h巡航時、エンジン回転は2000rpm前後。クルージング中の車内は非常に静かだ。
試乗車には「Modern Drive」というエコドライブ計測機器が付いていて、あとで分析すると100km/h巡航時は大体18〜20km/リッターの燃費だった。10・15モード燃費は15.4km/リッターと従来の1.6リッターFSI搭載モデルより20%も燃費が優れるというが、実用燃費もかなり良さそうだ。
残念ながらワインディングロードを試すことはできなかったけれど、高速道路での安定感はいかにもゴルフらしいもの。前述したタウンスピードでの乗り心地の硬さも、速度を上げると霧散した。
充分な動力性能、静粛性、安定感、そして抜群の低燃費。時流にも合っているし、こりゃ売れそうだ。
冒頭のそば屋の話に戻せば、天ぷらそばの客がかけそばに流れる云々ではなく、他店の客を奪いたいところだろう。メタボを気にする人が脂っこいものを避けてかけそばに向かうように、ガソリン価格高騰や温暖化を気にかける人が高付加価値車からこういうモデルにシフトしてもなんら不思議じゃない。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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