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【スペック】全長×全幅×全高=4150×1750×1535mm/ホイールベース=2540mm/車重=1320kg/駆動方式=FF/1.6リッター直4DOHC16バルブ(120ps/6000rpm、16.3kgm/4250rpm)/価格=269.0万円(テスト車=同じ)

プジョー207SW(FF/4AT)【試乗速報】

リアシートに笑顔を 2008.04.14 試乗記 島下 泰久 プジョー207SW(FF/4AT)
……269.0万円

プジョーの人気ナンバーワンモデル「207」に、ステーションワゴンが加わった。SWならではの作り込みとは?
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アピール度高し

それにしても、この外観のインパクトは大きい。ハッチバックも存在感抜群の「プジョー207」だが、新しい仲間である「207SW」のスタイリングは、さらに上を行く。サイドまで回り込んだリアウインドウと一体化した巨大なテールランプはアロー形状を描き、後方に向けてせり上がるサイドウインドウとともに軽快感を演出。後ろ姿のアピール度は、これまた強烈なフロントマスクにも決して負けていない。正直、カッコいいとかうまくまとまっているとか、そんな風に表現できるデザインではない。けれど、それを納得させるというか押し切るパワーが、そこに宿っているのはたしかだ。

その成り立ちは先代206SWと同様である。すなわち207ハッチバックのリア部分を延長したワゴン版が、この207SW。スリーサイズは全長が207に対して+120mmの4150mm、全幅が変わらず1750mm、全高が+65mmの1535mmとなる。ホイールベースは変わらず2540mmである。

サイズアップは当然、ラゲッジスペースの拡大に繋がっている。容量は通常時で337リッター、最大で1258リッターで、ハッチバックとの差はそれぞれ67リッター、335リッターと歴然だ。しかも開口部の下端が約140mm低められ、フロア下や側面に収納を配置するなど、使い勝手にも配慮されている。リアシートの折り畳み方法が、背もたれを前倒しすると座面が連動して前方斜め下に沈み込むダイブダウン式へと改められたのも注目。206SWのように起こした座面の裏側のスポンジやら何やらが丸見えになってしまうことはなくなった。

ハッチバックより遅れて企画が始まった206SWに対して、207SWは207シリーズの開発当初から、それを前提に開発されていたという。きっと、それがこうした細かい部分のつくり込みにも反映されているに違いない。


プジョー207SW(FF/4AT)【試乗速報】の画像 拡大

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207SWはハッチゲートのガラス部のみのオープンも可能となった。
207SWはハッチゲートのガラス部のみのオープンも可能となった。 拡大
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ATの改善を求む!

それは走りの面でも、如実に感じられる。試乗したのは1.6リッターエンジンに4段ATを組み合わせたベースグレードの207SW。その乗り心地は、ゴツゴツするというほどではないが決して柔らかくはない。しかし一方でボディやシャシーは格段にカッチリとした印象で、不快な突き上げや振動、騒音をほとんど伝えてこない。正確に言えば、伝わってくるが、すべて角が丸められ不快と思わせることがないのだ。ハッチバックより後輪荷重が大きい分、フラット感も増しているように感じられる。

フットワークも、やはり落ち着いた印象だ。ハッチバックではステアリングの正確性もさることながら、後輪の高い接地感とコントローラブルなスライド感覚の両立ぶりに感心させられたものだが、SWではさすがに安定感をより強調する方向に仕立てられている。ただし、おかげであの痛快なハッチバックに較べると、曲がりにくくなっている感は否めない。コーナー進入でほんのわずか速度が高過ぎただけでも、意外なほど舵が効いてくれずヒヤヒヤさせられてしまうのだ。過信は禁物である。

走りに関してのもっとも大きな不満は4段ATだ。山道の上りではうまくパワーバンドをキープできず加速が緩慢になるし、いざという時の瞬発力も足りない。平坦な街中なら1.6リッターユニットのトルクバンドの広さに救われるものの、変速のギクシャク感は相変わらずだ。このあたり、そろそろ改善されないと、コアなファン以外はそっぽを向いてしまうのでは?


プジョー207SW(FF/4AT)【試乗速報】の画像 拡大
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写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。
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リアシートが特等席

ポテンシャルの高さを随所に感じる一方で、4段ATにしろ乗り心地にしろハンドリングにしろ、ステアリングを握る楽しみという観点で見ると、207という名への期待値に対して物足りなさは否めない。そう思った207SWだが、チェックのため席を移動すると、ナルホドと合点がいった。このクルマ、特等席はリアシートだ。

なにしろここは広々しているし見晴しも良い。ホイールベースこそハッチバックと変わらないながら、リアシートが15mm後方に下げられ、20mm着座位置が高められているのが、そのポイント。全高に余裕があるため、それでも頭上空間は24mmプラスに。しかもパノラミックガラスルーフも標準装備となっている。ここでは乗り心地も適度にしなやか。きっと1名乗車ではなく、リアシートに人が座った状態を考慮したセッティングなのだろう。

乗るのはほとんど1名か2名、大きな荷物を載せることもほとんどないならば、ハッチバックで十分。リアシートに乗せる誰かの笑顔を想像すると自分まで幸せな気分になれるという人にこそ、この207SWは勧めたい。ただし……今ならまったく同じ価格で、走りっぷりにプジョーらしさがより濃厚な「307SW 1.6」も買えるだけに、実際に買う段になると、これは相当悩むことになりそうだ。

(文=島下泰久/写真=荒川正幸)


プジョー207SW(FF/4AT)【試乗速報】の画像 拡大

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写真のようにリアシートから、トノカバーの一部をまくりあげて、荷室にアクセスが可能。
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島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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