ロータス・エリーゼSC(MR/6MT)【海外試乗記(後編)】
洗練された軽量ロケット(後編) 2008.06.10 試乗記 ロータス・エリーゼSC(MR/6MT)過給機で怒涛の加速を手に入れた、「エリーゼSC」。ロータス車の真骨頂たる、ハンドリングはどうなのか?
英国からのリポート。
『CG』2008年5月号から転載。
激辛なのに、ロータスらしい
エコ一色の裏で実はハイパワー競争華やかな現在にあっては、SCの絶対的な数値は“僅か”220psと21.6mkgとも言える。それなのに、なんというロケットダッシュ。前後重量配分38:62の後輪荷重をもってしても、トラクション・コントロールのランプが激しく点滅する(試乗車には多くのオプションが装着されていた)。
少し冷静さを取り戻して観察すれば、自然吸気エンジンに比べて僅かにスロットルレスポンスは穏やかと感じるものの、8500rpmという高いリミットまできっちりと回りきる様を含め、過給機付きであることを悪い意味で意識することはほとんどない。全回転域でトルキーな感触は、使い古された表現だが、実際は1.8リッターながら2.5リッターくらいのNAユニットを積むように錯覚する。
安楽なクルージングも不思議と退屈ではないエリーゼSCだが、その軽量な身のこなしを存分に楽しむならば、曲がりくねったカントリーロードである。全回転域がトルクバンドのようなSCのエンジンをもってすれば、漸進的なテールスライドを誘って楽しむことも極めて容易だ。しかしながら前述したペダル・トラベルが長いスロットルのために、必要なぶんだけ精密にパワーを取り出せる印象が強いから、強烈なパワーをヒシヒシと感じつつも不安感はない。
加えてエリーゼSCのサスペンションは、ピッチング方向にもロール方向にもスムーズにストロークをして、急激な荷重移動を起こすこともない。さらに書き添えると「アジリティが高い」とよく言われるステアリングにしても、その根源は軽量にこそあるのであって、意図的に高められたゲインによるものではないのだ。この穏やかな過渡特性こそが、車との濃密な会話を楽しみ、そして安心して高いペースを保てる理由だ。これはロードゴーイング・ロータスの、そしてブリティッシュ・ライトウェイトの佳き伝統と言えるだろう。
拡大
|
対話ができる
一方、ブレーキングできちんとフロント荷重をかけ、またタイミングを見計らってからスロットルを開けなければ、アンダーステアに陥ることもまた容易である。エリーゼSCは決してドライビングに関してフールプルーフな車ではなく、ESPという電子デバイスのお守りも備わらない。
しかしながら、路面やグリップの状況を雄弁に語りかけてくるステアリングホイールを筆頭に、エリーゼの豊かなインフォメーションは最大のフールプルーフ機能と言える(ステアリングインフォメーションの豊富さは、初めてエリーゼに乗る人がもっとも驚くポイントだろう)。怖いのは「車が速いことそのもの」ではなく、あまり“会話のできない車”で飛ばすことの方だと、エリーゼSCを運転していると改めて感じるのである。
エリーゼSCは絶対的にパワーがあるぶん速度域も高く、また大きく挙動変化を起こすこともできる。しかしそれは穏やかな過渡特性の中で生じるものであるから、「暴力的」とはほど遠く、マイルドで洗練されているとさえ映った。軽さとこのシャシー特性を保ったままに、このパワー。またひとつ、魅力的なパッケージがラインナップに加わったと言うべきだろう。日本での価格は680万円である。
(文=八木亮祐/写真=ロータス・カーズ)
拡大
|

八木 亮祐
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。





























